その男に敵意は全く見えない、しかし戦おうとする意志は見えた。
男は、2人に「ついて来い」とでも言うかのように指で合図をする。

先に男が、果てしない一本道から抜け出した、疑いながらも2人は男のあとに着いていく。

歩いている間は沈黙が続いた。

木々の迷路を抜け出した先には、木造の一軒家がぽつんと建っている。
男は家の前まで足を進めると、2人の方を振り返った。

「さあ、始めようか…」

男の冷たい声は2人の背中を震わせる。
エイキチは呟いた。

「……どっちがいいとか…あるのか？　」

男は渋い顔をしている。

「キミと手合わせを願いたい……」
男の指はエイキチの方に向けられていた。

「…分かったぜ……やってやるよッ！　その代わり勝ったらさっさと帰らせてもらうからなッ！！」

もう戦う道しか残されていない。

ムシャクシャした気持ちが渦巻いてくるエイキチは怒りをあらわにする。

「感謝します……それでは改めて、[太字]よろしくお願い致します[/太字]」
あまりにも『冷静』な男。

しかし、[太字]そのときだった[/太字]。

[太字]パンッ[/太字]、一発の銃声が響く。
男の手にはいつの間にか銃が握られていた。
キョウビンの横腹には一つの赤い穴ができている。

「…なんだとッ！？」
何が起きたのかも分からずにキョウビンはそこに倒れ込んでしまう。

エイキチが声を荒げる。
「……オマエ……何してんだッ！」

男が答えた。
「本気で来い……でないと成長はできない…戦いに『余裕』は必要ないと思え…」
妙に落ち着いて、威厳のある声。それが逆に危険なのだ。