果実戦争
[中央寄せ]時刻:8月18日 11時00分
場所:ベンチ[/中央寄せ]
単身でベンチに座る男に近づいた石狩。
「すいませぇ~ン! ちょっといいですか?」
いきなり切り出した。
出来るだけ怪しまれないように、慣れないながらも下手に出る。
「……どうしたんだい?」
落ち着いた声、それに優しさも感じ取れるような[漢字]声色[/漢字][ふりがな]こわいろ[/ふりがな]。
影に隠れた顔を、少しだけ起き上がらせた。
「…[太字]『果実』[/太字]について、何か知っていることはありませんか? 知らないのなら結構ですが……」
男は少し頭を傾け、キョトンとしている。
「……何のことだい? [太字]『果実』[/太字]というのは、リンゴとかミカンのことを言ってるのかい?」
ただの勘違いか?
(……いや、まだ分からない……なら、[下線]一発仕掛けてみるか[/下線]…)
石狩が何かを企てている。
「……何も知らないならいいんです……わざわざありがとうございます……それじゃ、僕は[太字]『くろめだか』[/太字]に!」
(…………この釣り針に、男が引っかかれば……疑いは確信に変わる……[太字]『果実』[/太字]そして[太字]『くろめだか』[/太字]……[下線]意味が分かるヤツは関係者しかいない[/下線])
石狩は後ろを振り向き、手をポケットに突っ込んで、膝を伸ばし、わざとらしく元気に歩く。
後ろ耳を立てながら、返答を待った。
沈黙が続いた。
その時だった。
[太字]「待て……」[/太字]
さっきの会話からは、予想がつかないほどに力強い声が、石狩を呼び止める。
「…………何故、知っているんだ?……[太字]『果実』[/太字]の場所を……!」
石狩は振り向いた。
その顔には、生き生きした嬉しさがにじみ出るように現れていた。
「……お前、[太字]オレの針に引っかかったなッ![/太字] さあ、知っていることを全て白状しやがれ!」
海老で鯛を釣るとは、この事を指すのかもしれない。
しかし、そんな叫びに目もくれず、座っていた男はゆっくりと立ち上がった。
男は、紺色のスーツを着用している。
その首には青いスカーフが巻かれていた。
顔は、その表情は、黒い影によって未だに確認できない。
だが、男の目にはしっかりと[太字]光[/太字]が見える。
[太字]「……これ以上、平和を崩すような真似はしないほうがいい……」[/太字]
警告を思わせる言葉、何を言っているのかと石狩は顔をしかめる。
「どういうことだ?……ハッタリなら止めといたほうがいいぜ……それでも白状できねーんだったら、力づくだ!!……[太字]『T-NEX』[/太字]」
[太字]『T-NEX』[/太字]それは石狩の能力の名前だ。
名前を言ったその直後、石狩の腕は灰色の毛に覆われる。
肌色だった耳は、ピンク色に変色し、薄っぺらくなった耳は空に向かって直立する。
爪は鋭く尖り、肉を裂くのもお安い御用。
それはまるで[太字][漢字]『鼠』[/漢字][ふりがな]ネズミ[/ふりがな][/太字]を思わせるような姿だ。
「……動くんじゃあねぇぞ! 少しでも動いたら、アンタとそのシャレた服がキズ物になっちまうぜ!」
爪を立て、ギーギーと唸るような鳴き声で男を威嚇する。
普通の人なら、ここまでされたら耐えきれずに白状してしまうだろう。
しかし、この男は違った。
「……[太字]平和は常に実行される[/太字]……キミも早く帰りたまえ……少なくとも、この私に傷を付けようなんて考えない方がいい……」
男は、告げるように言った。
そして、歩道に向かって歩き出したのだ。
まるで最初から何もなかったように……。
さすがの石狩も、これには目を疑った。
(あいつから、全く恐怖心が見えなかった……ホントに人間なのかよ……?)
