ギャル沢さんは委員長推し
#1
あのギャルどうにかしてください!!
薫子side
私、[漢字]角屋[/漢字][ふりがな]すみや[/ふりがな][漢字]薫子[/漢字][ふりがな]かおるこ[/ふりがな]には、最近少し困ったことがある。
「すみるこ〜、ペン貸して」
「え、すみるこ昼にドーナツ食ってんの? ウケる」
「ねーすみるこー。マジめんどい! 課題手伝って〜」
"ギャル沢さん"につきまとわれているということだ。
[中央寄せ]・-・🤍-*-🤍・-・[/中央寄せ]
「ギャル沢さん」こと[漢字]丸沢[/漢字][ふりがな]まるさわ[/ふりがな][漢字]杏珠[/漢字][ふりがな]あんじゅ[/ふりがな]さんは、金髪ロングのいわゆるギャルだ(ちなみに「ギャル沢さん」とは私が心の中で勝手に呼んでいるあだ名である)。
クラスでも存在感バチバチで、いつも騒がしいいかにも一軍女子って感じの人だ。
一方私は、教室の隅っこでじっとしているタイプの地味女子。
私は一応、図書委員長をしているから学校での知名度はそこそこだが、クラスの明るく騒々しい雰囲気に打ちのめされて口数は少ない。
流行りに乗れない私と、流行最先端のギャル。
そんな私とギャル沢さんは無縁のはずだった。
きっかけは最近、高校2年生になってクラスがギャル沢さんと一緒になったことだ。
他に同じような系統の明るい女子は沢山いるのに、妙に私に話しかけてくるわ、毎休み時間何かしら「貸して」とせがんでくるわ、もう訳がわからない。
しかもその上、ギャル沢さんは私を何故か「すみるこ」と呼ぶ。
多分「すみやかおるこ」をもじって「すみるこ」となったのだろうけど、私をそう呼ぶのはギャル沢さんただ1人だ。
彼女が私を呼びつけるたび、周りの人がざわざわし出して気恥ずかしい。
でも無視するのもなんだか違う気がして、とりあえず応えるけど。
今日もギャル沢さんは私に話しかけてくる。
「すみるこ、昼一緒に食べよーぜー」
「っ、は、はい......」
ある日のお昼休み、菓子パンを持った彼女はいつも通り近づいてきて、私の肩をガチッと掴む。
「お、今日のすみるこはシュークリーム? やっぱ変わってんね〜」
「そ、そうですか?」
まだ全然慣れない私は同い年なのに敬語になってしまう。
ギャル沢さんは私の前の席を誰に断ることもなく平然と奪い去っ
た。私と向かい合って食べる気だ。
「ってかさ〜、最近小テスト多くね? マジ萎える」
「あー、まぁ、そうですね」
「んね、昨日の"好きラブ"観た?」
「えっと、すきらぶ?」
「うわー観てないんか! ないわ〜」
「ドラマ、ですか?」
「そう。めっちゃキュンするの。マジ観なきゃ人生半分くらい損してるよ」
「そ、うなんですね」
1人で「俳優の田村?田中?かなんかがかっこよくて──」とかなんとか喋っているギャル沢さんを尻目に、シュークリームをかじる。
──この人と会話するの、疲れるなぁ。
ため息を堪えながら黙々と食べ進める私に、ギャル沢さんは「ちょっと! 抜け駆けすんなし〜」と不満を垂れる。抜け駆けのつもりはなかったけど。
「じゃーん、見てすみるこ。うちの今日のお昼!」
「......ドーナツ?」
1秒前までへの字だったピンクの唇はニンマリと笑っていて、見ると自慢げに掲げていたのはドーナツだった。菓子パンと見間違っていたらしい。
「すみるこ、この前昼にドーナツ食ってたっしょ? マジおもろくて真似しちゃったわ」
「........................」
それは、私を馬鹿にしているのだろうか。それともただ単に真似っこ?
ぐるぐると疑念が渦を巻く私には目もくれず、ギャル沢さんは袋を乱暴に開けてドーナツ(いちごチョコ)に美味しそうにかぶりついた。
「んまぁ〜! って、すみるこ、食べないの?」
呆然とその様子を眺めていた私に、ギャル沢さんが怪訝な顔をす
る。
「た、食べます」
「てかさ、ずっと思ってたけど、すみるこなんで敬語? 堅苦しくてキモいわ」
「え、えっと」
「あ、すみるこ今日の放課後暇? どっか出かけよ」
「え? いや、今日は暇じゃなくて」
──この人、私が返事する前に話題変えてくるんだけど......!?
「すみるこ、あとで数学のノート見してくんね?」
「う、うん」
「なんかさ、"すみるこ"って"おしるこ"みたいでウケる」
──あなたが勝手に呼んでるんでしょーがぁぁ!!
もう我慢できない。話題コロコロ変わるし私の話聞いてくれない
し!
「んねーすみるこ......」
「あ、あのっ! 私ちょっと用事思い出したのでっ!!」
私はとうとう耐え切れなくなって、シュークリームを全部口に無理やり押し込んで教室を飛び出した。
「え?」ギャル沢さんの間の抜けた声が耳に届く。
──あのギャルどうにかしてください!!
