果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日 10時50分
場所:くろめだか周辺
[/中央寄せ]
「羽柴さんは、ここらへんにいるはずだ……多分」
[漢字]叩鬼[/漢字][ふりがな]ハタキ[/ふりがな]盗賊団の団員、[漢字]贏吉[/漢字][ふりがな]エイキチ[/ふりがな]が呟いた。
どこかに走っていく羽柴のあとを追っていたのだが、見失ってしまい今に至る。
[漢字]匡斌[/漢字][ふりがな]キョウビン[/ふりがな]が言う。
「その前に……ずっと気になってたんだけど……お前、なに持ってんだ?」
贏吉が背負っていたのは、掘る部分が鉄で出来ている[太字]スコップ[/太字]だった。
「これはな〜〜ゴミ箱漁ってたら見つけたんだ! 珍しいだろ?」
こう言われてしまっては、困惑するほかないだろう。
それになぜスコップなのか。
「まあまあ珍しいと思うけど……どうせ売って金にするだけだろ。お前のことだから……」
「いやいやいやいや!! こいつには愛着が湧いたんだ!! この出会いは運命の糸でキツく縛られているんだよ!!」
「それじゃ、束縛だな…」
こんなことを話しながら歩いていたその時。
空から白い紙が、ひらひらと風に揺られて二人の前に落ちた。
二人は、不思議に思いながらも、紙を拾い目を通す。
「…………コレって?」
書いてあった内容に、一瞬にして緊張が走る。
[水平線]
[明朝体]この人を知りませんか?
[漢字]春峰 渚[/漢字][ふりがな]はるみね なぎさ[/ふりがな]ちゃん(12歳)を探しています
情報があったら◯◯警察署まで(□□□ー□□□ー0110)[/明朝体]
[水平線]
[下線]行方不明者を探すチラシ[/下線]だった。
「そういえば……最近、[下線]子どもの行方不明が増えてる[/下線]ってニュースであったな……」
「マジかよ……そりゃ大変だぜ……」
そして、見やすいようにチラシを地面に置き、風で飛ばないように石を乗せた。
また、二人は歩き出す。
しかし。
(……なんというか……怖いな)
なにかが匡斌の心に引っかかっていた。
そこで突然、当然のようにスコップを背負っている贏吉が口を開く。
「あ〜喉乾いた……匡やんもそう思うだろ?」
「呼んだことないあだ名で呼ぶな」
贏吉の喉乾き宣言から、近くのスーパーに寄ることになった二人。
行き先は、この区で有名なスーパー[太字]『くろめだか』[/太字]だ。
二人はくろめだかまで歩いて向かう。
だが、店の中の照明は暗い。
考えうる可能性は一つだけだ。
それは、今日は[太字]休業日[/太字]だということ。
「……そういや今日、日曜日か」
肩を落として帰ろうとした。
その時のこと。
「……なんか……いるぞ」
嬴吉が駐車場を指さして言った。
まさかそんなはずはと、恐る恐るその方向を見る。
確かに、そこには[下線]男がいた。[/下線]
従業員かと最初は思ったが、明らかに見た目からその可能性は否定できる。
背は低い、そして黒いパーカーのフードを被っている。
それに、[太字]赤い風船[/太字]を持っていた。
不審者としか思えない。
まだ完全に決まったという訳ではないが、97%は不審者だ。
二人は木の影に隠れながら、何かをしでかさないか観察することにした。
パーカーの男は、何度も周囲を見回す。
持っていた赤い風船を、口に近づける。
そして。
[太字]「大好きだよぉ〜」[/太字]
そう言って、赤い風船を舌で舐め回した。
唾液が風船の輪郭に染みついている。
