文字サイズ変更

時雨が降っていた夜に

#2

__私は今、孤児院を経営している。
世界各地に孤児院を作っている。
「時雨さん、今日も新しい子が来ました。その内、一人は名前がなくて…、付けていただけないでしょう」
この世界には、名前がない者も多く存在する。
うちの孤児院にもそういう子はいて、私はそういう子に名前をつけるのが仕事だ。
そして、そういう作業も、実はまぁまぁ好きだ。
「分かりました。性別と出身をお願いします」
「女の子で、出身は日本です」
「OKです、ちょっとお待ち下さい。では、一時間後にまた折り返しします。そろそろ、幼稚園のお迎えの時間でしょう?」
「はい。それではまた」
「では」
一回電話を切り、名前を考える。
「かな…かなえ……みお……あいの……いおり……もみじ……」
私は、今までの子供の名前をすべてノートにまとめている。極力名前が被らぬように、毎回これで確認しているのだ。
「……[漢字]海花[/漢字][ふりがな]みか[/ふりがな]、なんてどうかな」
我ながら、今回はいい名前を思いついたな、と思った。
「よし、この子は海花と書いて『みか』だな…うん。決まりだ」
ノートに名前を書いて、はぁと息を吐いて、椅子に思いっきりだれた。

[水平線]
世界各地に施設はあるので、私はどんな国の子にも名前をつけなければいけない。
正直、私ほど人名に詳しい者はなかなかいないだろう。
人名に関する仕事をしていない限り、正直いないとは思う。ただの一般人では。
「そういえば時雨ってさー」
私の友達の[漢字]志恩[/漢字][ふりがな]しおん[/ふりがな]が言う。
「自分の名前、どう思うの?」
「え?この時雨って名前、のこと?」
「そうそう」
そういえば、私自身の名前については、考えたことがなかったかもしれない。
「正直さ、キラキラネームとか思う?」
確かに、時雨という名前はかなりキラキラ、なのかもしれない。
「うーん…どうだろう、名前だけ聞くと、キラキラかもね」
私はサラッとそう答えたあとに、続けざまに言った。
「でもね、私はわたしの名前気に入ってるよ。由来がいいんだ。
『雨のように人に恵みを与えて、太陽のように輝いてほしい』って理由で、時雨って名前になったんだって。
なんかさ、こう聞くと、好きなんだよねーやっぱり」
あくまでラフな感じ、あまり気にさせない感じで言ったが、志恩は何やらとても感動している様子だ。
「時雨…あんたやっぱすげぇ女だよ」
「え?」
急にカッコつけたかのようなこと言われたので、少々びっくりした。
「じゃあ、自分の名前は好きだと?」
「うん、そういうこと」
「なるほどね、やっぱり時雨は優しいですのう」

※ダブルクリック(2回タップ)してください

作者メッセージ

話の時系列はいつもバラバラです。
この話に出てくる志恩は、私じゃないです。私がモデルではありますが、別の人間です。

2024/05/18 00:46

水野志恩 ID:≫7tLEh4qnMjetA
続きを執筆
小説を編集
/ 3

この小説はコメントオフに設定されています

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL