振られた
#1
「付き合ってくださいっ!」
「………ごめん、君の告白にはいということは…」
めのまえがまっくらになった。
「あの…ぼ…」
「っ…!」
私は、その場から逃げ出した。「待って!…だ………こ…が…」という君の優しい声も振り切って、逃げてしまった。なにか言っていたのに、聞かずに走ってしまった。私の心とは対象的にとても晴れて、あまりないくらいの快晴だった。
静かな校庭には、私の過呼吸の音と、心の中のなにかが崩れる音しか聞こえなかった。
美希「いや、そいつクズやん」
ちゅー、と野菜ジュースを吸いつつ落ち込む私に、友達の美希は呟いた。
「いや、いい人だよ?」
「いやだって散々思わせぶりなことしてきたんでしょ!?!?!?!?天然たらしやんけ!!!!」
タン!!と軽く机に台パンする美希。クラスに人はいるので一応は気遣ってくれてるみたい。
「まぁ確かに、地域のお祭りに誘ってくれたり、映画に誘ってくれたり、委員会の仕事で残って帰るのが遅くなったときには家まで送ってくれたり、バレンタインのチョコは受け取ってくれたけれども。」
「それを思わせぶりって言うんだよ!!」
美希は二度目の台パンをする。もちろん優しく叩いたので、周りの視線は特に集めなかった。
…確かに、私もこんなに優しくしてくれるんだから、脈アリなのではと思ってしまったけれども。
「思い上がりも甚だしいってやつだよ…私なんかがね…」
「愛結…」
ぎゅっ!と突然美希にハグされた。
「私は愛結の味方だからね〜〜っ!」
私はくすっと笑って、
「ありがと」
と返した。
けどまぁ、好きな人に振られたのには変わりなくて。悲しいのには変わりなくて。
正直委員会も勉強も好きな人の存在が原動力だった。少しでも可愛くなれるように、いつもほどきっぱなしかひとつ結びだった髪は頑張って毎日結んだ。映画館に行くとき、服は可愛い系が良いか大人系がいいかすごく悩んだ。「私服、久しぶりに見た、似合ってる」という感想に家に帰ってから跳ねたもんだ。
全部、消えた。
泡になった。
思い出と想いだけが残った。
不完全に終わってしまった。
「あーあ」
泣きそ…………
ベッドの上で作った体育座りの足の上に顔を乗せ、そっと塩水をこぼした。
それから一週間、彼を避け続けた。まぁ、気まずいし普通に話せるほうが異常だと思う。振られても、「好き」は消えてくれなくて。極力すれ違わないよう廊下に出るのを避けた。いつも登下校の時間が偶然重なっていてほぼ毎日顔を合わせていたので登下校の時間をずらした。話しかけられても、「用事があるから」とごまかし続けていた。申し訳なかったけど、顔を 合わせるたびに泣きそうになってしまっていたから。私のなにかが完全に壊れてしまいそうだったから。真っ向から向き合う勇気も気力も無かった。
ある日。委員会の仕事があった。
図書室に入ってからしまったと思った。彼とは委員会が同じだ。しかも担当同じだ。
\(^o^)/オワタ~~~~~~~~~~~~~\(^o^)/
なるべく目を合わせずに黙々と図書室の本を戻す。しかし彼から話しかけられた。
「あのさ」
びくりと震えてしまった。
手から本がバサバサと音を立てて落ちる。
「あ」
「ごめん、驚かせちゃったかな」
図書室の窓から差し込む光を背に受ける君は、私に優しい笑顔を向け、本を拾った。私に、差し出す。
受け取るか否か、悩む。
なぜだ。受け取ればいいのに。私の手は、脳は、悩んでいた。彼の、『君の想いには応えられない』という想いを受け取ってしまうような気がして。その想いを、受け取りたくなくて。ああ、私はこの期に及んでまだ甘えているんだ。まだ、未練がましく、ひっついていたいと、せめて嫌われたくないと。
私は、卑怯だ。
涙が出てくるのだけは堪えた。
その代わり、黙りこくってしまった。
彼は黙った私に本を渡すのは諦めたようで、近くの棚に本を積み重ねた。
自分勝手だな、私。
でも、私は喋りだせなかった。
「………」
「……………」
静寂を破ったのは、彼の方だった。
「あのさ」
もう一度体を震わす。
「えっと…僕のこと、嫌いになったとか、もう話したくない、とか、ある?」
そんなこと
「ない…」
「そっか」
