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誰も知らない桜

#1

誰も知らない桜

私は桜を見たことがある、誰も一生見ることのできないであろう桜を___。

私が桜を見たのは昭和15年の5月の半ばだったであろうか、少しずつ暑さを感じる頃だったのは良く覚えている。
私に縁談が舞い込んできた、当時の私はというと結婚する気はサラサラ無かった。
そのため縁談の申し出を断ろうと思っていたのだが・・。
両親の後押し・・というよりかは圧力によって会う事になってしまった。

約束の日、桜は突如として眼前に現れた。

その桜は陽光を吸い、どの花も目に入らぬほど輝いて見えた。
きっと一生見ないほどの美貌だった。


だけども私がその桜を見たのは一度だけ、きっと2度目もあった筈だ。

桜は戦禍に巻かれ、焼かれて枯れてしまい、二度とお目にかかることができなくなった。
私がその事実を知ったのはずっと後になってしまったが。

二度と誰も見ることのできなかった桜。
その桜は瞳というフィルムの中で不変の美しさのまま、私の心を未だ焼き続けている。

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作者メッセージ

主人公が戦前に見た桜を語るお話。

当時の事はあまり存じ得ないので、あやふやですが暖かい目で見てくだいただけると幸いです。

2024/04/13 13:52

霧島 ID:≫.prM8VK5AVPs2
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