Memoria bianca
──ド
それを最後に、君は何処かへ行方を眩ませた。
足も、ペダルから下ろしてしまった。
「、、」
白い壁に揺れるカーテン。
窓辺の白い花瓶。
アルコールの匂い。
清潔な真っ白の服。
病院。
懐かしいような、記憶。
モヤが掛かったように思い出せない。
「!」
ドアが開くのと、それに目を向けたのは同時だった。
一つになった長い茶髪に赤い目。
誰だろう。
「、、」
泣いてる?
ねぇ、どうしたの。
問い掛けても返事は無い。
「──、?───!」
何て、言ってるの?
その人を前に、呆然としていると医者が来た。
医者は一目見ると、何かを納得したように紙にペンを走らせた。
『あなたは今耳と口が使えていません』
動揺より先に納得をしてしまった。
悲しい、悲しい筈なんだ。
涙が出ない。
どうして?
『今日は安静にしておいて下さい』
そう医者は走り書きをすると、目の前の人を連れて部屋を出ていった。
私は一体何をしていたんだろう。
此処にいる経緯が分からない。
何も、覚えていない。
部屋を見回す。
部屋の一角に目が止まる。
キャラメルのような色のピアノ。
間違いない、私のピアノだ。
気が付けばピアノ椅子に座っていた。
鍵盤を叩く。
音は聞こえない。
いつもなら、ピアノの声が聞こえるのに。
私に話し掛けてくる癖に。
頬を濡らす生温い水を手で掬って、漸く泣いていることを理解した。
震える手をピアノに添える。
私は、二度とあなたの声を聞けないのかな。
それを最後に、君は何処かへ行方を眩ませた。
足も、ペダルから下ろしてしまった。
「、、」
白い壁に揺れるカーテン。
窓辺の白い花瓶。
アルコールの匂い。
清潔な真っ白の服。
病院。
懐かしいような、記憶。
モヤが掛かったように思い出せない。
「!」
ドアが開くのと、それに目を向けたのは同時だった。
一つになった長い茶髪に赤い目。
誰だろう。
「、、」
泣いてる?
ねぇ、どうしたの。
問い掛けても返事は無い。
「──、?───!」
何て、言ってるの?
その人を前に、呆然としていると医者が来た。
医者は一目見ると、何かを納得したように紙にペンを走らせた。
『あなたは今耳と口が使えていません』
動揺より先に納得をしてしまった。
悲しい、悲しい筈なんだ。
涙が出ない。
どうして?
『今日は安静にしておいて下さい』
そう医者は走り書きをすると、目の前の人を連れて部屋を出ていった。
私は一体何をしていたんだろう。
此処にいる経緯が分からない。
何も、覚えていない。
部屋を見回す。
部屋の一角に目が止まる。
キャラメルのような色のピアノ。
間違いない、私のピアノだ。
気が付けばピアノ椅子に座っていた。
鍵盤を叩く。
音は聞こえない。
いつもなら、ピアノの声が聞こえるのに。
私に話し掛けてくる癖に。
頬を濡らす生温い水を手で掬って、漸く泣いていることを理解した。
震える手をピアノに添える。
私は、二度とあなたの声を聞けないのかな。
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