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Memoria bianca

#3

回想

春、麗らかな晴天の日。
十三日、四月。

───♪

忘れ物を取りに、教室を帰る途中だった。
とにかく、憂鬱で面倒だった私は、たった一つ、その旋律に心を打たれた。

音楽室の扉の前、早まる鼓動を感じながら扉に手を掛ける。

磨硝子越しに目が合う。

心臓が跳ねる。

ピアノの前に腰掛ける少年に手招きをされる。
何事も無かったように帰るつもりだったが、私はその先へと誘われる。

「何してたの?」

柔らかくて、暖かい、心に響く声。

「えっと、忘れ物したから」

「そうなんだ!僕も忘れ物だよ」

彼の言葉に首を傾げる。
だとすれば、何で此処に居るんだろう?

彼はただ、微笑んでいた。

「ねぇ、さっきの弾いてよ」

「えぇ?」

私は無理を承知で言ってみる。
彼は困ったように私を見てから、手を鍵盤に乗せた。

───♪

音一つ一つが丁寧で、とても美しかった。

気付けば、その曲は終わっていた。
余韻に浸りながら、彼に聞く。

「これ、何て曲?」

彼は再び苦笑する。
あんなに綺麗な演奏だったのだから、相当練習したんじゃないか。
だからこそ、次の言葉に驚いた。

「楽譜は手作りなんだ」

「自分で創ったの?」

驚く私に、照れ臭そうに笑いながら、彼は頷いた。

「凄いね。雨、だっけ?」

「知ってるの?」

「そりゃ、全校児童何人だと思ってるのさ」

悲しいことにかなりの田舎だ。
少子高齢化が課題となっている地区でもある。

「えーっと、君は」

「私は秋」

「そっか。ねぇ、秋──」

そこから、思い出せない。
でも、確かその後───

世界一美しい、雨降りを見たんだ。

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2024/04/15 23:03

未藻、 ID:≫.ptShMp7d3b5w
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