果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日11時10分
場所:くろめだか駐車場
[/中央寄せ]
それはあまりにも衝撃的な告白だった。
「……その子に、ケガはないだろうな?」
恐る恐る聞く。
「それは分からない…。もしかしたら…[下線]手遅れ[/下線]かもね」
返ってきたのは、心が痛くなる答えだった。
「……ふざけるな…!」
贏吉は、右拳を手のひらに打ちつけた。
内臓が震えるほどの、激しい怒りが湧き上がってくるのを感じる。
果たして、何人の子供がこの男の食い物にされたのだろうか。
考えただけで虫唾が走る。
いつもより酸っぱい口で、親指に噛みついた。
激しいエネルギーが全身を巡る。
「ハァ……! [太字]10秒だッ![/太字]」
そう宣言したのち、贏吉は駆け出した。
まるで[太字]迅雷[/太字]のような速度、ブッ飛ぶ拳が男の顔面を捉えた。
[大文字]「ロォァッ!」[/大文字]
男の体が大きく傾いた。しかし完全には倒れない。
なんと膝を曲げて、リンボーダンスのような態勢を取って耐えて見せたのだ。
[中央寄せ]残り9秒[/中央寄せ]
贏吉はあまりに速度を上げすぎたせいか、地面を横滑りする。
殴った感覚はあったが、手応えはなかった。
男は膝を伸ばし元の態勢に戻る。
こちらを向いてポケットに左手を突っ込んだ。
取り出したのは、[太字]拳銃[/太字]だった。
[中央寄せ]残り8秒[/中央寄せ]
贏吉が拳銃を見たのは初めてではない。
ある山で出会った男との戦いで、嫌と言うほど銃弾の苦痛を味わった。
少しは慣れた、といっても痛みを思い出して体が思いまどう。
体が悩む…………だが、[太字]頭は悩めなかった。[/太字]
覚悟を決めた贏吉は、その場にしゃがむ。
そして、地面の砂利を手に塗りたくる。
灰色にまみれた両手を構えた。
[中央寄せ]残り6秒[/中央寄せ]
二人の距離は十分に離れている。
拳銃が有利、というわけではなさそうだ。
少しの静寂、一呼吸、贏吉の体が再び動き出した。
その速度、まるで[太字]疾風[/太字]。
男も拳銃を構え、その引き金を押しまくる。
いい加減な乱射、白い閃光が撒き散らされた。
[中央寄せ]残り4秒[/中央寄せ]
迫ってくる銃弾の雨を前に、頭をフル回転させる贏吉。
(こうなったら……[太字]イチかバチか…![/太字])
贏吉の取った行動は……。
銃弾の雨に向かって、まるで[下線]そこが水面かのように[/下線]飛び込んだ!
体を垂直に伸ばし、最低限の被弾を回避する。
何発かの銃弾が体を掠めたが、その勢いは止まらない。
贏吉は滑り込み、男に近づく。
そして、男の拳銃を蹴っ飛ばす。
殴る準備は整った。
「[太字]死んどきな…![/太字]」
[中央寄せ]残り3秒[/中央寄せ]
贏吉の怒る拳が、男の顔に乱打をかます。
顔の形が変わるのではないかと、何回も、何回も、すさまじい殴りよう。
[中央寄せ]0秒[/中央寄せ]
制限時間が来てしまった。
贏吉の動きが止まるように遅くなる。
「……メンドクセェな……[太字]時間[/太字]ってのはよォ……」
しかし、そんなのお構いなしに、もう一回拳を振る。
その時だった。
贏吉の拳が男に触れる直前、男の腕が動く。
さっきの青い風船を、殴られるであろう場所に構えた。
風船ごと男を殴ろうとした贏吉だが、それは[太字]叶わなかった。[/太字]
なんと贏吉の拳が、[太字]風船に飲み込まれ始めたのだ[/太字]。
「……な……なんだ…?」
やがて、青い風船は贏吉をずるずると引きずり込む。
「……まさか…これが……!」
能力を使い切った贏吉は、抵抗もできないまま、またたく間に全身を吸い込まれた。
一瞬の出来事、静けさがその場に残る。
ボコボコに腫れ上がって、血にまみれた顔を拭う。
[漢字]青い風船[/漢字][ふりがな]エイキチ[/ふりがな]を眺めながら、男は煽るように呟いた。
「……結末も予想できないアホは、ここらで人生リタイアさ」
男は、蹴っ飛ばされた拳銃を拾い上げ、青い風船に突きつける。
「最期の一発ぅ、[太字]君[/太字]にあげるよ……」