また、少しの静寂を挟んで、再び彼が喋りだす。
「僕がさ、あの告白にああ返した理由はさ、」
それを言ってくるのか。もしかしたら彼は私のことが嫌いになって傷つけようとしてるのではと思うほどだった。
「別に、君のことが嫌いとか、付き合いたくない訳じゃなくて。」
「僕から、告白したかったんだ」
「……………へ?」
アホそのものな声が出た。もう一度その言葉を脳内で繰り返す。理解不能なんですが。
「君の告白にのるんじゃなくて、僕から、君にしたかったんだ。」
でも君が逃げ出しちゃったから言えなくて、と彼は付け足す。
「え、じゃぁ…?」
「いい?よく聞いてね、」
「君のことが好きです。付き合ってください。」
……………ポロッ(´;ω;`)
「え!!!!ななななな、なんで泣くの⁉な、泣くほど嫌だった…?ごめん、それなら…」
「ばか!!!!!!!」
「え」
「私君にふられたと思ってどんだけ落ち込んだと思うのぅっ!!!!!!!!」
「ゔっ!そ、それはガチごめん…」
「大好きっ!!!!!!!!!!!!」
「え?」
「大好き………よろしく…お願いしますっ……!」
放課後の図書室で泣きじゃくる私を、彼はそっと包んでくれた。
「あんたら馬鹿だわ。」
美希に全てを話すと、こういうセリフが返ってきた。
「何だよあいつ、まぎらわしーな!愛結も愛結だよ!何で逃げた!逃げたら試合終了なのに!!!!」
「諦めたらじゃない…?」
あんたら馬鹿だわ。美希はもう一度繰り返すと、幸せそうにサンドイッチを頬張った。
「おめでとう。」
そっと祝福してくれた美希に、私は感謝の気持ちを込めてお弁当に入っていたたくあんをあげた。いらないわ!という温かいツッコミのあと、ぽりぽり食べてた。私にはお祝い!とサンドイッチに挟まっていた輪切りのきゅうりをくれた。いらないわ!という温かいツッコミのあと、ぽりぽりと食べた。
「わあ、懐かしい、そんな事もあったね。」
「あはは、ほんとに懐かしい。」
「ほんとに、ややこしいというかなんというか…君が素直に私の告白に乗ってれば、こじらせなかったんじゃない?」
「まぁ、一理あるね」
「一理どころか百里ぐらいあるよ」
「でもさ、やっぱり男らしいところ見せたかったしね」
「いや言い方も悪かったよあれは」
「僕も断ったみたいだなーって思ってた」
「思ってたんかい。」
「まぁ、いいじゃん、心に残る告白になったでしょ。」
「心に残ればなんでもいいと思うなヨ」
「僕は良いと思うヨ」
「そうかヨ」
「そうだヨ」
「でも、告白のときのシチュエーション完璧だったよね」
「ちょうど夕日が差してて、二人きりだったし」
「素晴らしかったわ〜」
「そうそうそのシチュエーションを計算したんだよ」
「んなわけあるか」
「あのときのシチュエーションに比べたらさ、ただの家のソファでだらけてるだけで、全然ロマンチックじゃないけどさ」
「ん?」
「もっとロマンチックなところ連れて行ってあげるからさ、」
「結婚してください」
「…………」
「…………」
「まって、もう一回言って。録音したい。」
「やめてやめて。恥ずかしい」
「家でパーカー着てさ。だらけて二人でテレビガン無視で思い出話に浸ってさ。いきなり告白かい」
「うっ、だって不意にやりたかったからさ。いきなりなんかすごそうなデート連れてったら勘付かれそうじゃん」
「いいよ」
「へ」
「よろしくお願いします」
「……こちらこそ」
「〜〜〜うっわ…はっず、」
「ね…あ、指輪通していい?」
「いつの間に買ってきてたんだ。」
「好みじゃなかったら返品してくるけど」
「ううん、好き。」
「そっか。」
「ん。」
「手、出して。」
「ありがと。うわ〜…綺麗〜、あ、そだ、君のは私が通してあげるよ」
「じゃあお願いします」
「ほい、お揃いだね」
「ね」
「別にロマンチックじゃなくてもいいよ」
「え?」
「君といるといつも楽しいから」
「………」
「………」
「まって、もう一回。録音したい。」
「やめてやめて!真似しないで!!はずっ!」
「楽しいなら、僕は光栄だよ」
「大好き」
「僕も」
そっと繋いだ二人の手には、お揃いの指輪が光を反射させていた。
「………ごめん、君の告白にはいということは…」
