あの春の日、手に取った花 編集版
彼女が主演の舞台初日。僕は事前にチケットを取っていた。
本当は一人で見に行こうと思ったが、奏にいじっていたチケット予約画面を見られ、一緒に見に行くことになった。
義母の舞台をわざわざ見に行くなんて、と奏にはあきれられた。しかし奏は舞台鑑賞が好きだから、笑顔で着いてきた。
“あの人には恩があるんだよ”
そう言うと、奏はふぅんとうなずいて答えた。
“まぁ。お母さんが出る舞台だったら、私も行くかな”
と思い直したようにした。
でも一緒に見に行くのも楽しそう、と僕達は久しぶりに気が合った。
もう何年も会ってないし、僕は身長が伸びたから、気づくか分からないけど、…あの人には気づいてほしかった。
舞台会場に着くと、なんだか知らないところに来た気分だ。
“こっちよ”
劇団長の息子の癖に僕は演劇には興味がなかった。だからここでも奏に手を引かれて歩く。本当によく知ってるな、と感心していた。
入ってしばらく歩くと、ブロマイドを受付している窓口があった。
“これ、買う?”
奏が財布を出している。
“自分で買うよ”
そう言ったが、奏が優しく微笑む。
“たまには私が。それに、恭の嬉しそうな顔、久しぶりだった。なんか乗りで出したくなっちゃった。”
僕はその言葉に遠慮なく甘えた。
もちろん買ったのは全部凪さんのだ。
もうすぐ公演の時間になる。
彼女は舞台の上でどれだけ美しく輝くのだろうーー。
本当は一人で見に行こうと思ったが、奏にいじっていたチケット予約画面を見られ、一緒に見に行くことになった。
義母の舞台をわざわざ見に行くなんて、と奏にはあきれられた。しかし奏は舞台鑑賞が好きだから、笑顔で着いてきた。
“あの人には恩があるんだよ”
そう言うと、奏はふぅんとうなずいて答えた。
“まぁ。お母さんが出る舞台だったら、私も行くかな”
と思い直したようにした。
でも一緒に見に行くのも楽しそう、と僕達は久しぶりに気が合った。
もう何年も会ってないし、僕は身長が伸びたから、気づくか分からないけど、…あの人には気づいてほしかった。
舞台会場に着くと、なんだか知らないところに来た気分だ。
“こっちよ”
劇団長の息子の癖に僕は演劇には興味がなかった。だからここでも奏に手を引かれて歩く。本当によく知ってるな、と感心していた。
入ってしばらく歩くと、ブロマイドを受付している窓口があった。
“これ、買う?”
奏が財布を出している。
“自分で買うよ”
そう言ったが、奏が優しく微笑む。
“たまには私が。それに、恭の嬉しそうな顔、久しぶりだった。なんか乗りで出したくなっちゃった。”
僕はその言葉に遠慮なく甘えた。
もちろん買ったのは全部凪さんのだ。
もうすぐ公演の時間になる。
彼女は舞台の上でどれだけ美しく輝くのだろうーー。