君にベールを掛けよう。
「リリィィィィィィ!!! 遊ぼう!!」
「遊ばない」
「じゃあ鬼ごっこしよ!」
「遊ばない。私じゃなくてミカエルくんと遊んだら」
暗に嫌だと言っているのにしつこく何度も誘ってくる片割れに若干苦手意識を持ちながらリリーはパラパラと本の[漢字]頁[/漢字][ふりがな]ページ[/ふりがな]を捲る。因みに彼女の耳には「ミカエルじゃなくてガブリエルだよ」というルイスの訂正は入っていない。
このリリーとルイスのやり取りは毎朝の9時には様に行われているので、ご近所さんの間では時計代わりに使われている。そんな事を知る由もない二人はいつもの問答を繰り返した。
でも、いつもとちょっと違うのは____
「リリー、遊ぼーぜ」
「……なんでミカエルくんが私の部屋に居るの?」
「エマさんに入れてるもらった。あと、俺はガブリエ」
ガブリエルが居るところ。
エマとはルイスとリリーの母の事である。さすがにリリーはコムストック家の頂点に君臨する母とは敵対したくないのであまり強くは言えない。
一瞬、しわくちゃピカ⚪︎ュウみたいな顔をしたが直ぐに直して読書を再開した。
「何の本読んでるんだ?」
「アルツール・スミスの“東洋の魔物録”」
「おもしれーの?」
「人による」
「ねえねえリリー、この変なヤツなに?」
ガブリエルの質問にリリーが答える。前回とあまり変わってない会話だがルイスが入った事によって少し形が変わった。
ルイスが指差したのは頭が無い歪な形の魔物だ。
「それは山奥に生息するヤマノケ。鳴き声は「テン…ソウ…メツ…」で、自分の領域内に入ってきた人間を乗っ取る魔法生物。乗っ取られたら最後。熟練の僧侶がどれだけ呪文を唱えても引き剥がせない危険な魔物」
「何ソレ、怖っ」
「東洋、行タク無イ」
ヤマノケが居る国は今鎖国中だからいけないよ、そんな言葉が続く前にルイスとガブリエルはリリーにまた話しかける。
「ねえリリー、もう直ぐ子供剣術大会が開かれるんだ!」
「知ってる。この前も聞いた」
子供剣術大会とは、北にある渓谷街、山岳村、高原街の三つの地域の8歳〜15歳子供達が剣術で競い合う大会である。
その大会にルイスとガブリエルが出ると言う事は何ヶ月か前から父と母が話していたのでリリーは知っていた。それに母は息子の晴れ舞台という事で応援に行く気満々だ。
「リリーは見に来るの?」
「母さんが行くから多分行くと思うよ」
その言葉はガブリエルに取って好きな女の子が自分の活躍を見てくれるという事。つまり、渾身の見せ場。
ガブリエルは一気に剣術大会への緊張感が高まった。
ルイスはいつもは剣術に興味を示さない片割れが来てくれるという事で純粋に嬉しそうである。
「そっか! じゃあカッコいいとこ見せないとだね、ガブ!」
「お、おう」
「じゃあ剣術大会に向けて練習、頑張ってね。私は部屋で本読んどくから」
「そうだね、ちゃんと練習もしないといけないか……じゃあ、また今度鬼ごっこしようね!」
「私じゃなくてミカエルくんとしたらいいと思うよ」
「いや、俺ガブリエルだって」
いつも調子でバイバイと手を振って階段を降りていくルイスと、後ろ髪をを引かれつつルイスの後に続くガブリエルを見届けた後、リリーはまた“東洋の魔物録”を読むのを再開した。
「遊ばない」
「じゃあ鬼ごっこしよ!」
「遊ばない。私じゃなくてミカエルくんと遊んだら」
暗に嫌だと言っているのにしつこく何度も誘ってくる片割れに若干苦手意識を持ちながらリリーはパラパラと本の[漢字]頁[/漢字][ふりがな]ページ[/ふりがな]を捲る。因みに彼女の耳には「ミカエルじゃなくてガブリエルだよ」というルイスの訂正は入っていない。
このリリーとルイスのやり取りは毎朝の9時には様に行われているので、ご近所さんの間では時計代わりに使われている。そんな事を知る由もない二人はいつもの問答を繰り返した。
でも、いつもとちょっと違うのは____
「リリー、遊ぼーぜ」
「……なんでミカエルくんが私の部屋に居るの?」
「エマさんに入れてるもらった。あと、俺はガブリエ」
ガブリエルが居るところ。
エマとはルイスとリリーの母の事である。さすがにリリーはコムストック家の頂点に君臨する母とは敵対したくないのであまり強くは言えない。
一瞬、しわくちゃピカ⚪︎ュウみたいな顔をしたが直ぐに直して読書を再開した。
「何の本読んでるんだ?」
「アルツール・スミスの“東洋の魔物録”」
「おもしれーの?」
「人による」
「ねえねえリリー、この変なヤツなに?」
ガブリエルの質問にリリーが答える。前回とあまり変わってない会話だがルイスが入った事によって少し形が変わった。
ルイスが指差したのは頭が無い歪な形の魔物だ。
「それは山奥に生息するヤマノケ。鳴き声は「テン…ソウ…メツ…」で、自分の領域内に入ってきた人間を乗っ取る魔法生物。乗っ取られたら最後。熟練の僧侶がどれだけ呪文を唱えても引き剥がせない危険な魔物」
「何ソレ、怖っ」
「東洋、行タク無イ」
ヤマノケが居る国は今鎖国中だからいけないよ、そんな言葉が続く前にルイスとガブリエルはリリーにまた話しかける。
「ねえリリー、もう直ぐ子供剣術大会が開かれるんだ!」
「知ってる。この前も聞いた」
子供剣術大会とは、北にある渓谷街、山岳村、高原街の三つの地域の8歳〜15歳子供達が剣術で競い合う大会である。
その大会にルイスとガブリエルが出ると言う事は何ヶ月か前から父と母が話していたのでリリーは知っていた。それに母は息子の晴れ舞台という事で応援に行く気満々だ。
「リリーは見に来るの?」
「母さんが行くから多分行くと思うよ」
その言葉はガブリエルに取って好きな女の子が自分の活躍を見てくれるという事。つまり、渾身の見せ場。
ガブリエルは一気に剣術大会への緊張感が高まった。
ルイスはいつもは剣術に興味を示さない片割れが来てくれるという事で純粋に嬉しそうである。
「そっか! じゃあカッコいいとこ見せないとだね、ガブ!」
「お、おう」
「じゃあ剣術大会に向けて練習、頑張ってね。私は部屋で本読んどくから」
「そうだね、ちゃんと練習もしないといけないか……じゃあ、また今度鬼ごっこしようね!」
「私じゃなくてミカエルくんとしたらいいと思うよ」
「いや、俺ガブリエルだって」
いつも調子でバイバイと手を振って階段を降りていくルイスと、後ろ髪をを引かれつつルイスの後に続くガブリエルを見届けた後、リリーはまた“東洋の魔物録”を読むのを再開した。
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