めのまえがまっくらになった。
「あの…ぼ…」
「っ…!」
私は、その場から逃げ出した。「待って!…だ………こ…が…」という君の優しい声も振り切って、逃げてしまった。なにか言っていたのに、聞かずに走ってしまった。私の心とは対象的にとても晴れて、あまりないくらいの快晴だった。
静かな校庭には、私の過呼吸の音と、心の中のなにかが崩れる音しか聞こえなかった。
美希「いや、そいつクズやん」
ちゅー、と野菜ジュースを吸いつつ落ち込む私に、友達の美希は呟いた。
「いや、いい人だよ?」
「いやだって散々思わせぶりなことしてきたんでしょ!?!?!?!?天然たらしやんけ!!!!」
タン!!と軽く机に台パンする美希。クラスに人はいるので一応は気遣ってくれてるみたい。
「まぁ確かに、地域のお祭りに誘ってくれたり、映画に誘ってくれたり、委員会の仕事で残って帰るのが遅くなったときには家まで送ってくれたり、バレンタインのチョコは受け取ってくれたけれども。」
「それを思わせぶりって言うんだよ!!」
美希は二度目の台パンをする。もちろん優しく叩いたので、周りの視線は特に集めなかった。
…確かに、私もこんなに優しくしてくれるんだから、脈アリなのではと思ってしまったけれども。
「思い上がりも甚だしいってやつだよ…私なんかがね…」
「愛結…」
ぎゅっ!と突然美希にハグされた。
「私は愛結の味方だからね〜〜っ!」
私はくすっと笑って、
「ありがと」
と返した。
けどまぁ、好きな人に振られたのには変わりなくて。悲しいのには変わりなくて。
正直委員会も勉強も好きな人の存在が原動力だった。少しでも可愛くなれるように、いつもほどきっぱなしかひとつ結びだった髪は頑張って毎日結んだ。映画館に行くとき、服は可愛い系が良いか大人系がいいかすごく悩んだ。「私服、久しぶりに見た、似合ってる」という感想に家に帰ってから跳ねたもんだ。
全部、消えた。
泡になった。
思い出と想いだけが残った。
不完全に終わってしまった。
「あーあ」
泣きそ…………
ベッドの上で作った体育座りの足の上に顔を乗せ、そっと塩水をこぼした。
それから一週間、彼を避け続けた。まぁ、気まずいし普通に話せるほうが異常だと思う。振られても、「好き」は消えてくれなくて。極力すれ違わないよう廊下に出るのを避けた。いつも登下校の時間が偶然重なっていてほぼ毎日顔を合わせていたので登下校の時間をずらした。話しかけられても、「用事があるから」とごまかし続けていた。申し訳なかったけど、顔を 合わせるたびに泣きそうになってしまっていたから。私のなにかが完全に壊れてしまいそうだったから。真っ向から向き合う勇気も気力も無かった。
ある日。委員会の仕事があった。
図書室に入ってからしまったと思った。彼とは委員会が同じだ。しかも担当同じだ。
\(^o^)/オワタ~~~~~~~~~~~~~\(^o^)/
なるべく目を合わせずに黙々と図書室の本を戻す。しかし彼から話しかけられた。
「あのさ」
びくりと震えてしまった。
手から本がバサバサと音を立てて落ちる。
「あ」
「ごめん、驚かせちゃったかな」
図書室の窓から差し込む光を背に受ける君は、私に優しい笑顔を向け、本を拾った。私に、差し出す。
受け取るか否か、悩む。
なぜだ。受け取ればいいのに。私の手は、脳は、悩んでいた。彼の、『君の想いには応えられない』という想いを受け取ってしまうような気がして。その想いを、受け取りたくなくて。ああ、私はこの期に及んでまだ甘えているんだ。まだ、未練がましく、ひっついていたいと、せめて嫌われたくないと。
私は、卑怯だ。
涙が出てくるのだけは堪えた。
その代わり、黙りこくってしまった。
彼は黙った私に本を渡すのは諦めたようで、近くの棚に本を積み重ねた。
自分勝手だな、私。
でも、私は喋りだせなかった。
「………」
「……………」
静寂を破ったのは、彼の方だった。
「あのさ」
もう一度体を震わす。
「えっと…僕のこと、嫌いになったとか、もう話したくない、とか、ある?」
そんなこと
「ない…」
「そっか」
また、少しの静寂を挟んで、再び彼が喋りだす。
「僕がさ、あの告白にああ返した理由はさ、」
