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登場人物が死ぬ描写があります。
そして、話が進むにつれて過激な表現が含まれますのでさらにご注意ください

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果実戦争

#45

ep45 謎の男と暴れる蝶々

[中央寄せ]時刻:8月18日11時00分
場所:くろめだか 1F バックヤード[/中央寄せ]

[太字]「キミ……何してるの?」[/太字]

巻機の後ろに突如現れた白い服の男。少し乾いた声が巻機に送られた。

「な…!? いつの間に!?」

大量の果実を抱えていた巻機は、思わず後退りをしてしまう。しかし、脇に挟んでいた果実をペシャッと落としてしまった。果実は思いの外脆かったようで、中身が床にブチまけられた。

その様子を見て、白い服の男が一歩踏み込む。手を差し出して呟いたのは[下線]たった一言[/下線]だけだった。

[太字]「弁償、一億円。今すぐ現金で払える?」[/太字]

弁償の話だった。今はそんな状況ではないだろうと思ってしまうが、この男にとって、果実は一種の[下線]商売道具[/下線]なのだ。

「……オレに払えるとでも? あと、アンタは何者だ?」

「あのねぇ……こっちが質問してるんだけど。払えるの? 払えないの?……もしかして、臓器払いとか?」

男は一向に食い下がらない。代金を迫られている巻機が取った行動は…。

「ま、そもそもオレはこれを盗るために来たんだから、何が起きても払わないし、払う必要も無い」

無茶苦茶理論をカマしてやると、巻機は片手に持ってた果実を脇に抱えて、両手を軽快に叩いてみせた。次の瞬間、巻機の体が[太字]斜めに飛び上がる[/太字]、そして扉の僅かな隙間から、脱出を成功させた。

[太字]「こっちは覚悟決めてんだッ! 命大切に生きていくって覚悟をなッ!」[/太字]

巻機はバックヤードを駆け抜けていく。果実を栽培している部屋に一人取り残された謎の男。

感情の読めない無表情で、ポケットから一つのビンを取り出した。ビンの中には、[太字]銀色の蝶が数匹バサバサと蠢いている[/太字]。ビンを振りかぶり、狙いを定める。

そして、ビンを巻機の方向へ投げつけた。男の狙い通り、ビンは巻機の近くで砕け散る。ガラスの破片と同時に、中に入っている銀色の蝶々が華麗に放たれた。

この蝶々は不思議なことに、まるで[下線]未来の機械のような姿[/下線]だった。骨格むき出しの構造はいかにも不気味。そして、刃のように薄い二枚の翅には、[下線]裁縫針ぐらい細い針が、針先を前に向けてびっしりと横に並んでいた。[/下線]

「なんだよあれはァーッ!? 蝶々みたいだが、どうみても何かが違う……まさか……虫型ロボットってヤツか?」

銀色の蝶々は巻機の上空で不気味に羽ばたいていた。一刻も早くここを脱出しなければならない。巻機は滅多に出さない全速力でバックヤードへ向かう。在庫の商品カートに身を隠しながら逃走を図るも、上空を飛ぶ蝶々には何の影響もなかった。

ついに出口の扉が目に見えてきた。あともう少し、ここで止まれば蝶々に何をされるか予想もできない。あと少し、腕を伸ばし扉のドアノブに手をかけようとした、[太字]その時だった。[/太字]

ふくらはぎに鋭い痛みが襲いかかった。足の力が無くなり前に崩れ落ちる。持っていた果実が辺りに転がっていく。痛みの方向を見てみれば、[下線]注射針のように細い針がふくらはぎに突き刺さっていた。[/下線]

「クソ……アキレス健に刺さった……! あのロボット蝶々共の仕業か……。コントロールもとんでもない」

「……でも、あと少しだ……! このドアノブを捻れば……なんとかなる……!」

諦めずに体を起き上がらせ、再びドアノブに手をかけようとする。[太字]しかし[/太字]、気付いたときには、[下線]手の甲が真っ赤に染まり、まるで裁縫中の針山に変貌した。[/下線]

「……こいつら慈悲もねェのかよ……!」

針山と化した手を見つめ、顔を歪める巻機。無事な左手を必死に動かし、扉に寄りかかる。

扉からは、外の騒がしい音が伝わってきた。何かが倒れる音、誰かが何かを叫ぶ声、[下線]外でも戦いが起きている[/下線]ようだ。

「……この外に京斗がいるはずだ。なんとか、耐えねェと……!」

一方、逃げてきたバックヤードの廊下から聞こえたのは、[太字]重く鈍い足音[/太字]だった。一歩一歩鳴り響く足音に、自然と重圧に怯えた汗が湧き出てくる。

息を切らしながら、その時を待つ。しばらくすると、暗がりの角から男が身を現した。

[太字]「もう金は払わなくていいよ。その代わりキミには、[下線]これ[/下線]の実験体になってもらうから」[/太字]

男が新たにビンを一本取り出した。中には[太字]蝉[/太字]が入っていた。

作者メッセージ

とんでもないのが現れましたね
針を飛ばす蝶々ですよ、とんでもないです

2025/01/26 12:03

ドレミファ・ソラティド ID:≫ 0.TrYh4UVMu/A
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