果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日11時12分
場所:スーパーマーケット『くろめだか』駐車場[/中央寄せ]
それは一瞬の出来事だった。
風船に触れた贏吉が、抵抗も出来ないまま、青い風船の中に吸い込まれてしまった。
おそらく、この方法で行方不明の子供たちを拐っていったのだろう。
男は、血だらけでボコボコの顔をハンカチで拭った。
「痛いじゃないか……まったく。だけど…[太字]ここで終わりだよ[/太字]」
贏吉が閉じ込められた青い風船に、黒光りする拳銃が向けられた。
[中央寄せ]「……君の敗因は、感情的なところだよ」[/中央寄せ]
口だけを動かすような声、それに平坦な声だ。
指にかけられた引き金が、ゆっくりと締められていく。
銃弾が飛び出す一歩手前……。
[太字][大文字]「や、やめろッ…!」[/大文字][/太字]
草むらから、情けない声と共に人影が飛び出した。
匡斌だった。
匡斌は、草陰から二人の戦いを見つめていた。
男がやったこと、男の能力が分かっている。
贏吉がいなくなった今、目の前の下劣な男を倒すのは彼しかいない。
「誰だい? 君ぃ…?」
男が睨みつける。
まるで獲物を見つけた蛇の目だ。
一瞬、その威圧に飲み込まれそうになる匡斌。
呼吸が荒くなる。足が震えるのを必死に抑える。
(……ここまで出てきたのはいいけど、どうすればいいんだ?…)
仲間の危機でとっさに体が動いてしまったからなのか、[下線]その後[/下線]を考えていなかったのだ。
「[太字]だからぁ![/太字]……誰ぇ?」
男の声が昂ぶる。
「……僕は…」
声が煙のように喉元で消えていった。
呼吸が少なくなってくるにつれて、声が潰れていく。
(……ああもう! [大文字]どうすりゃいいんだよ!![/大文字])
心臓が異常なくらい波打ってくる。
心の中の苛立ちが、さらに鼓動を加速させていた。
とにかく頭を振り絞って、最善の方法を考える。
しかし、考えれば考えるほど、何も思いつかない。
「……何も言わないなら……死んどきな」
男が拳銃を向けた。
向けられた黒い穴に目線が集中する。
(やっぱり僕は、何も出来ないのか…)
自分の無力さに嘆き、全てを諦めようとしたその時……。
[中央寄せ]突如体の動きが止まり、視界が闇に包まれた。[/中央寄せ]
「……え?」
何が起きたのか理解できない匡斌。
そこは真っ黒の空間だった。
周りには黒、黒、黒。
黒以外には例えようのない色。
何が起きているのか。
匡斌が戸惑っていると、目の前に[太字]黒い人影[/太字]が現れた。
その人影は後ろを向いており、[下線]ヘルメットのようなもの[/下線]を被っている。
匡斌は近づいてみようとしたが、しかし、体は動かせない。
目から見える光景のみで、この状況を判断するしかない。
冷や汗が服の中で乾き始める時、どこからか、声が聞こえた。
[中央寄せ][太字]「…ようやく、お前と話せるぜ」[/太字][/中央寄せ]
それは、声だけでも頼りがいが感じられるような声だった。
場所:スーパーマーケット『くろめだか』駐車場[/中央寄せ]
それは一瞬の出来事だった。
風船に触れた贏吉が、抵抗も出来ないまま、青い風船の中に吸い込まれてしまった。
おそらく、この方法で行方不明の子供たちを拐っていったのだろう。
男は、血だらけでボコボコの顔をハンカチで拭った。
「痛いじゃないか……まったく。だけど…[太字]ここで終わりだよ[/太字]」
贏吉が閉じ込められた青い風船に、黒光りする拳銃が向けられた。
[中央寄せ]「……君の敗因は、感情的なところだよ」[/中央寄せ]
口だけを動かすような声、それに平坦な声だ。
指にかけられた引き金が、ゆっくりと締められていく。
銃弾が飛び出す一歩手前……。
[太字][大文字]「や、やめろッ…!」[/大文字][/太字]
草むらから、情けない声と共に人影が飛び出した。
匡斌だった。
匡斌は、草陰から二人の戦いを見つめていた。
男がやったこと、男の能力が分かっている。
贏吉がいなくなった今、目の前の下劣な男を倒すのは彼しかいない。
「誰だい? 君ぃ…?」
男が睨みつける。
まるで獲物を見つけた蛇の目だ。
一瞬、その威圧に飲み込まれそうになる匡斌。
呼吸が荒くなる。足が震えるのを必死に抑える。
(……ここまで出てきたのはいいけど、どうすればいいんだ?…)
仲間の危機でとっさに体が動いてしまったからなのか、[下線]その後[/下線]を考えていなかったのだ。
「[太字]だからぁ![/太字]……誰ぇ?」
男の声が昂ぶる。
「……僕は…」
声が煙のように喉元で消えていった。
呼吸が少なくなってくるにつれて、声が潰れていく。
(……ああもう! [大文字]どうすりゃいいんだよ!![/大文字])
心臓が異常なくらい波打ってくる。
心の中の苛立ちが、さらに鼓動を加速させていた。
とにかく頭を振り絞って、最善の方法を考える。
しかし、考えれば考えるほど、何も思いつかない。
「……何も言わないなら……死んどきな」
男が拳銃を向けた。
向けられた黒い穴に目線が集中する。
(やっぱり僕は、何も出来ないのか…)
自分の無力さに嘆き、全てを諦めようとしたその時……。
[中央寄せ]突如体の動きが止まり、視界が闇に包まれた。[/中央寄せ]
「……え?」
何が起きたのか理解できない匡斌。
そこは真っ黒の空間だった。
周りには黒、黒、黒。
黒以外には例えようのない色。
何が起きているのか。
匡斌が戸惑っていると、目の前に[太字]黒い人影[/太字]が現れた。
その人影は後ろを向いており、[下線]ヘルメットのようなもの[/下線]を被っている。
匡斌は近づいてみようとしたが、しかし、体は動かせない。
目から見える光景のみで、この状況を判断するしかない。
冷や汗が服の中で乾き始める時、どこからか、声が聞こえた。
[中央寄せ][太字]「…ようやく、お前と話せるぜ」[/太字][/中央寄せ]
それは、声だけでも頼りがいが感じられるような声だった。
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