あの春の日、手に取った花 編集版
僕は食べながら回想する。
“美味しいね”
義母が僕に笑いかける。僕は味噌汁をガツガツと飲みながら頷いた。
このとき僕は熱があった。だから意識は朦朧としていたと思う。
僕さ、このとき川に落ちて熱を出したんだよ。バカだよね。義母に桜の花を取ってあげたくて、枝から枝にしがみついてたら、川に落ちる始末さ。
“食べさせて”
“えっ?”
我ながら恥ずかしい。もう10歳だってのに、食べさせてもらいたいなんて…。
そんな無茶苦茶なお願いも義母は聞いてくれた。でも少し恥ずかしそうだったな。こんなこと義母に言っていいのか分からないけど、…なんだか可愛かった…。
僕は味噌汁を飲んだ後、疲れて横になったっけな。もう40度位の熱だったと思う。喉や鼻が暑かった。
“ごめんね…私のせいで…”
義母は申し訳なさそうに僕の隣に座り、手を握っていた。
なんかこのときは、演技の稽古をしていて、凪さんは着物姿だった。十二単だ。
確か、源氏物語の舞台練習だった。僕は出ることができなかったけど。
凪さんが演じたのは藤壺という女性だ。義理の息子と禁断の恋を繰り広げる。そこから、…光源氏の物語は始まる。
“もう練習に戻りなよ”
凪さんが隣にいてくれてるのに、僕は失礼だ。
“う、うん”
彼女が立ち上がると同時に僕は起き上がった。
“恭君?”
着物の匂いがする。僕は凪さんの体にしがみついていた。
“凪さんは…どこにも行かないよね”
“えっ?”
“母さんみたいに…どこか会えないところには…行かないよね?”
凪さんは戸惑った風にしていた。義母と言っても、たったの15だ。
“…。ええ。ずっといっしょよ。恭君、安心して”
そう言って凪さんは抱き締めてくれた。
“美味しいね”
義母が僕に笑いかける。僕は味噌汁をガツガツと飲みながら頷いた。
このとき僕は熱があった。だから意識は朦朧としていたと思う。
僕さ、このとき川に落ちて熱を出したんだよ。バカだよね。義母に桜の花を取ってあげたくて、枝から枝にしがみついてたら、川に落ちる始末さ。
“食べさせて”
“えっ?”
我ながら恥ずかしい。もう10歳だってのに、食べさせてもらいたいなんて…。
そんな無茶苦茶なお願いも義母は聞いてくれた。でも少し恥ずかしそうだったな。こんなこと義母に言っていいのか分からないけど、…なんだか可愛かった…。
僕は味噌汁を飲んだ後、疲れて横になったっけな。もう40度位の熱だったと思う。喉や鼻が暑かった。
“ごめんね…私のせいで…”
義母は申し訳なさそうに僕の隣に座り、手を握っていた。
なんかこのときは、演技の稽古をしていて、凪さんは着物姿だった。十二単だ。
確か、源氏物語の舞台練習だった。僕は出ることができなかったけど。
凪さんが演じたのは藤壺という女性だ。義理の息子と禁断の恋を繰り広げる。そこから、…光源氏の物語は始まる。
“もう練習に戻りなよ”
凪さんが隣にいてくれてるのに、僕は失礼だ。
“う、うん”
彼女が立ち上がると同時に僕は起き上がった。
“恭君?”
着物の匂いがする。僕は凪さんの体にしがみついていた。
“凪さんは…どこにも行かないよね”
“えっ?”
“母さんみたいに…どこか会えないところには…行かないよね?”
凪さんは戸惑った風にしていた。義母と言っても、たったの15だ。
“…。ええ。ずっといっしょよ。恭君、安心して”
そう言って凪さんは抱き締めてくれた。
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