果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日 11時40分
場所:交差点近くの歩道[/中央寄せ]
([下線]攻撃するという意識が、邪魔につながる[/下線]ってなら…そ[下線]の意識がなければどうなるんだ[/下線]……?)
唐突に思い浮かぶ疑問。
ガムシャラにやっていては、男に触れることさえままならない。
これが解決法になっていたらいいのだが…。
まずは実践だ。
無意識に男に触れるにはどうしたらいいのか。
石狩は、考えた。考えに考えた。
(……オレ自身があの男に触れようとしたら、意識を持っていることになる……意識を持たずにヤツに触れるためには、[下線]意識を持たない何かがオレの体を操る[/下線]以外に方法がない……)
思いついた方法は一つだけあった。
(……[太字]風だ!![/太字] 風には当然意識がない!……だけど、人を動かす風をいきなり吹かせるなんて出来るのか?……)
結局ダメな考えになると思っていた矢先のこと。
(……そういや、羽柴くんの能力……[下線]なんでも手榴弾にする能力[/下線]だったよな……ちょっと待て……手榴弾は爆発する……爆発するときには……)
バリバリと稲妻のような考えが閃いた!
(……[下線]爆発のときには、爆風が起きる![/下線]……デカい爆発だったら、それなりにブッ飛ぶはずだ!!)
思いついたら即行動。
「なあ、羽柴くん! 手榴弾を投げてくれないか? 爆発寸前のヤツだ!」
当然、何も伝えていない羽柴は唐突すぎて状況が飲み込めない。
「……本気か?……お前に投げて何の意味があるんだ!?」
[太字]「いいから何も考えるな!! オレはただブッ飛びたいだけだ! それ以外に意味なんて無ェ!」[/太字]
あまりにも慌ただしかったので、言う通りにすることにした羽柴。
それなりに大きい石を選ぶと、それを手榴弾に変化させる。
手榴弾となった石には、どういう原理なのか不明だがピンが付いていた。
羽柴は力を込めてピンを抜く。
未だに状況が掴めないが、何かしら意味はあるのだろう。
羽柴はそう信じて、手榴弾を投げた。
爆発を待つ石狩は、無意識になるため目を瞑っていた。
いつ来るのか、いつ爆発するのか、そんなことを考えず、ただ頭を真っ白にしている。
投げられた手榴弾は放物線を描く。
そして、石狩までおよそ数センチの所で手榴弾は爆発した。
石狩の予想通り、爆風はかなりの威力。
背中を火傷したが、後ろから来た爆風に、まるで操られたかのように吹っ飛んだ。
石狩の狙い通り、男の元へ体が向かっている。
邪魔は来ない。
何も起きない。
何かが風を切って向かってくる音に気づき、男は振り向いた。
しかし、[太字]遅かった。[/太字]
投げられた石ころのように落下してきた石狩の体が、男に直撃した。
男は衝撃に耐えきれず、前から倒れる。
無意識を保っている石狩も、男を下敷きにして同じように倒れている。
こうなってしまっては、男も動くことができない。
もう大丈夫だろうと、石狩は意識を取り戻し立ち上がる。
「……こんな状態じゃ、アンタのそのトンデモ能力も使えないだろう……早く話しやがれ……」
しかし男が、質問に答えることはない。
その代わりなのか、地面に突っ伏しながら男は口を開いた
「……初めてだよ……ここまで追い詰められたのは……だが、その努力もすぐ無駄になる……[太字]君はよくやったほうだ[/太字]」
敗北を知らないような口調。
石狩を認めているとも感じ取れる。
嫌な予感が、石狩の背中を冷やす。
[太字]次の瞬間だった。[/太字]
交差点の方から、[下線]タイヤが擦れる音[/下線]が聞こえた。
何だ何だと、石狩が交差点の方向を向く。
嫌な予感は的中してしまった。
[太字]白いトラックがこちらの方へ向かって来ている[/太字]のだ。
これも男の能力なのか。もはやどっちでもいい。
トラックを避けることしか頭にない石狩は、横に飛び込もうとした。
しかし足に違和感がある。
なんと、[下線]男が足首を掴んでいる。[/下線]
石狩は払いのけようと、足を振り回す。
だが離れない。
石狩は無理やりにでも動こうと足に力を入れた。
しかし、足が思い通りに動かず、前から転んでしまった。
呼吸が荒くなる。地面で体をのたうち回らせる。
「クソッ…! [太字]離せ![/太字]」
非情にも、トラックは止まらない。
「……こんなところで……[太字]こんなところでェェ!![/太字]」
石狩の命の危機に、隠れてはいられないと羽柴が動く。
まずはアクセルを止めなくては。
羽柴は手榴弾に変化させた石ころを持ち、運転席の空いた窓ガラスの隙間に投げこもうと狙う。
しかし突然、[太字]黒い大群[/太字]が羽柴の周りを覆った。
なんと、さっきの[太字]カラス[/太字]だった。
「マズい……!」
それは普通のカラスとは違う。
くちばしはキキツキのように尖っており、それに長い。
羽柴は腕でそれらを振り払った。
だが、飛ぶように軽々と避けられると、細長いくちばしが体中に突き立てられた。少しでも動いたら、全身を穴だらけにするぞと言わんばかりだ。
(……こんなカラスごときに……すまない…!)
持っていた手榴弾も一匹のカラスが遠くに持っていってしまう。
脱線トラックは止まらない。
[大文字][太字]「やめろォォォォ!!」[/太字][/大文字]
石狩の絶叫が東京に響いた。
場所:交差点近くの歩道[/中央寄せ]
([下線]攻撃するという意識が、邪魔につながる[/下線]ってなら…そ[下線]の意識がなければどうなるんだ[/下線]……?)
