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あの春の日、手に取った花 編集版

#30

役者

“ほら、こっち”
迷子になったのを助けて貰ったロケ地まで来る。山の中は空気が薄かった。
“あそこ、眩しいね”
わたしが言うと
“あの照明が写真写りに関わってくるんだ”
ふぅんと軽めに頷いておく。まずこんなに明るい電気を見るのは初めてだった。
あぁ。こんななんだ。現代って、凄いなぁ、と大して生きてもいないのにわたしは思う。
“おじちゃんは…役者さん?”
“ううん、演技は一応できるけどね”
“じゃあここで何するの”
“監督。脚本とかも。役者の演技のアドバイス、演出のアドバイス…かな”
脚本は台詞とか書かれてる本だよね。色んなアドバイスもするんだ監督って。へぇ。
“君もその脚本とか演出に従って演技するんだよ”
“………、私が……”
“……自身がないかい?”
“…だって、芸能界の人ってお話しするのが得意だったりするでしょう。わたしは…ママ以外に話したことある人……いないのに、……なんで”
“……お嬢ちゃん、なんて呼ばれたい?”
なんで急に呼び名?
“普通に……凪で良いよ”
“凪、そういうは内に情熱を秘めてる。またはな、芸能界に入って、新しいコミュニケーションを学ぶこともある。”
それが芸能界。
私に出来るのか。みんなに情熱を見せられるのか、呆れられないのか。こんな私でもーー。

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2023/08/11 10:07

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