場所:くろめだか駐車場
[/中央寄せ]
それはあまりにも衝撃的な告白だった。
「……その子に、ケガはないだろうな?」
恐る恐る聞く。
「それは分からない…。もしかしたら…[下線]手遅れ[/下線]かもね」
返ってきたのは、心が痛くなる答えだった。
「……ふざけるな…!」
贏吉は、右拳を手のひらに打ちつけた。
内臓が震えるほどの、激しい怒りが湧き上がってくるのを感じる。
果たして、何人の子供がこの男の食い物にされたのだろうか。
考えただけで虫唾が走る。
いつもより酸っぱい口で、親指に噛みついた。
激しいエネルギーが全身を巡る。
「ハァ……! [太字]10秒だッ![/太字]」
そう宣言したのち、贏吉は駆け出した。
まるで[太字]迅雷[/太字]のような速度、ブッ飛ぶ拳が男の顔面を捉えた。
[大文字]「ロォァッ!」[/大文字]
男の体が大きく傾いた。しかし完全には倒れない。
なんと膝を曲げて、リンボーダンスのような態勢を取って耐えて見せたのだ。
[中央寄せ]残り9秒[/中央寄せ]
贏吉はあまりに速度を上げすぎたせいか、地面を横滑りする。
殴った感覚はあったが、手応えはなかった。
男は膝を伸ばし元の態勢に戻る。
こちらを向いてポケットに左手を突っ込んだ。
取り出したのは、[太字]拳銃[/太字]だった。
[中央寄せ]残り8秒[/中央寄せ]
贏吉が拳銃を見たのは初めてではない。
ある山で出会った男との戦いで、嫌と言うほど銃弾の苦痛を味わった。
少しは慣れた、といっても痛みを思い出して体が思いまどう。
体が悩む…………だが、[太字]頭は悩めなかった。[/太字]
覚悟を決めた贏吉は、その場にしゃがむ。
そして、地面の砂利を手に塗りたくる。
灰色にまみれた両手を構えた。
[中央寄せ]残り6秒[/中央寄せ]
二人の距離は十分に離れている。
拳銃が有利、というわけではなさそうだ。
少しの静寂、一呼吸、贏吉の体が再び動き出した。
その速度、まるで[太字]疾風[/太字]。
男も拳銃を構え、その引き金を押しまくる。
いい加減な乱射、白い閃光が撒き散らされた。
[中央寄せ]残り4秒[/中央寄せ]
迫ってくる銃弾の雨を前に、頭をフル回転させる贏吉。
(こうなったら……[太字]イチかバチか…![/太字])
贏吉の取った行動は……。
銃弾の雨に向かって、まるで[下線]そこが水面かのように[/下線]飛び込んだ!
体を垂直に伸ばし、最低限の被弾を回避する。
何発かの銃弾が体を掠めたが、その勢いは止まらない。
贏吉は滑り込み、男に近づく。
そして、男の拳銃を蹴っ飛ばす。
殴る準備は整った。
「[太字]死んどきな…![/太字]」
[中央寄せ]残り3秒[/中央寄せ]
贏吉の怒る拳が、男の顔に乱打をかます。
顔の形が変わるのではないかと、何回も、何回も、すさまじい殴りよう。
[中央寄せ]0秒[/中央寄せ]
制限時間が来てしまった。
贏吉の動きが止まるように遅くなる。
「……メンドクセェな……[太字]時間[/太字]ってのはよォ……」
しかし、そんなのお構いなしに、もう一回拳を振る。
その時だった。
贏吉の拳が男に触れる直前、男の腕が動く。
さっきの青い風船を、殴られるであろう場所に構えた。
風船ごと男を殴ろうとした贏吉だが、それは[太字]叶わなかった。[/太字]
なんと贏吉の拳が、[太字]風船に飲み込まれ始めたのだ[/太字]。
「……な……なんだ…?」
やがて、青い風船は贏吉をずるずると引きずり込む。
「……まさか…これが……!」
能力を使い切った贏吉は、抵抗もできないまま、またたく間に全身を吸い込まれた。
一瞬の出来事、静けさがその場に残る。
ボコボコに腫れ上がって、血にまみれた顔を拭う。
[漢字]青い風船[/漢字][ふりがな]エイキチ[/ふりがな]を眺めながら、男は煽るように呟いた。
「……結末も予想できないアホは、ここらで人生リタイアさ」
男は、蹴っ飛ばされた拳銃を拾い上げ、青い風船に突きつける。
「最期の一発ぅ、[太字]君[/太字]にあげるよ……」
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