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あの春の日、手に取った花 編集版

#32

凪と恭

ある春の日。私に花を取ってきてくれたっけ。
忘れられないな。まぁ、あの後風邪引いちゃった訳だけど。でも…嬉しかったなぁ。
“はぁい”
ここは劇団の宿泊場所。私の部屋に客が来たのだ。
“あっ…”
恭君だった。
“凪さん…やっと会えた………!”
抑えてきた言葉を吐き出すように……彼はいう。
私は真っ赤になってドキドキしてしまった。だめなことなのに。
この人は…息子なのに…。
“……ッ”
恭君は、私の胸元に顔を埋めて、一緒に倒れ込んだ。
“だめ……!離してっ、お願いッ……”
私の声はどんどん弱々しくなっていく。
“なんでそんなこと言うの?”
子供みたいに恭君が言う。
この人は昔から不安定だ。
どこか寂しげで、それでいて強がりで……。私に甘えていた。
彼が15歳のとき、この場所へ来てしまったけれど。
恭君はあの時よりずっと背が伸びて、力も強くなっていた。
私には……とめられない。

“……………、”
声を出しはしないと決めた。だって、彼をその気にさせるわけには行かないから、だからーー。

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2023/08/11 15:04

礼舞 ID:≫.pLEuUA6Wte8Y
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