「殿下、死刑囚メイラと関わりがあると思われる魔王、リーゼン・アベルの支配地にある村について調査をしたんですが……。」
「なんだ。」
あの後、城の自室に戻りサボっていた分の公務を終わらせたりと何かと忙しいので、なかなかに機嫌が悪いのだ。
「…報告書を見てください。」
何をそんなに、ためらいがちに言うのだろうと不思議に思いながら、報告書を見るとそんな疑問は一瞬で解決した。
報告書には、一枚の絵があった。
秘書によると、村では魔王が信仰の対象で、村にある小さな教会に飾ってあった魔王の自画像だという。
古くからアイカイックのことを知っている者が、その地に調査に行っていたので、それを見てさぞかし驚いただろう。
自画像は、目の色こそ違うが、黒い髪に目の下にあるほくろ。
間違いない。
魔法学校時代の幼馴染だ。

「ふふふふっ」
「何がおかしい。」
「笑ってないと、理性を保ってられないわよ。」
目の前にいるのは、魔王、リーゼン・アベルこと、魔法学校時代の幼馴染、レーテル・メイラックスだった。