私、[漢字]角屋[/漢字][ふりがな]すみや[/ふりがな][漢字]薫子[/漢字][ふりがな]かおるこ[/ふりがな]には、最近少し困ったことがある。
「すみるこ〜、ペン貸して」
「え、すみるこ昼にドーナツ食ってんの? ウケる」
「ねーすみるこー。マジめんどい! 課題手伝って〜」
"ギャル沢さん"につきまとわれているということだ。
[中央寄せ]・-・🤍-*-🤍・-・[/中央寄せ]
「ギャル沢さん」こと[漢字]丸沢[/漢字][ふりがな]まるさわ[/ふりがな][漢字]杏珠[/漢字][ふりがな]あんじゅ[/ふりがな]さんは、金髪ロングのいわゆるギャルだ(ちなみに「ギャル沢さん」とは私が心の中で勝手に呼んでいるあだ名である)。
クラスでも存在感バチバチで、いつも騒がしいいかにも一軍女子って感じの人だ。
一方私は、教室の隅っこでじっとしているタイプの地味女子。
私は一応、図書委員長をしているから学校での知名度はそこそこだが、クラスの明るく騒々しい雰囲気に打ちのめされて口数は少ない。
流行りに乗れない私と、流行最先端のギャル。
そんな私とギャル沢さんは無縁のはずだった。
きっかけは最近、高校2年生になってクラスがギャル沢さんと一緒になったことだ。
他に同じような系統の明るい女子は沢山いるのに、妙に私に話しかけてくるわ、毎休み時間何かしら「貸して」とせがんでくるわ、もう訳がわからない。
しかもその上、ギャル沢さんは私を何故か「すみるこ」と呼ぶ。
多分「すみやかおるこ」をもじって「すみるこ」となったのだろうけど、私をそう呼ぶのはギャル沢さんただ1人だ。
彼女が私を呼びつけるたび、周りの人がざわざわし出して気恥ずかしい。
でも無視するのもなんだか違う気がして、とりあえず応えるけど。
今日もギャル沢さんは私に話しかけてくる。
「すみるこ、昼一緒に食べよーぜー」
「っ、は、はい......」
ある日のお昼休み、菓子パンを持った彼女はいつも通り近づいてきて、私の肩をガチッと掴む。
「お、今日のすみるこはシュークリーム? やっぱ変わってんね〜」
「そ、そうですか?」
まだ全然慣れない私は同い年なのに敬語になってしまう。
ギャル沢さんは私の前の席を誰に断ることもなく平然と奪い去っ
た。私と向かい合って食べる気だ。
「ってかさ〜、最近小テスト多くね? マジ萎える」
「あー、まぁ、そうですね」
「んね、昨日の"好きラブ"観た?」
「えっと、すきらぶ?」
「うわー観てないんか! ないわ〜」
「ドラマ、ですか?」
「そう。めっちゃキュンするの。マジ観なきゃ人生半分くらい損してるよ」
「そ、うなんですね」
1人で「俳優の田村?田中?かなんかがかっこよくて──」とかなんとか喋っているギャル沢さんを尻目に、シュークリームをかじる。
──この人と会話するの、疲れるなぁ。
ため息を堪えながら黙々と食べ進める私に、ギャル沢さんは「ちょっと! 抜け駆けすんなし〜」と不満を垂れる。抜け駆けのつもりはなかったけど。
「じゃーん、見てすみるこ。うちの今日のお昼!」
「......ドーナツ?」
1秒前までへの字だったピンクの唇はニンマリと笑っていて、見ると自慢げに掲げていたのはドーナツだった。菓子パンと見間違っていたらしい。
「すみるこ、この前昼にドーナツ食ってたっしょ? マジおもろくて真似しちゃったわ」
「........................」
それは、私を馬鹿にしているのだろうか。それともただ単に真似っこ?
ぐるぐると疑念が渦を巻く私には目もくれず、ギャル沢さんは袋を乱暴に開けてドーナツ(いちごチョコ)に美味しそうにかぶりついた。
「んまぁ〜! って、すみるこ、食べないの?」
呆然とその様子を眺めていた私に、ギャル沢さんが怪訝な顔をす
る。
「た、食べます」
「てかさ、ずっと思ってたけど、すみるこなんで敬語? 堅苦しくてキモいわ」
「え、えっと」
「あ、すみるこ今日の放課後暇? どっか出かけよ」
「え? いや、今日は暇じゃなくて」
──この人、私が返事する前に話題変えてくるんだけど......!?
「すみるこ、あとで数学のノート見してくんね?」
「う、うん」
「なんかさ、"すみるこ"って"おしるこ"みたいでウケる」
──あなたが勝手に呼んでるんでしょーがぁぁ!!
もう我慢できない。話題コロコロ変わるし私の話聞いてくれない
し!
「んねーすみるこ......」
「あ、あのっ! 私ちょっと用事思い出したのでっ!!」
私はとうとう耐え切れなくなって、シュークリームを全部口に無理やり押し込んで教室を飛び出した。
「え?」ギャル沢さんの間の抜けた声が耳に届く。
──あのギャルどうにかしてください!!
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