唐突に思い浮かぶ疑問。
ガムシャラにやっていては、男に触れることさえままならない。
これが解決法になっていたらいいのだが…。
まずは実践だ。
無意識に男に触れるにはどうしたらいいのか。
石狩は、考えた。考えに考えた。
(……オレ自身があの男に触れようとしたら、意識を持っていることになる……意識を持たずにヤツに触れるためには、[下線]意識を持たない何かがオレの体を操る[/下線]以外に方法がない……)
思いついた方法は一つだけあった。
(……[太字]風だ!![/太字] 風には当然意識がない!……だけど、人を動かす風をいきなり吹かせるなんて出来るのか?……)
結局ダメな考えになると思っていた矢先のこと。
(……そういや、羽柴くんの能力……[下線]なんでも手榴弾にする能力[/下線]だったよな……ちょっと待て……手榴弾は爆発する……爆発するときには……)
バリバリと稲妻のような考えが閃いた!
(……[下線]爆発のときには、爆風が起きる![/下線]……デカい爆発だったら、それなりにブッ飛ぶはずだ!!)
思いついたら即行動。
「なあ、羽柴くん! 手榴弾を投げてくれないか? 爆発寸前のヤツだ!」
当然、何も伝えていない羽柴は唐突すぎて状況が飲み込めない。
「……本気か?……お前に投げて何の意味があるんだ!?」
[太字]「いいから何も考えるな!! オレはただブッ飛びたいだけだ! それ以外に意味なんて無ェ!」[/太字]
あまりにも慌ただしかったので、言う通りにすることにした羽柴。
それなりに大きい石を選ぶと、それを手榴弾に変化させる。
手榴弾となった石には、どういう原理なのか不明だがピンが付いていた。
羽柴は力を込めてピンを抜く。
未だに状況が掴めないが、何かしら意味はあるのだろう。
羽柴はそう信じて、手榴弾を投げた。
爆発を待つ石狩は、無意識になるため目を瞑っていた。
いつ来るのか、いつ爆発するのか、そんなことを考えず、ただ頭を真っ白にしている。
投げられた手榴弾は放物線を描く。
そして、石狩までおよそ数センチの所で手榴弾は爆発した。
石狩の予想通り、爆風はかなりの威力。
背中を火傷したが、後ろから来た爆風に、まるで操られたかのように吹っ飛んだ。
石狩の狙い通り、男の元へ体が向かっている。
邪魔は来ない。
何も起きない。
何かが風を切って向かってくる音に気づき、男は振り向いた。
しかし、[太字]遅かった。[/太字]
投げられた石ころのように落下してきた石狩の体が、男に直撃した。
男は衝撃に耐えきれず、前から倒れる。
無意識を保っている石狩も、男を下敷きにして同じように倒れている。
こうなってしまっては、男も動くことができない。
もう大丈夫だろうと、石狩は意識を取り戻し立ち上がる。
「……こんな状態じゃ、アンタのそのトンデモ能力も使えないだろう……早く話しやがれ……」
しかし男が、質問に答えることはない。
その代わりなのか、地面に突っ伏しながら男は口を開いた
「……初めてだよ……ここまで追い詰められたのは……だが、その努力もすぐ無駄になる……[太字]君はよくやったほうだ[/太字]」
敗北を知らないような口調。
石狩を認めているとも感じ取れる。
嫌な予感が、石狩の背中を冷やす。
[太字]次の瞬間だった。[/太字]
交差点の方から、[下線]タイヤが擦れる音[/下線]が聞こえた。
何だ何だと、石狩が交差点の方向を向く。
嫌な予感は的中してしまった。
[太字]白いトラックがこちらの方へ向かって来ている[/太字]のだ。
これも男の能力なのか。もはやどっちでもいい。
トラックを避けることしか頭にない石狩は、横に飛び込もうとした。
しかし足に違和感がある。
なんと、[下線]男が足首を掴んでいる。[/下線]
石狩は払いのけようと、足を振り回す。
だが離れない。
石狩は無理やりにでも動こうと足に力を入れた。
しかし、足が思い通りに動かず、前から転んでしまった。
呼吸が荒くなる。地面で体をのたうち回らせる。
「クソッ…! [太字]離せ![/太字]」
非情にも、トラックは止まらない。
「……こんなところで……[太字]こんなところでェェ!![/太字]」
石狩の命の危機に、隠れてはいられないと羽柴が動く。
まずはアクセルを止めなくては。
羽柴は手榴弾に変化させた石ころを持ち、運転席の空いた窓ガラスの隙間に投げこもうと狙う。
しかし突然、[太字]黒い大群[/太字]が羽柴の周りを覆った。
なんと、さっきの[太字]カラス[/太字]だった。
「マズい……!」
それは普通のカラスとは違う。
くちばしはキキツキのように尖っており、それに長い。
羽柴は腕でそれらを振り払った。
だが、飛ぶように軽々と避けられると、細長いくちばしが体中に突き立てられた。少しでも動いたら、全身を穴だらけにするぞと言わんばかりだ。
(……こんなカラスごときに……すまない…!)
持っていた手榴弾も一匹のカラスが遠くに持っていってしまう。
脱線トラックは止まらない。
[大文字][太字]「やめろォォォォ!!」[/太字][/大文字]
石狩の絶叫が東京に響いた。
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