誰にも目につかない道で始まった戦い。

今のところ蹴られまくり、傷だらけのケイト。

残っている力を使って、腕を空に振り上げた。
拳から[漢字]水弾[/漢字][ふりがな]みずだん[/ふりがな]が飛び出す。

飛び出た水弾は、コレンゲの頬を掠めた。
ケイトの水弾はまるで新幹線の速度。頬の皮が削ぐれ、血が噴き出した。

コレンゲは傷を抑える。
「ふ〜ん……けっこう威力があるな…」

しかし、すぐに攻撃態勢をとった。

「だったら、さっさと始末したほうが身のためか…」

再び風の飛び蹴りがケイトに命中する。
少しよろめくと、ケイトは再び拳を空に放った。

だが、今度は当たらなかった。
それはケイトのヤケクソの攻撃でもあった。

（…あの風使いの攻撃……早い……だけどな…いきなり人を殺そうとするヤツなんかに負けるわけにはいかないんだよッ！）

そのとき、ケイトの周りの雰囲気を変化させた。
『いきなり自分を殺しに来たヤツに負けたくない』という気持ちが、周りの雰囲気を逆転させたのである。

その突然おかしくなった雰囲気はコレンゲも肌で感じた。
コレンゲは眉にしわを寄せながらも、その迫力を受け止める。

（……[漢字]赤砥京斗[/漢字][ふりがな]アカトギケイト[/ふりがな]と言ってたな……こいつは俺たちが探し回ってる[漢字]目的の人物[/漢字][ふりがな]アカトギレンヤ[/ふりがな]じゃないと確信した……だが、ここで戦って分かった……こいつは間違いなく、確実に………[太字][大文字]俺たちを潰しにくるッ！[/大文字][/太字]　今ここで、ヤツも消さなければ…マズいことになる……）

再び、人寂れた通りに殺気が立ち込める。
それは向かい合った二人の殺気でもあった。

ケイトは両手を固く握りしめて、ファイティングポーズをとる。

男は、空中に浮かびながら右足を斜めに配置する。

二人の攻撃の準備が整った。

ひと時の静寂、それを打ち破ったのは、いつもよりもけたたましいカラスの鳴き声だった。

二人は一斉に攻撃を始める。

コレンゲは急加速で、ケイトの方へ向かってくる。

しかし、ケイトは冷静であった。
右の拳を、コレンゲの足の裏を狙って、そのまま拳を振るい、水弾を一発撃った。

飛び出した水弾は、コレンゲの足の裏に勢いよくぶつかる。
水しぶきが飛び散った。だが、コレンゲにダメージを与えたようには見えない。

しかしそれが、ケイトの狙いでもあった。
なんとコレンゲの飛び蹴りが遅くなったのである。

水弾の速度は例えるなら新幹線。
そのぐらいの速さの水が足の裏にぶつかったなら、衝撃で遅くなるのも当然だった。

ケイトはその隙をついて、目の前の突き出された足を掴む。

「[大文字]うおォォオオオ！！[/大文字]」

自分に残った最後の力を振り絞り、そのまま地面に叩きつけた。

背中を叩きつけたせいか、背骨の割れる音が[漢字]喧[/漢字][ふりがな]やかま[/ふりがな]しく響いた。あまりにも喧しかったから、背骨だけではなく肋骨も折れていたのかもしれない。

男は確実に無事ではないだろう。
舞い散った砂ぼこりが止んだとき、勝敗は決まった。

最後に立っていたのはケイトだった。
荒っぽい息を吐きながら、大の字に倒れた男を見下ろしている。