みかんのかんの短編集
僕には、好きな人がいた。
長い前髪で隠された目はきらきらと輝いていて、きれいで、少し不思議な人だった。
想いを告げたら、「高校卒業までもってたらね」と返された。僕の想いがあと1年もてばということだろうか。そんなの余裕であると、ずっと待ち続けていた。
あと半年というところだった。
君「私さぁ、病気なんだよね〜」
コンビニの駐車場に座ってアイスを食べている画とはとても似合わない言葉だった。じりじりと太陽が照らし、彼女の持っているみかん味の棒アイスは溶けそうになっていた。カップアイスにしてよかった、とどこか遠くで思う。
僕「病気?」
君「そ、死ぬんだぁ」
僕「……今日って4月1日だったっけ」
君「8月4日だよ」
僕「…じゃあドッキリ?」
君「こんな悪趣味なドッキリしないよ、本当」
僕「…本当に、死んでしまうの」
君「うん、無彩病ってしってる?」
僕「むさいびょう…」
君「復唱するだけじゃわかんないよー」
彼女はケタケタと笑う。
君「日々視界から色が消えていって、やがて死ぬ病気」
僕「…今…見えないの、アイスの色すら」
君「そうだね。きっと鮮やかなオレンジ色をしているんだろうね…」
僕「…いつ死ぬの」
君「もうすぐ死ぬかな」
僕「………んな、」
君「もたなかったね…高校卒業まで」
その言葉で雰囲気、僕の恋心が続かないことを危惧していたのではなく、寿命が続かないことを危惧していたことを察する。
君「好きだったんだぁ」
僕「…?」
君「君のこと」
僕「………えっ…!?!?」
君「照れてやーんの」
僕「こっ…これはちが…」
君「…嬉しかったよ」
君「でも死ぬんだもん。」
僕「………っ…!」
君「私さぁ、最期に見たいものあるんだぁ」
僕「…何が見たいの?」
少し間をおいてから、弾けるような笑顔で言った。
君「花火」
きっと今の君には見えないんだろう。鮮やかに赤や青や緑に弾ける色鮮やかな打ち上げ花火たちの色は。それでも、彼女は楽しそうに笑っていた。
君「ねぇ、喉乾いた」
僕「…買ってこいと。」
君「あはは、せーかい」
僕は仕方なくベンチから立ち上がった。近くの自動販売機でオレンジジュースと緑茶を買った。買っている途中、後ろからカシャ、と音がした。きっと花火の写真を撮ったのだろう。
僕「かってきたよ、どっちがい…」
ガタン
彼女がスマホを落とした。寝てしまったのかと思った。正しく言えばそう信じたかった。赤や青や緑に照らされるその顔からは、もう二酸化炭素は吐かれていなかった。
彼女のお葬式で、彼女のお母さんに会った。小さくお辞儀をすると、お辞儀を返された。スマホを渡されたので、見てみると彼女のスマホの画面には、メールの未送信ボックスが表示されていた。
宛先は、僕。
フォルダを、開く。彼女は今どきラインを使用せず、メールを使っていた。
そのメールには、
『きれい
ありが』
の文字と、添付された花火の写真。
目からは涙とともに何かがこぼれてきた。
彼女からはあの花火はどう見えていたのだろうか。生前の彼女いわくモノクロでもきれいらしい。
今でも花火を見ると思い出す。
彼女は、別の世のどこかで花火を見ているだろうか。
長い前髪で隠された目はきらきらと輝いていて、きれいで、少し不思議な人だった。
想いを告げたら、「高校卒業までもってたらね」と返された。僕の想いがあと1年もてばということだろうか。そんなの余裕であると、ずっと待ち続けていた。
あと半年というところだった。
君「私さぁ、病気なんだよね〜」
コンビニの駐車場に座ってアイスを食べている画とはとても似合わない言葉だった。じりじりと太陽が照らし、彼女の持っているみかん味の棒アイスは溶けそうになっていた。カップアイスにしてよかった、とどこか遠くで思う。
僕「病気?」
君「そ、死ぬんだぁ」
僕「……今日って4月1日だったっけ」
君「8月4日だよ」
僕「…じゃあドッキリ?」
君「こんな悪趣味なドッキリしないよ、本当」
僕「…本当に、死んでしまうの」
君「うん、無彩病ってしってる?」
僕「むさいびょう…」
君「復唱するだけじゃわかんないよー」
彼女はケタケタと笑う。
君「日々視界から色が消えていって、やがて死ぬ病気」
僕「…今…見えないの、アイスの色すら」
君「そうだね。きっと鮮やかなオレンジ色をしているんだろうね…」
僕「…いつ死ぬの」
君「もうすぐ死ぬかな」
僕「………んな、」
君「もたなかったね…高校卒業まで」
その言葉で雰囲気、僕の恋心が続かないことを危惧していたのではなく、寿命が続かないことを危惧していたことを察する。
君「好きだったんだぁ」
僕「…?」
君「君のこと」
僕「………えっ…!?!?」
君「照れてやーんの」
僕「こっ…これはちが…」
君「…嬉しかったよ」
君「でも死ぬんだもん。」
僕「………っ…!」
君「私さぁ、最期に見たいものあるんだぁ」
僕「…何が見たいの?」
少し間をおいてから、弾けるような笑顔で言った。
君「花火」
きっと今の君には見えないんだろう。鮮やかに赤や青や緑に弾ける色鮮やかな打ち上げ花火たちの色は。それでも、彼女は楽しそうに笑っていた。
君「ねぇ、喉乾いた」
僕「…買ってこいと。」
君「あはは、せーかい」
僕は仕方なくベンチから立ち上がった。近くの自動販売機でオレンジジュースと緑茶を買った。買っている途中、後ろからカシャ、と音がした。きっと花火の写真を撮ったのだろう。
僕「かってきたよ、どっちがい…」
ガタン
彼女がスマホを落とした。寝てしまったのかと思った。正しく言えばそう信じたかった。赤や青や緑に照らされるその顔からは、もう二酸化炭素は吐かれていなかった。
彼女のお葬式で、彼女のお母さんに会った。小さくお辞儀をすると、お辞儀を返された。スマホを渡されたので、見てみると彼女のスマホの画面には、メールの未送信ボックスが表示されていた。
宛先は、僕。
フォルダを、開く。彼女は今どきラインを使用せず、メールを使っていた。
そのメールには、
『きれい
ありが』
の文字と、添付された花火の写真。
目からは涙とともに何かがこぼれてきた。
彼女からはあの花火はどう見えていたのだろうか。生前の彼女いわくモノクロでもきれいらしい。
今でも花火を見ると思い出す。
彼女は、別の世のどこかで花火を見ているだろうか。
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