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あの春の日、手に取った花 編集版

#38

帰宅

“じゃ、お前ここだろ”
“うん。恭、気を付けてね”
僕は頷いて奏のもとを去る。
奏と同棲……、つい、そんなことを考えてしまう。
どんな感じになるんだろう。
僕は奏が好きだ。けっして居心地の悪い生活にはならないだろう。
まぁ会社は隣りにいつもいるし、で、帰ってきて……、奏が料理をするようになるのかな。
奏はハンバーグとチンジャオロースが得意だと言っていた。母親からの伝授らしい。
奏の母親は若い頃、とても女子力があり学校一モテていたらしく、そんな母親を持つ奏もモテている。
そして、その性格、美貌、才能を兼ね備えた奏は、僕の彼女という立ち位置にいる。
奏は演劇に興味があると言っていた。それはもう、十分過ぎるほどに、伝わってくる。
母親が演劇好きだったとか、そういう話は聞いたことがないけど、好きなのかな。
でも、奏は一人で率先してやるようなタイプだからな。
自分で見て、魅力を掴んで、好きになったのかもしれない。
本当に僕の勝手な独断だけどね。
でも、奏は素晴らしい女性だと思う。

凪さんももちろん素晴らしい女性だ。
だけど僕は凪さんに会うと、嬉しいという気持ちだけでなく、心が締め付けられる。
それは、だめなことをしているからという理由ではない気がする。
凪さんと過ごしていると………どことなく、不安定になる。
自分が分からなくなる。まだ思春期のように、不安定さが体中を巡る。
あぁ……僕はあのとき凪さんを好きだと確信したのではなかったのか。
凪さんを僕は………。
この言葉をすぐに言えない。言えない………。
奏の前だと、言えるかな……。
まず、奏と付き合うときにプロポーズをしてないから。その、……友人に、しつこくというか……。そんな感じだったから。
まだ、好きってよく分からない……。

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2023/10/09 12:13

礼舞 ID:≫5pGdECtpkmy/Y
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