私立[漢字]華月[/漢字][ふりがな]かげつ[/ふりがな]学園、中等部2年A組の目の前に一人の男が立っていた。その男の着ている服は高等部の制服だった。高等部の生徒がここに来るのが珍しいのか、それとも容姿が整っている男を見たいのか中等部の生徒はちらちらと忙しなく男の方を見ている。男には探し人がいるようで、その[漢字]組[/漢字][ふりがな]クラス[/ふりがな]を覗き込むように見ている。少女達は熱っぽい眼差しで男を見ている。そんな熱視線を[漢字]一瞥[/漢字][ふりがな]いちべつ[/ふりがな]した男は笑みを浮かべる。そんな男を睨みながら男の方に寄る少年がいた。

「何してるんだ、お前」

「何してるのかって…。お嬢のお迎えですよ」

「お嬢呼びをするなと、どれだけ言ったらお前は理解出来るのかな」

「嫌だなあ、愛称じゃないですか」

肩をすくめ、茶目っ気のある笑い方をする男と悪態をつく少年。この2人が並ぶことで絵画のようなものだった。会話が聞こえていない[漢字]組[/漢字][ふりがな]クラス[/ふりがな]の生徒達は見惚れていた。

「さ、帰りましょうか」

「ああ」

そう言うと少年は[漢字]組[/漢字][ふりがな]クラス[/ふりがな]のほうを見た。[小文字]「ばいばい」[/小文字]と口パクをして年相応の笑みを浮かべて手を振った。それは誰にでも分かるような口パクで意図に気付いた少年の友人達は軽く手を振った。

「ところで今日はなんでお前なんだ？」

「ええ、嫌なんですか？」

「理由を聞いているだけだ」

「[漢字]朔良[/漢字][ふりがな]さくら[/ふりがな]ちゃんが良かったって素直に言えば良いのに～！！」

「うるせえ」

「はいはい。理由ですよね！！今日は[漢字]朔良[/漢字][ふりがな]さくら[/ふりがな]は生徒会で遅くなるらしいので俺が迎えにきました」

「ああ、そうなのか…。しょうがないな、うん」

渋々、と言った具合に頷く少年。

「[漢字]周[/漢字][ふりがな]あまね[/ふりがな]様、朔良のこと待ちます？」

「……わ、びっくりした。お前に周って呼ばれるの久しぶりだ」

「反応遅いですよもう！！……やっぱりお嬢のほうが良いですよねえ！！」

「急に叫ぶな、うるさい。…待ちたい」

「んふふ、分かりました。とりあえず図書室でも行きますか。エアコン効いてると思いますし」