コード:リヴィングデッド
全身を柔い電流が駆け巡り、頭に小さな痛みが刺す――
『[漢字]Sicut dea vota[/漢字][ふりがな]女神の望む儘に[/ふりがな]―――暫し祈りを』
『待ってちゃダメだよ。進まなくちゃ』
――嘗ての仲間の声が、少しだけ脳髄に響き渡った。
彼らなりの激励か、若しくは警告か――どちらにせよ、此処で死ぬ理由に成れはしないか。
ならばやるべき事は一つのみ。目の前の敵を打ち倒し、只明日を掴む――祈れ、運命が回るように。進め、守り育む[漢字]矛[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]の様に。
視界が開ける。機体との[漢字]接続[/漢字][ふりがな]リンク[/ふりがな]が完了したようだ。
「チッ……」
『ピ…EMERGENCY、爆発物を検出しました』
先ほどよりも高くなった視界に目を慣らしている暇もなく、天井に開けられた穴の向こうから鉄塊が一つ飛んできているのを、AIがやかましい警告音声とともに知らせてくる。
所謂グレネードランチャーと呼ばれるものの類――要するに爆発物だ。触れれば中に仕込まれた信管が作動し、この鉄の箱に開けられた穴のようにそこら一帯を吹き飛ばす程の威力を持つ。
避ければ守るべき文民が、然し避けず受ければ自らがその破片に溺れ、儚く命を落とすことだろう。
頭を抱えたくなる――が然し、俺はこういう時の対処法を知っている。
避ける?―――守るべき尊い文民の命を捨てて?―――否。
受ける?―――この場においてアレを止めることのできる最高戦力を捨てて?―――否。
己は兵士だ。民を守り、仲間を守り、只道を示す北極星だ。やるべき事は一つだろう?―――了。
[漢字]避けつつ受ける[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]―――直上へのバトルブースト。
ぐんと体が地に押し付けられる感覚と、その逆にぐんぐんと上昇する我が機体。
速度を増して飛翔するグレネードをその高さに持ち上げた[漢字]足で[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな][漢字]以て[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]蹴り飛ばし、降りぬいた足の方向へバトルブースト。
ずどんと大きな音を立て、鉄の塊は宙で破裂した――『警告、機体脚部へダメージ』――損壊は免れなかったか。コックピットへ被害が及ばなかっただけマシと考えよう。
手榴弾ならいざ知らず、グレネードランチャーならば触れてから爆発するまでに約〇.三秒の隙間がある。
その爆発から逃げるように推力を発生させれば、損壊は最小限に抑えられるというわけだ。
(敵機は―――……そこか)
レーダーに光る赤い光点。振り返ってその場を見れば、灰色の巨人が銃を構えて佇んでいた。
(交戦意思がないかも――と考えるのは性善説が過ぎるか)
右、左、右、右、左――なるべく正面に立たないようブーストしつつ、敵機へとその身を飛ばす。
衝撃。
全身にかかるGを尻目に、推力を受け取って―――只の鉄の塊と化し、激突する。
体をくの字に曲げつつ、巨人は地面を滑って行った。…動かない。パイロットの内臓が破裂したか。
(一人だけなら良いのだが―――うん?)