傍からみたら、鼠に変身した石狩もおおよそ人のことは言えないが、それぐらいトンデモナイということだ。
木の陰から見守っていた羽柴も、おもわず言葉を漏らす。
「……あの男が、くろめだかの関係者だということは分かったが……石狩……お前、やはり人間じゃなかったのか……」
場所:ベンチ[/中央寄せ]
単身でベンチに座る男に近づいた石狩。
「すいませぇ~ン! ちょっといいですか?」
いきなり切り出した。
出来るだけ怪しまれないように、慣れないながらも下手に出る。
「……どうしたんだい?」
落ち着いた声、それに優しさも感じ取れるような[漢字]声色[/漢字][ふりがな]こわいろ[/ふりがな]。
影に隠れた顔を、少しだけ起き上がらせた。
「…[太字]『果実』[/太字]について、何か知っていることはありませんか? 知らないのなら結構ですが……」
男は少し頭を傾け、キョトンとしている。
「……何のことだい? [太字]『果実』[/太字]というのは、リンゴとかミカンのことを言ってるのかい?」
ただの勘違いか?
(……いや、まだ分からない……なら、[下線]一発仕掛けてみるか[/下線]…)
石狩が何かを企てている。
「……何も知らないならいいんです……わざわざありがとうございます……それじゃ、僕は[太字]『くろめだか』[/太字]に!」
(…………この釣り針に、男が引っかかれば……疑いは確信に変わる……[太字]『果実』[/太字]そして[太字]『くろめだか』[/太字]……[下線]意味が分かるヤツは関係者しかいない[/下線])
石狩は後ろを振り向き、手をポケットに突っ込んで、膝を伸ばし、わざとらしく元気に歩く。
後ろ耳を立てながら、返答を待った。
沈黙が続いた。
その時だった。
[太字]「待て……」[/太字]
さっきの会話からは、予想がつかないほどに力強い声が、石狩を呼び止める。
「…………何故、知っているんだ?……[太字]『果実』[/太字]の場所を……!」
石狩は振り向いた。
その顔には、生き生きした嬉しさがにじみ出るように現れていた。
「……お前、[太字]オレの針に引っかかったなッ![/太字] さあ、知っていることを全て白状しやがれ!」
海老で鯛を釣るとは、この事を指すのかもしれない。
しかし、そんな叫びに目もくれず、座っていた男はゆっくりと立ち上がった。
男は、紺色のスーツを着用している。
その首には青いスカーフが巻かれていた。
顔は、その表情は、黒い影によって未だに確認できない。
だが、男の目にはしっかりと[太字]光[/太字]が見える。
[太字]「……これ以上、平和を崩すような真似はしないほうがいい……」[/太字]
警告を思わせる言葉、何を言っているのかと石狩は顔をしかめる。
「どういうことだ?……ハッタリなら止めといたほうがいいぜ……それでも白状できねーんだったら、力づくだ!!……[太字]『T-NEX』[/太字]」
[太字]『T-NEX』[/太字]それは石狩の能力の名前だ。
名前を言ったその直後、石狩の腕は灰色の毛に覆われる。
肌色だった耳は、ピンク色に変色し、薄っぺらくなった耳は空に向かって直立する。
爪は鋭く尖り、肉を裂くのもお安い御用。
それはまるで[太字][漢字]『鼠』[/漢字][ふりがな]ネズミ[/ふりがな][/太字]を思わせるような姿だ。
「……動くんじゃあねぇぞ! 少しでも動いたら、アンタとそのシャレた服がキズ物になっちまうぜ!」
爪を立て、ギーギーと唸るような鳴き声で男を威嚇する。
普通の人なら、ここまでされたら耐えきれずに白状してしまうだろう。
しかし、この男は違った。
「……[太字]平和は常に実行される[/太字]……キミも早く帰りたまえ……少なくとも、この私に傷を付けようなんて考えない方がいい……」
男は、告げるように言った。
そして、歩道に向かって歩き出したのだ。
まるで最初から何もなかったように……。
さすがの石狩も、これには目を疑った。
(あいつから、全く恐怖心が見えなかった……ホントに人間なのかよ……?)
傍からみたら、鼠に変身した石狩もおおよそ人のことは言えないが、それぐらいトンデモナイということだ。
木の陰から見守っていた羽柴も、おもわず言葉を漏らす。
「……あの男が、くろめだかの関係者だということは分かったが……石狩……お前、やはり人間じゃなかったのか……」
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