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あの春の日、手に取った花 編集版

#27

第二部 死

今日も外、冷えてるかな。
そうお母さんに聞いた。するとお母さんは気を使って、
“そうだね。…母さんが、一人で買ってくるよ”
私たちはかなりの貧乏だった。
お父さんは私が生まれてすぐ出て行った。だからお金を稼げるのはお母さんしかいない。そのはずなのに…お母さんは私への愛情を最優先にした。何より愛情を大切にする人だった。
私は、溢れるほどの愛情を知った。

“お母さん、大丈夫?”
月日がたって、お母さんが病気になった。とても高い熱が出た。
“凪……ありがとね。……良い子だね……”
そう褒めて頭をなでてくれた。


お母さんは……死んだ。
あの愛情をもう二度と受けられないのだと知ると、胸がはち切れそうだった。
私は…お母さんが死んだって言うのに、なんのために生きているのだろう。

“お嬢ちゃん”
ある日、雪の中をさまよっていると、おじちゃんに声をかけられた。
“はい”
私は小さな声で返事をした。
“今はロケでもやってるの?カメラがないけど”
“え?”
“おじちゃんたち、ここをロケ地に使うって契約してたんだよ。そしたら、君がいたから”
全く話しが飲み込めなかった。知らない用語に翻弄されて。
大体、関係ないでしょう、私。
ただの女の子が彷徨っているだけなのになんでカメラとかロケ地とかの話し?
“今、なんの映画取ってるの?”
また意味不明なことを聞かれる。
“どういう…意味ですか”
おじちゃんは目を丸くした。私のことを見つめてくる。
“えっ、だって君、ここをロケして撮影してる子役さんじゃないの?”
私はその言葉に慌てて首を振った。
“違います!”
“じゃあなんで…こんなところに…?おじちゃん、あまりにもべっぴんさんだったから間違えちゃったよ”
おじちゃんの言葉に、今は笑い返せなかった。もう、寒くて、辛くてーー。

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2023/08/08 18:06

礼舞 ID:≫5pGdECtpkmy/Y
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