果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日10時45分
場所:くろめだか 1F 売り場コーナー[/中央寄せ]
(なんで一人にするんだよ……!)
真っ暗なスーパーを歩く京斗の心は、まるで一人ぼっちの子羊のようだ。
少し物音がしただけで飛び上がってしまうんじゃないかってぐらい、半端なく怯えている。
さっきの威勢はどこいったんだ、と言いたいところだが人間の気持ちは簡単じゃないから仕方がない。周りを見渡しながら、足早に二つの棚の間に隠れた京斗。もう涙目だ。
(……これって幽霊とか出ないよね……!?)
恐怖で体が冷え冷えしてくる。今後の人生で二度とこんな恐怖を味わうことは無いと思いたい。
(……なにか出てきそうだな……)
良くない想像を張り巡らせながら、次の角を曲がろうとした。
その時だった。
左の棚の角から、赤黄色に光る塊が右の棚へ通り過ぎた。それはゆらゆらと揺らめいており、赤い粒をぱちぱち弾けさせている。それは『火の玉』そのものに見えた。
言葉にならない驚きが京斗を襲う。口を抑えて、後ろにゆっくりと下がっていく。
(……マジでいたんだけど……!)
驚く心と相反的に、ゆっくりと後ずさり。だからなのか、棚から飛び出しているパスタの袋に気付くことはできなかった。
パスタの袋が服に引っかかる、パリッとした音が辺りに響いた。落ちたパスタに向けた目を前に移した時、京斗の体が青ざめる。
棚の隙間を、『火の玉』が覗いていたのだ。
「あ………!」
火の玉と目が合った。その次の瞬間、火の玉が轟々と火花を撒き散らしながら、こちらへと向かってくる。
(……なんだよアレ!?)
物音を気にする余裕もなく、京斗は無我夢中で走った。もちろん火の玉も後ろを付いてきている。
(なんだよここはお化け屋敷かよ!?)
京斗はパニックになり、入口から奥の方向へ逃げ惑う。
棚をくねくねと曲がり、火の玉を撒こうと試してみるも、全然効果はない。
次に目に入ったものは、食品が山積みになった車輪付きカートだった。
(……やるしかない)
カートを掴み、後ろへ滑らせる。山積みの商品が[漢字]雪崩[/漢字][ふりがな]なだれ[/ふりがな]のように崩れ落ち、火の玉に覆いかぶさった。
([太字]よし!![/太字])
京斗は、鮮魚コーナーへと駆け抜けた。
山積みの商品に埋もれた火の玉、これで火の玉は消火されたか。
しかし、[太字]火はそう簡単に消えてくれやしない[/太字]。ましてや、[太字]可燃物に覆われていては[/太字]。
商品の山から黒い煙が上がる、そして頂上から火の玉がヌルッと出てきた。だが、火の玉は京斗を見失ったようだ。追いかける素振りは見られない。
一方、鮮魚コーナーに逃げ込んだ京斗は疲弊しにしきっていた。
(なんなんだ……あの『火の玉』……まさか敵の[太字]能力[/太字]か?)
と予想してみるも、敵の姿は見られない。
そもそも、あの『火の玉』が能力の産物なのかを決定づけることはできない。
鮮魚コーナーの角に隠れた京斗の捜索はまだ始まったばかり。火の玉の追跡を掻い潜り、巻機と合流しなくてはならない。
[水平線]
[中央寄せ]時刻:8月18日10時43分
場所:くろめだか 1F バックヤード[/中央寄せ]
彼は待つことが嫌いだ。
ビビリの京斗とは打って変わって、堂々と探している。
「京斗のヤツ……電話長くなりそうだし、先にバックヤードでも探すかな」
ここはバックヤード、野菜や果物が山積みになっていた。見たことない色と形の果物もあった。これは美味しいのだろうか、そんな疑問を抱えながら捜索していると、奥に閉まっている扉があるのを見つけた。
「なんだ…?」
扉からは得体のしれない気配を感じる。明らかに嫌な予感しかしないが、扉に近づいた。扉に耳を当てて音をうかがう。だが、音は一切しない。これはチャンスだと思い、部屋に潜入した。
そこにあったのは、大量の[太字]植木鉢[/太字]だった。枝からぶら下がる果実、まさしくソレだった。
「これが……これが[太字]『禁断の果実』[/太字]……こんなところで栽培しているのか……」
果実の花園に圧倒され、緊張感があたりを漂う。目的は1個だけのはずだったが、こんなにあったら、人間少しは欲張りたくなるもの。
「左右ポケットに2個は入る……片手は空けないといけないから1個……脇に2個挟んで……ブーツの隙間に入れて……合計7個か」
持ち帰る準備ができた。
押さえがたい喜びを胸に、巻機は帰ろうと後ろを向く。そこにはいたのだ。気づかないうちに[下線]白い服の男が[/下線]。
[太字]「……キミ…何してるの?」[/太字]
場所:くろめだか 1F 売り場コーナー[/中央寄せ]
(なんで一人にするんだよ……!)