それを言ってくるのか。もしかしたら彼は私のことが嫌いになって傷つけようとしてるのではと思うほどだった。
「別に、君のことが嫌いとか、付き合いたくない訳じゃなくて。」
「僕から、告白したかったんだ」
「……………へ?」
アホそのものな声が出た。もう一度その言葉を脳内で繰り返す。理解不能なんですが。
「君の告白にのるんじゃなくて、僕から、君にしたかったんだ。」
でも君が逃げ出しちゃったから言えなくて、と彼は付け足す。
「え、じゃぁ…?」
「いい?よく聞いてね、」
「君のことが好きです。付き合ってください。」
……………ポロッ(´;ω;`)
「え!!!!ななななな、なんで泣くの⁉な、泣くほど嫌だった…?ごめん、それなら…」
「ばか!!!!!!!」
「え」
「私君にふられたと思ってどんだけ落ち込んだと思うのぅっ!!!!!!!!」
「ゔっ!そ、それはガチごめん…」
「大好きっ!!!!!!!!!!!!」
「え?」
「大好き………よろしく…お願いしますっ……!」
放課後の図書室で泣きじゃくる私を、彼はそっと包んでくれた。
「あんたら馬鹿だわ。」
美希に全てを話すと、こういうセリフが返ってきた。
「何だよあいつ、まぎらわしーな!愛結も愛結だよ!何で逃げた!逃げたら試合終了なのに!!!!」
「諦めたらじゃない…?」
あんたら馬鹿だわ。美希はもう一度繰り返すと、幸せそうにサンドイッチを頬張った。
「おめでとう。」
そっと祝福してくれた美希に、私は感謝の気持ちを込めてお弁当に入っていたたくあんをあげた。いらないわ!という温かいツッコミのあと、ぽりぽり食べてた。私にはお祝い!とサンドイッチに挟まっていた輪切りのきゅうりをくれた。いらないわ!という温かいツッコミのあと、ぽりぽりと食べた。
「わあ、懐かしい、そんな事もあったね。」
「あはは、ほんとに懐かしい。」
「ほんとに、ややこしいというかなんというか…君が素直に私の告白に乗ってれば、こじらせなかったんじゃない?」
「まぁ、一理あるね」
「一理どころか百里ぐらいあるよ」
「でもさ、やっぱり男らしいところ見せたかったしね」
「いや言い方も悪かったよあれは」
「僕も断ったみたいだなーって思ってた」
「思ってたんかい。」
「まぁ、いいじゃん、心に残る告白になったでしょ。」
「心に残ればなんでもいいと思うなヨ」
「僕は良いと思うヨ」
「そうかヨ」
「そうだヨ」
「でも、告白のときのシチュエーション完璧だったよね」
「ちょうど夕日が差してて、二人きりだったし」
「素晴らしかったわ〜」
「そうそうそのシチュエーションを計算したんだよ」
「んなわけあるか」
「あのときのシチュエーションに比べたらさ、ただの家のソファでだらけてるだけで、全然ロマンチックじゃないけどさ」
「ん?」
「もっとロマンチックなところ連れて行ってあげるからさ、」
「結婚してください」
「…………」
「…………」
「まって、もう一回言って。録音したい。」
「やめてやめて。恥ずかしい」
「家でパーカー着てさ。だらけて二人でテレビガン無視で思い出話に浸ってさ。いきなり告白かい」
「うっ、だって不意にやりたかったからさ。いきなりなんかすごそうなデート連れてったら勘付かれそうじゃん」
「いいよ」
「へ」
「よろしくお願いします」
「……こちらこそ」
「〜〜〜うっわ…はっず、」
「ね…あ、指輪通していい?」
「いつの間に買ってきてたんだ。」
「好みじゃなかったら返品してくるけど」
「ううん、好き。」
「そっか。」
「ん。」
「手、出して。」
「ありがと。うわ〜…綺麗〜、あ、そだ、君のは私が通してあげるよ」
「じゃあお願いします」
「ほい、お揃いだね」
「ね」
「別にロマンチックじゃなくてもいいよ」
「え?」
「君といるといつも楽しいから」
「………」
「………」
「まって、もう一回。録音したい。」
「やめてやめて!真似しないで!!はずっ!」
「楽しいなら、僕は光栄だよ」
「大好き」
「僕も」
そっと繋いだ二人の手には、お揃いの指輪が光を反射させていた。
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