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Memoria bianca

#1

あなたの声

──ド

それを最後に、君は何処かへ行方を眩ませた。
足も、ペダルから下ろしてしまった。



「、、」

白い壁に揺れるカーテン。
窓辺の白い花瓶。

アルコールの匂い。
清潔な真っ白の服。

病院。

懐かしいような、記憶。
モヤが掛かったように思い出せない。

「!」

ドアが開くのと、それに目を向けたのは同時だった。
一つになった長い茶髪に赤い目。

誰だろう。

「、、」

泣いてる?
ねぇ、どうしたの。

問い掛けても返事は無い。

「──、?───!」

何て、言ってるの?
その人を前に、呆然としていると医者が来た。
医者は一目見ると、何かを納得したように紙にペンを走らせた。

『あなたは今耳と口が使えていません』

動揺より先に納得をしてしまった。
悲しい、悲しい筈なんだ。

涙が出ない。

どうして?

『今日は安静にしておいて下さい』

そう医者は走り書きをすると、目の前の人を連れて部屋を出ていった。

私は一体何をしていたんだろう。
此処にいる経緯が分からない。
何も、覚えていない。

部屋を見回す。

部屋の一角に目が止まる。
キャラメルのような色のピアノ。
間違いない、私のピアノだ。

気が付けばピアノ椅子に座っていた。

鍵盤を叩く。
音は聞こえない。

いつもなら、ピアノの声が聞こえるのに。
私に話し掛けてくる癖に。

頬を濡らす生温い水を手で掬って、漸く泣いていることを理解した。

震える手をピアノに添える。
私は、二度とあなたの声を聞けないのかな。



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作者メッセージ

閲覧頂き感謝です、
この小説は真面目に直ぐに完結させます。

2024/04/11 17:56

未藻、 ID:≫.ptShMp7d3b5w
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