真っ暗なスーパーを歩く京斗の心は、まるで一人ぼっちの子羊のようだ。
少し物音がしただけで飛び上がってしまうんじゃないかってぐらい、半端なく怯えている。
さっきの威勢はどこいったんだ、と言いたいところだが人間の気持ちは簡単じゃないから仕方がない。周りを見渡しながら、足早に二つの棚の間に隠れた京斗。もう涙目だ。
(……これって幽霊とか出ないよね……!?)
恐怖で体が冷え冷えしてくる。今後の人生で二度とこんな恐怖を味わうことは無いと思いたい。
(……なにか出てきそうだな……)
良くない想像を張り巡らせながら、次の角を曲がろうとした。
その時だった。
左の棚の角から、赤黄色に光る塊が右の棚へ通り過ぎた。それはゆらゆらと揺らめいており、赤い粒をぱちぱち弾けさせている。それは『火の玉』そのものに見えた。
言葉にならない驚きが京斗を襲う。口を抑えて、後ろにゆっくりと下がっていく。
(……マジでいたんだけど……!)
驚く心と相反的に、ゆっくりと後ずさり。だからなのか、棚から飛び出しているパスタの袋に気付くことはできなかった。
パスタの袋が服に引っかかる、パリッとした音が辺りに響いた。落ちたパスタに向けた目を前に移した時、京斗の体が青ざめる。
棚の隙間を、『火の玉』が覗いていたのだ。
「あ………!」
火の玉と目が合った。その次の瞬間、火の玉が轟々と火花を撒き散らしながら、こちらへと向かってくる。
(……なんだよアレ!?)
物音を気にする余裕もなく、京斗は無我夢中で走った。もちろん火の玉も後ろを付いてきている。
(なんだよここはお化け屋敷かよ!?)
京斗はパニックになり、入口から奥の方向へ逃げ惑う。
棚をくねくねと曲がり、火の玉を撒こうと試してみるも、全然効果はない。
次に目に入ったものは、食品が山積みになった車輪付きカートだった。
(……やるしかない)
カートを掴み、後ろへ滑らせる。山積みの商品が[漢字]雪崩[/漢字][ふりがな]なだれ[/ふりがな]のように崩れ落ち、火の玉に覆いかぶさった。
([太字]よし!![/太字])
京斗は、鮮魚コーナーへと駆け抜けた。
山積みの商品に埋もれた火の玉、これで火の玉は消火されたか。
しかし、[太字]火はそう簡単に消えてくれやしない[/太字]。ましてや、[太字]可燃物に覆われていては[/太字]。
商品の山から黒い煙が上がる、そして頂上から火の玉がヌルッと出てきた。だが、火の玉は京斗を見失ったようだ。追いかける素振りは見られない。
一方、鮮魚コーナーに逃げ込んだ京斗は疲弊しにしきっていた。
(なんなんだ……あの『火の玉』……まさか敵の[太字]能力[/太字]か?)
と予想してみるも、敵の姿は見られない。
そもそも、あの『火の玉』が能力の産物なのかを決定づけることはできない。
鮮魚コーナーの角に隠れた京斗の捜索はまだ始まったばかり。火の玉の追跡を掻い潜り、巻機と合流しなくてはならない。
[水平線]
[中央寄せ]時刻:8月18日10時43分
場所:くろめだか 1F バックヤード[/中央寄せ]
彼は待つことが嫌いだ。
ビビリの京斗とは打って変わって、堂々と探している。
「京斗のヤツ……電話長くなりそうだし、先にバックヤードでも探すかな」
ここはバックヤード、野菜や果物が山積みになっていた。見たことない色と形の果物もあった。これは美味しいのだろうか、そんな疑問を抱えながら捜索していると、奥に閉まっている扉があるのを見つけた。
「なんだ…?」
扉からは得体のしれない気配を感じる。明らかに嫌な予感しかしないが、扉に近づいた。扉に耳を当てて音をうかがう。だが、音は一切しない。これはチャンスだと思い、部屋に潜入した。
そこにあったのは、大量の[太字]植木鉢[/太字]だった。枝からぶら下がる果実、まさしくソレだった。
「これが……これが[太字]『禁断の果実』[/太字]……こんなところで栽培しているのか……」
果実の花園に圧倒され、緊張感があたりを漂う。目的は1個だけのはずだったが、こんなにあったら、人間少しは欲張りたくなるもの。
「左右ポケットに2個は入る……片手は空けないといけないから1個……脇に2個挟んで……ブーツの隙間に入れて……合計7個か」
持ち帰る準備ができた。
押さえがたい喜びを胸に、巻機は帰ろうと後ろを向く。そこにはいたのだ。気づかないうちに[下線]白い服の男が[/下線]。
[太字]「……キミ…何してるの?」[/太字]