いつも笑お!転生者!
#1
入学の音がなる
転生者。
それは、異世界の記憶、前世での記憶があるもののことである。
世界人口の約0.1割が、転生者だと言われている。
そんな転生者たちは、転生前の記憶があること以外、特に変わったことはない、一点を除いて。
転生者が転生者ではない者と大きく違うところ、それは、何かしらスキルを持っているところだ。
水を操るスキルだったり。水を作り出すスキルだったり。透明人間になるスキルだったり。
スキルは個人個人で違い、様々だ。
そんな転生者のために造られた学校がある。その名は、「転生者学校」である。
[水平線]
桜が舞うあたたかな日。
転生者学校、一年二組の教室。六歳の女の子、二人の姿があった。
一人は、くりくりとしたまんまるのピンクの瞳を持った可愛い子である。誰でも将来美女になるであろうことは、容易に想像できるだろう。
もう一人は、少し吊り目だが、きらきらとした宝石のような緑色の瞳を持った、これまた可愛い子である。前者の子とは、別方向の美人になるであろう。
そんな二人はもちろん、見た目通り、子供らしく可愛く、微笑ましい会話をしている、
「転生者がっこぉ!?センスわっるぅっ!?」
「分かる~、めっちゃセンス悪いよねぇ」
わけではなかった…。
なんと、学校名への悪口だった。
一人は、黒板にでかでかと書いてある『転生者学校へようこそ』という文字を見て、思わず出てしまっただけのようだ。けれど、前に座っている女の子は違う。思わず出てしまった言葉を聞き、明らかに学校名の悪口を言っている。
「どう考えても、もうちょっといいのあったよねぇ。例えば、英語でなんとかスクール、とか」
「英語で『転生者』ってなんていうの?」
「知らない。私、英語だけは苦手だったんだよねぇ」
「わたしもおんなじ!英語、ほんとわけ分かんない!みかんとか、なんで『オレンジ』って言うのに『オランゲ』って書くの!?」
「あ~、たしかにね~。でもやるうちになれたわ」
「そ?わたしももっと書き続けたら、なれるかな?」
「さあね~、ていうか、もう覚えても意味なくない?」
「う~ん、そうだね!」
笑顔で話し続ける二人の女の子。
すると、ふと、思い出したように緑の瞳の女の子が口を開いた。
「そういや、ピンク目ロリちゃん、名前なんてゆーの?」
『緑目ロリちゃん』の言葉に『ピンク目ロリちゃん』もお互いにまだ名前を知らないことに初めて気づいたようだ。
二人は、もちろん今日初対面だ。今日が入学式であるから。
「わたしは、ファターシエ!上の名前は…カディ……リン…タラン…アホ…ウ…?アンポンタン…だっけ…?待って、上の名前、分かんない。まあ、いっかぁ」
「最後らへん悪口になってるけど。よろしくね、アホウ」
『ピンク目ロリ』ファターシエの言葉に、普通に、にっこりと笑って悪口でかえす『緑目ロリ』。
呼び方を『アホウ』としたのは、偶然ではないだろう。悪意、はないにしても、いたずら心が混ざっているように感じる。
けれど、あながち『アホウ』も間違っていないかもしれない。
自分の家名を覚えていないのだから。
『アホウ』は、もちろん激しく反応する。
「その呼び方、やめて!?」
「なんで?家名じゃん?」
『緑目ロリ』は、心底不思議そうな表情で首をかしげる。
その姿は可愛らしいが、ちょっと憎らしく感じるのは、発言のせいだ。
「別の呼び方がいい?なら、そうだなぁ」
う~ん、と考え込むように宙を見上げる。
そして、すぐに思いついたように「あっ」と声を上げた。
『アホウ』は、別の呼び方になると分かり、ワクワクしている様子だ。
『緑目ロリ』は、にっこりと笑う。
「アンポンタン!」
「うん!我ながらいい!うん!」と、『緑目ロリ』はとっても満足気だ。
けれど、その近くで『アンポンタン』は…。
口を開けて、驚愕した顔で『緑目ロリ』を見ていた。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
そして、少し間があき、はっとする。
「それもやめて!?」
『緑目ロリ』は、また可愛らしく首をかしげる。これまた驚きの憎さだ。
「え~、ナポリタンのがよかったかなぁ?」
「名前なんも関係ないじゃん!」
「え~、じゃあ、なんて呼んでほしいの?」
にこにこの笑顔でファターシエに問う。
ファターシエは、少し考え、笑顔で口を開いた。
「ファターシエ、もしくは、シエで!」
