そこは、何とも不思議な場所だった。
美香が知らないような言語いや、地球の文字じゃないのかもしれない文字が書かれた本が要塞のように山済みになって部屋を埋め尽くしていた。
「わぁ」
天井を見ると、宙に浮いたランプがあった。
そこで、美香はここが魔法の世界なのだと分かった。
そうでなければ、急にここに来た理由に説明がつかない。
「ようこそいらっしゃいました。お客様。」
天井に見とれている間に、奥から来たであろうその女性はまさに絶世の美女というにふさわしいだろう。
長く艶やかな黒い髪に、人間離れした真紅の瞳。
この不思議な部屋の主ということがたたずまいから見て取れる。
「ここは、能力屋、お客様が望む能力を手に入れることができるお店です。」
「それなら、運動神経が良くなりたいの。」
これを逃したら、私はもう二度と運動が良くならないかもしれない。
「ふむ、わかりました。どのようなものがいいのでしょう？スーパーマンのように、超人的なものか、一般的な運動神経より少し上回ったものか。」
「ちょっと、運動神経が良くなるだけでいいの。それと、お代は……」
「ここは、能力屋ですから、あなたの能力がお代です。」
「私の能力……」
「ええ。どうしますか？」