さすがの二人も、その気持ち悪さに渋い顔になる。
「オェー……なんだアイツ、頭逝かれてんじゃねーのか?」
「それはそうだが……あの男は何者だ?……もしかして、贏吉の親戚?」
「いやァーー確かに、ウチの家系は物への愛着が強くってですねー……って[太字]そんなわけあるか!![/太字]」
観察を続けている。
男はまだ風船を舐めまわしていた。
一応、外の出来事である。
それに、駐車場の真ん中でこんなことをやっているのだ。
「下手すれば、この店の客数を減らそうとしている過激派かもな……流石に見過ごせねェよ」
嬴吉が一歩踏み出した。
[太字]「おい、そこの変態野郎!! オマエは何者だ!?」[/太字]
男が振り向く。
見るからに嫌な顔をしている。
「なんだい君ぃ〜? 僕の幸福な時間を邪魔しないでもらえるかな?」
妙に間延びした声が返ってきた。
「うるせェよ…! オマエがどういうヤツか、質問に答えればいいだけなんだがなァ……試しに一発ぶん殴られてみるか?」
贏吉は拳を構える。
「君ぃ〜〜けっこう喧嘩っ早いねぇ……僕、そーゆーやつは嫌いなんだ」
男の目に敵意が宿る。
光が消え、黒に染まる。
[太字]「アンタ……どうなっても知らねェぞ」[/太字]
[水平線]
[中央寄せ]時刻:11時55分
場所:交差点近くの歩道[/中央寄せ]
そこは地獄となった。
トラックは石狩と男の上を通り抜けた。
石狩の体、血液と共に臓器の破片が飛び散り、全身から血が吹き出した。
胴体はグシャグシャに潰され、上半身と下半身は両断。
石狩の足首を掴んでいた帽子の男も、頭からタイヤに潰され[太字]即死[/太字]。
これもすべて想定の内だったのか。その答えは誰にも分からない。
「……ここで終わりか……もうちょっと、生きたかった……」
石狩が、今にも死にそうな声で嘆く。
まだ死にたくない。腕で地を這いずる。
しかし、先は長くなかった。
支えきれない腕、顔から崩れ落ちる。
血の海に顔を沈め、目を閉じた。
危険なカラスに囲まれていた羽柴、男が死亡したことによって、カラスはどこかに飛び去った。
「石狩、お前の死を絶対に無駄にしない」
羽柴はその場所から立ち去った。
響くサイレンの音を背に、盟友の死を弔った。
場所:くろめだか周辺
[/中央寄せ]
「羽柴さんは、ここらへんにいるはずだ……多分」
[漢字]叩鬼[/漢字][ふりがな]ハタキ[/ふりがな]盗賊団の団員、[漢字]贏吉[/漢字][ふりがな]エイキチ[/ふりがな]が呟いた。
どこかに走っていく羽柴のあとを追っていたのだが、見失ってしまい今に至る。
[漢字]匡斌[/漢字][ふりがな]キョウビン[/ふりがな]が言う。
「その前に……ずっと気になってたんだけど……お前、なに持ってんだ?」
贏吉が背負っていたのは、掘る部分が鉄で出来ている[太字]スコップ[/太字]だった。
「これはな〜〜ゴミ箱漁ってたら見つけたんだ! 珍しいだろ?」
こう言われてしまっては、困惑するほかないだろう。
それになぜスコップなのか。
「まあまあ珍しいと思うけど……どうせ売って金にするだけだろ。お前のことだから……」
「いやいやいやいや!! こいつには愛着が湧いたんだ!! この出会いは運命の糸でキツく縛られているんだよ!!」
「それじゃ、束縛だな…」
こんなことを話しながら歩いていたその時。
空から白い紙が、ひらひらと風に揺られて二人の前に落ちた。
二人は、不思議に思いながらも、紙を拾い目を通す。
「…………コレって?」
書いてあった内容に、一瞬にして緊張が走る。
[水平線]
[明朝体]この人を知りませんか?
