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あの春の日、手に取った花 編集版

#11

凪の実力⑥

彼女が好きなら、…奏は何なんだ。
僕は奏が好きだ。今までは気に食わないことがあったけど、彼女の良い部分を少しずつ知って、今日はそれを一気に浴びせられたような気がして…。しかも、小鳥遊凪という大女優の名演技を見抜こうという情熱に心をかき立てられた。彼女が女優になりたいのかは分からない。けれど…、たまらなく応援したくなったのは確かだ。
僕は演出家でもないから説得力はないかもしれない。だけど絶対、間違いなく、奏は女優のセンスがある。
僕は奏を応援する立場なだけなのか。いや、違うんだ。一体、この気持ちは何なんだろう。

“待って、待ってください。”
かぐや姫が天のは衣をまとう場面だ。
ここでも、人間らしくなったかぐや姫が自分の意思で、待って、と言っているのがよく分かる素晴らしい演技だ。
ここできっと、彼女は大号泣しなければならない。月の光をイメージしたスポットライトで彼女の表情がよく見える。
僕は凪さんの表情も見ながら、奏を盗み見した。
凄く、…驚くほど見入っている。
こういうとき、熱意のある人間は、役者の演技をどのように見るんだろう。
“………っ!”
奏は…感動して泣いていた。
僕は泣いていない。凪さんの情熱さに必死で、……話しなど、台詞など見聞きしていなかった。……
やっぱり、演技も、脚色の良さもどっちも見抜ける、奏の才能は素晴らしい、と真面目に思った。
いつの間にか、横目じゃなくて、正面を向いて、奏の横顔を見つめた。
ライトで涙が反射して、とても美しかったーー。

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2023/07/27 19:16

礼舞 ID:≫5pGdECtpkmy/Y
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