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登場人物が死ぬ描写があります。
そして、話が進むにつれて過激な表現が含まれますのでさらにご注意ください

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果実戦争

#35

ep35 盗賊、『見る』/ 終結

[中央寄せ]時刻:8月18日 10時50分
場所:くろめだか周辺
[/中央寄せ]

「羽柴さんは、ここらへんにいるはずだ……多分」

[漢字]叩鬼[/漢字][ふりがな]ハタキ[/ふりがな]盗賊団の団員、[漢字]贏吉[/漢字][ふりがな]エイキチ[/ふりがな]が呟いた。
どこかに走っていく羽柴のあとを追っていたのだが、見失ってしまい今に至る。

[漢字]匡斌[/漢字][ふりがな]キョウビン[/ふりがな]が言う。

「その前に……ずっと気になってたんだけど……お前、なに持ってんだ?」

贏吉が背負っていたのは、掘る部分が鉄で出来ている[太字]スコップ[/太字]だった。

「これはな〜〜ゴミ箱漁ってたら見つけたんだ! 珍しいだろ?」

こう言われてしまっては、困惑するほかないだろう。
それになぜスコップなのか。

「まあまあ珍しいと思うけど……どうせ売って金にするだけだろ。お前のことだから……」

「いやいやいやいや!! こいつには愛着が湧いたんだ!! この出会いは運命の糸でキツく縛られているんだよ!!」

「それじゃ、束縛だな…」

こんなことを話しながら歩いていたその時。

空から白い紙が、ひらひらと風に揺られて二人の前に落ちた。
二人は、不思議に思いながらも、紙を拾い目を通す。



「…………コレって?」

書いてあった内容に、一瞬にして緊張が走る。



[水平線]

[明朝体]この人を知りませんか?

[漢字]春峰 渚[/漢字][ふりがな]はるみね なぎさ[/ふりがな]ちゃん(12歳)を探しています
情報があったら◯◯警察署まで(□□□ー□□□ー0110)[/明朝体]

[水平線]

[下線]行方不明者を探すチラシ[/下線]だった。

「そういえば……最近、[下線]子どもの行方不明が増えてる[/下線]ってニュースであったな……」

「マジかよ……そりゃ大変だぜ……」

そして、見やすいようにチラシを地面に置き、風で飛ばないように石を乗せた。

また、二人は歩き出す。

しかし。
(……なんというか……怖いな)
なにかが匡斌の心に引っかかっていた。

そこで突然、当然のようにスコップを背負っている贏吉が口を開く。

「あ〜喉乾いた……匡やんもそう思うだろ?」

「呼んだことないあだ名で呼ぶな」

贏吉の喉乾き宣言から、近くのスーパーに寄ることになった二人。
行き先は、この区で有名なスーパー[太字]『くろめだか』[/太字]だ。

二人はくろめだかまで歩いて向かう。
だが、店の中の照明は暗い。

考えうる可能性は一つだけだ。
それは、今日は[太字]休業日[/太字]だということ。

「……そういや今日、日曜日か」

肩を落として帰ろうとした。
その時のこと。



「……なんか……いるぞ」

嬴吉が駐車場を指さして言った。
まさかそんなはずはと、恐る恐るその方向を見る。

確かに、そこには[下線]男がいた。[/下線]

従業員かと最初は思ったが、明らかに見た目からその可能性は否定できる。

背は低い、そして黒いパーカーのフードを被っている。
それに、[太字]赤い風船[/太字]を持っていた。

不審者としか思えない。
まだ完全に決まったという訳ではないが、97%は不審者だ。

二人は木の影に隠れながら、何かをしでかさないか観察することにした。

パーカーの男は、何度も周囲を見回す。
持っていた赤い風船を、口に近づける。

そして。


[太字]「大好きだよぉ〜」[/太字]


そう言って、赤い風船を舌で舐め回した。
唾液が風船の輪郭に染みついている。


さすがの二人も、その気持ち悪さに渋い顔になる。

「オェー……なんだアイツ、頭逝かれてんじゃねーのか?」

「それはそうだが……あの男は何者だ?……もしかして、贏吉の親戚?」

「いやァーー確かに、ウチの家系は物への愛着が強くってですねー……って[太字]そんなわけあるか!![/太字]」


観察を続けている。
男はまだ風船を舐めまわしていた。

一応、外の出来事である。
それに、駐車場の真ん中でこんなことをやっているのだ。

「下手すれば、この店の客数を減らそうとしている過激派かもな……流石に見過ごせねェよ」

嬴吉が一歩踏み出した。

[太字]「おい、そこの変態野郎!! オマエは何者だ!?」[/太字]

男が振り向く。
見るからに嫌な顔をしている。

「なんだい君ぃ〜? 僕の幸福な時間を邪魔しないでもらえるかな?」

妙に間延びした声が返ってきた。

「うるせェよ…! オマエがどういうヤツか、質問に答えればいいだけなんだがなァ……試しに一発ぶん殴られてみるか?」

贏吉は拳を構える。

「君ぃ〜〜けっこう喧嘩っ早いねぇ……僕、そーゆーやつは嫌いなんだ」

男の目に敵意が宿る。
光が消え、黒に染まる。

[太字]「アンタ……どうなっても知らねェぞ」[/太字]





[水平線]

[中央寄せ]時刻:11時55分
場所:交差点近くの歩道[/中央寄せ]


そこは地獄となった。

トラックは石狩と男の上を通り抜けた。


石狩の体、血液と共に臓器の破片が飛び散り、全身から血が吹き出した。
胴体はグシャグシャに潰され、上半身と下半身は両断。


石狩の足首を掴んでいた帽子の男も、頭からタイヤに潰され[太字]即死[/太字]。
これもすべて想定の内だったのか。その答えは誰にも分からない。

「……ここで終わりか……もうちょっと、生きたかった……」

石狩が、今にも死にそうな声で嘆く。
まだ死にたくない。腕で地を這いずる。

しかし、先は長くなかった。
支えきれない腕、顔から崩れ落ちる。

血の海に顔を沈め、目を閉じた。

危険なカラスに囲まれていた羽柴、男が死亡したことによって、カラスはどこかに飛び去った。

「石狩、お前の死を絶対に無駄にしない」

羽柴はその場所から立ち去った。
響くサイレンの音を背に、盟友の死を弔った。

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2024/10/23 21:37

ドレミファ・ソラティド ID:≫8pU9voJWdS.Ik
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