[漢字]春峰 渚[/漢字][ふりがな]はるみね なぎさ[/ふりがな]ちゃん(12歳)を探しています
情報があったら◯◯警察署まで(□□□ー□□□ー0110)[/明朝体]
[水平線]
[下線]行方不明者を探すチラシ[/下線]だった。
「そういえば……最近、[下線]子どもの行方不明が増えてる[/下線]ってニュースであったな……」
「マジかよ……そりゃ大変だぜ……」
そして、見やすいようにチラシを地面に置き、風で飛ばないように石を乗せた。
また、二人は歩き出す。
しかし。
(……なんというか……怖いな)
なにかが匡斌の心に引っかかっていた。
そこで突然、当然のようにスコップを背負っている贏吉が口を開く。
「あ〜喉乾いた……匡やんもそう思うだろ?」
「呼んだことないあだ名で呼ぶな」
贏吉の喉乾き宣言から、近くのスーパーに寄ることになった二人。
行き先は、この区で有名なスーパー[太字]『くろめだか』[/太字]だ。
二人はくろめだかまで歩いて向かう。
だが、店の中の照明は暗い。
考えうる可能性は一つだけだ。
それは、今日は[太字]休業日[/太字]だということ。
「……そういや今日、日曜日か」
肩を落として帰ろうとした。
その時のこと。
「……なんか……いるぞ」
嬴吉が駐車場を指さして言った。
まさかそんなはずはと、恐る恐るその方向を見る。
確かに、そこには[下線]男がいた。[/下線]
従業員かと最初は思ったが、明らかに見た目からその可能性は否定できる。
背は低い、そして黒いパーカーのフードを被っている。
それに、[太字]赤い風船[/太字]を持っていた。
不審者としか思えない。
まだ完全に決まったという訳ではないが、97%は不審者だ。
二人は木の影に隠れながら、何かをしでかさないか観察することにした。
パーカーの男は、何度も周囲を見回す。
持っていた赤い風船を、口に近づける。
そして。
[太字]「大好きだよぉ〜」[/太字]
そう言って、赤い風船を舌で舐め回した。
唾液が風船の輪郭に染みついている。
さすがの二人も、その気持ち悪さに渋い顔になる。
「オェー……なんだアイツ、頭逝かれてんじゃねーのか?」
「それはそうだが……あの男は何者だ?……もしかして、贏吉の親戚?」
「いやァーー確かに、ウチの家系は物への愛着が強くってですねー……って[太字]そんなわけあるか!![/太字]」
観察を続けている。
男はまだ風船を舐めまわしていた。
一応、外の出来事である。
それに、駐車場の真ん中でこんなことをやっているのだ。
「下手すれば、この店の客数を減らそうとしている過激派かもな……流石に見過ごせねェよ」
嬴吉が一歩踏み出した。
[太字]「おい、そこの変態野郎!! オマエは何者だ!?」[/太字]
男が振り向く。
見るからに嫌な顔をしている。
「なんだい君ぃ〜? 僕の幸福な時間を邪魔しないでもらえるかな?」
妙に間延びした声が返ってきた。
「うるせェよ…! オマエがどういうヤツか、質問に答えればいいだけなんだがなァ……試しに一発ぶん殴られてみるか?」
贏吉は拳を構える。
「君ぃ〜〜けっこう喧嘩っ早いねぇ……僕、そーゆーやつは嫌いなんだ」
男の目に敵意が宿る。
光が消え、黒に染まる。
[太字]「アンタ……どうなっても知らねェぞ」[/太字]
[水平線]
[中央寄せ]時刻:11時55分
場所:交差点近くの歩道[/中央寄せ]
そこは地獄となった。
トラックは石狩と男の上を通り抜けた。
石狩の体、血液と共に臓器の破片が飛び散り、全身から血が吹き出した。
胴体はグシャグシャに潰され、上半身と下半身は両断。
石狩の足首を掴んでいた帽子の男も、頭からタイヤに潰され[太字]即死[/太字]。
これもすべて想定の内だったのか。その答えは誰にも分からない。
「……ここで終わりか……もうちょっと、生きたかった……」
石狩が、今にも死にそうな声で嘆く。
まだ死にたくない。腕で地を這いずる。
しかし、先は長くなかった。
支えきれない腕、顔から崩れ落ちる。
血の海に顔を沈め、目を閉じた。
危険なカラスに囲まれていた羽柴、男が死亡したことによって、カラスはどこかに飛び去った。
「石狩、お前の死を絶対に無駄にしない」
羽柴はその場所から立ち去った。
響くサイレンの音を背に、盟友の死を弔った。
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