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カーテン

#1


[中央寄せ]「親は子を愛す」[/中央寄せ]
という。
私はこの言葉が嫌いだった。
まるで、自分の子供なら誰でもよかったみたいではないか。例え、私が[打消し]美雨[/打消し]でも[打消し]幸音[/打消し]でも[打消し]かずさ[/打消し]でも。
そう、誰でもよかったのだ。
親にとって、従順に、問題なく育ってくれれば誰でもよかったのだろう。
こういう事を考えてしまう自分に嫌気が差した。吐き気がした。それを誤魔化すかのように水を飲んだ。冷たいそれはやがて私の体温と混じって胃の中へ消えていった。

私の1日はカーテンを開けることから始まる。義務感に駆られ上体を起こし、重い手を持ち上げてカーテンを開ける。シャッといい音がする。とても不快だった。

今日も、また同じことを繰り返すのだ。
朝起きて母に適当に返事をし、父を見送り弟に見送られ、友達の顔色をうかがうかつつまらないと思っていることを悟られぬよう笑う。嫌いな人がいたとしてもまるで友達のように接する。具合が悪くても元気なふりをする。あえて少し具合が悪いふりをして、本当は死にそうなぐらい痛いのを隠すこともある。つまらない授業を聞き、問題をとき、積極的に授業に取り組む優等生を演じる。放課後の部活は引退したのでもうない。面倒くさい先生との会話も減る。それは素直に嬉しい。家に帰って適度に母親の愚痴を聞き、こちらも愚痴を吐く。そのあとスマホをいじって、しばらくしたら勉強を始める。終わったら晩御飯を食べ、吐き気を隠す。そしたらお風呂に入って、少し本を読んでから寝る。
なんとつまらない1日だろうか。
これをこの先何百日何千日も繰り返すと思うと、絶望しかなかった。死んでしまいたい。とは違った。
生きていたくない。のほうが近い。
一度だけ、ベランダから飛ぼうとした。純粋に、怖かった。飛ぶことはできなかった。

一度だけ、つい呟いた言葉が友達に届いてしまった。
「きえたい」
友達は、戸惑ったような顔をした。驚いてもいた。傷ついてもいた。言ってしまうつもりはなかった。本当に、無意識に言葉が出てしまったのだ。その時、なにもなかったかのように焦って話題をそらしたのは覚えている。なにも詮索せずに話に乗ってくれた彼女は良い人だと思う。

一度だけ、泣けた日がある。親に怒られた日だった。努力が認められなかったということだけで泣いた。泣けた。もう私の涙は枯れてしまったのか、泣きたくても泣けない日が続いていた。

そう、一度だけだ。
心からの暴言を吐いたのは。
誰もいない部屋で、クッションに八つ当たりをした。もう面倒くさい、生きたくないと。一方で、死ぬ恐怖もあることを。


朝起きる。カーテンを開ける。
私が起きなくなる日は、あと何日後だろうか。

このボタンは廃止予定です

2024/06/22 14:54

みかんかん ID:≫ipI9qkncj8FpU
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