レーダーに映る、先ほどのような赤ではなく、緑に光る[漢字]もう一つの光点[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]。
それはつまり、この場に介入しようとする第三者の存在を示していた。
『ありゃ…終わっちった感じ?』
「…む、う…」
『機体越しにでも困惑ってのは伝わってくるモンなのね……ちゃーす『[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな]』、元気してる?』
[中央寄せ]ΩΩΩ[/中央寄せ]
かつて、大戦で名を馳せた7人の英雄がいた。
道を照らし、迷わぬようにと苦心した、北に輝く星がいた。
≪[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな])≫。名をビスタ・ネブレス。
手を汚し、心を折っても敵を追う一頭の猟犬がいた。
七つが星の一つ。
≪[漢字]猟犬の心臓[/漢字][ふりがな]シリウス[/ふりがな]≫―――名を。
『リヴィヴス・アシック・リバーウッド。……もっかい聞くぜ。ハロー『[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな]』、元気してた?』
「………おかげさまで、な」
『[漢字]Sicut dea vota[/漢字][ふりがな]女神の望む儘に[/ふりがな]―――暫し祈りを』
『待ってちゃダメだよ。進まなくちゃ』
――嘗ての仲間の声が、少しだけ脳髄に響き渡った。
彼らなりの激励か、若しくは警告か――どちらにせよ、此処で死ぬ理由に成れはしないか。
ならばやるべき事は一つのみ。目の前の敵を打ち倒し、只明日を掴む――祈れ、運命が回るように。進め、守り育む[漢字]矛[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]の様に。
視界が開ける。機体との[漢字]接続[/漢字][ふりがな]リンク[/ふりがな]が完了したようだ。
「チッ……」
『ピ…EMERGENCY、爆発物を検出しました』
先ほどよりも高くなった視界に目を慣らしている暇もなく、天井に開けられた穴の向こうから鉄塊が一つ飛んできているのを、AIがやかましい警告音声とともに知らせてくる。
所謂グレネードランチャーと呼ばれるものの類――要するに爆発物だ。触れれば中に仕込まれた信管が作動し、この鉄の箱に開けられた穴のようにそこら一帯を吹き飛ばす程の威力を持つ。
避ければ守るべき文民が、然し避けず受ければ自らがその破片に溺れ、儚く命を落とすことだろう。
頭を抱えたくなる――が然し、俺はこういう時の対処法を知っている。
避ける?―――守るべき尊い文民の命を捨てて?―――否。
受ける?―――この場においてアレを止めることのできる最高戦力を捨てて?―――否。
己は兵士だ。民を守り、仲間を守り、只道を示す北極星だ。やるべき事は一つだろう?―――了。
[漢字]避けつつ受ける[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]―――直上へのバトルブースト。
ぐんと体が地に押し付けられる感覚と、その逆にぐんぐんと上昇する我が機体。
速度を増して飛翔するグレネードをその高さに持ち上げた[漢字]足で[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな][漢字]以て[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]蹴り飛ばし、降りぬいた足の方向へバトルブースト。
ずどんと大きな音を立て、鉄の塊は宙で破裂した――『警告、機体脚部へダメージ』――損壊は免れなかったか。コックピットへ被害が及ばなかっただけマシと考えよう。
手榴弾ならいざ知らず、グレネードランチャーならば触れてから爆発するまでに約〇.三秒の隙間がある。
その爆発から逃げるように推力を発生させれば、損壊は最小限に抑えられるというわけだ。
(敵機は―――……そこか)
レーダーに光る赤い光点。振り返ってその場を見れば、灰色の巨人が銃を構えて佇んでいた。
(交戦意思がないかも――と考えるのは性善説が過ぎるか)
右、左、右、右、左――なるべく正面に立たないようブーストしつつ、敵機へとその身を飛ばす。
衝撃。
全身にかかるGを尻目に、推力を受け取って―――只の鉄の塊と化し、激突する。
体をくの字に曲げつつ、巨人は地面を滑って行った。…動かない。パイロットの内臓が破裂したか。
(一人だけなら良いのだが―――うん?)
レーダーに映る、先ほどのような赤ではなく、緑に光る[漢字]もう一つの光点[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]。
それはつまり、この場に介入しようとする第三者の存在を示していた。
『ありゃ…終わっちった感じ?』
「…む、う…」
『機体越しにでも困惑ってのは伝わってくるモンなのね……ちゃーす『[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな]』、元気してる?』
[中央寄せ]ΩΩΩ[/中央寄せ]
かつて、大戦で名を馳せた7人の英雄がいた。
道を照らし、迷わぬようにと苦心した、北に輝く星がいた。
≪[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな])≫。名をビスタ・ネブレス。
手を汚し、心を折っても敵を追う一頭の猟犬がいた。
七つが星の一つ。
≪[漢字]猟犬の心臓[/漢字][ふりがな]シリウス[/ふりがな]≫―――名を。
『リヴィヴス・アシック・リバーウッド。……もっかい聞くぜ。ハロー『[漢字]北極星[/漢字][ふりがな]ポラリス[/ふりがな]』、元気してた?』
「………おかげさまで、な」
このボタンは廃止予定です