「おっけー、ファターね」
「う…ん?ちゃんと聞いてた?」
「よろしく、ファター」
『緑目ロリ』は、にっこり笑顔で完全無視だ。
まさかの第三の選択肢を訂正しようかと思うファターシエだが、まあ、いいか!と思い、にこりと笑った。
「うん、よろしく!えっと…あっそうだ。名前なに?」
そのとき、ファターシエはまだ、目の前にいる女の子の名前を知らないことに気づいた。
ファターシエの呼び方について話していて、すっかり忘れていた。
『緑目ロリ』も今、気づいたようで、少し目を見開くが、すぐに笑顔に戻った。
「私は、ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ」
さらさらと答えるケレネゼレラに、ファターシエは目が点だ。
その表情で、指を一本立てる。
「…もういっかい…」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
ファターシエはまだ目が点だ。もっと意味が分からなくなったようだ。
さっきより名前、のびた…。
先ほどはファターシエが覚えることができないと思い、手加減していたようだ。
ファターシエは、呆然と聞き取った音を口に出してみる。
「ケラレ…テミヨウゼ?」
「違う。Mにでもなる気か」
最初の一字くらいしかあっていない。
さすがにこれはやばいだろう。やばいのは、耳か、記憶力か。その両方か。もしくは、頭だろうか。
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
驚きの早さで繰り返される名前。もしかしたら、先ほどより早くなっているかもしれない。
よく噛まずに言えるものだ。
まあ、自分の名前だから、当たり前かもしれないけれど。
けれど、もちろんファターシエにとっては、なにも普通ではない。
「ケレレ…」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
「エレレ…ラレラ…?」
「違うよ~。ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
「ケレネ」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
合っていたのに、途中で遮り、もう一度すっごい早さで繰り返される名前。
ファターシエは、余計に訳が分からなくなった様子だ。
視線をさまよわせて、「ケ…」「ケラ」「ケレ…」「ケロ…?」などと繰り返している。
そのとき、大きなおおらかな音が、学校中に鳴り響いた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
もちろん、それはファターシエとケレネゼレラの耳にも届き、二人で窓の外に視線を向けた。
視界に映ったのは、人とは比べ物にならないほど大きな鐘の塔だった。
日光の日差しを浴びて金色に光り、輝いている鐘が、ゆっくりと左右に揺れていた。
ケレネゼレラが「あっ」と今、思い出したようにつぶやく。
「そういえば、入学式の時間か」
ファターシエは、ぱあっと表情を輝かせた。ガタッと元気よく席を立った。
「ケレレ、行こう!」
にっと笑うファターシエ。
ケレネゼレラの手を引いて、あたたかい日に、駆けだした。
それは、異世界の記憶、前世での記憶があるもののことである。
世界人口の約0.1割が、転生者だと言われている。
そんな転生者たちは、転生前の記憶があること以外、特に変わったことはない、一点を除いて。
転生者が転生者ではない者と大きく違うところ、それは、何かしらスキルを持っているところだ。
水を操るスキルだったり。水を作り出すスキルだったり。透明人間になるスキルだったり。
スキルは個人個人で違い、様々だ。
そんな転生者のために造られた学校がある。その名は、「転生者学校」である。
[水平線]
桜が舞うあたたかな日。
転生者学校、一年二組の教室。六歳の女の子、二人の姿があった。
一人は、くりくりとしたまんまるのピンクの瞳を持った可愛い子である。誰でも将来美女になるであろうことは、容易に想像できるだろう。
もう一人は、少し吊り目だが、きらきらとした宝石のような緑色の瞳を持った、これまた可愛い子である。前者の子とは、別方向の美人になるであろう。
そんな二人はもちろん、見た目通り、子供らしく可愛く、微笑ましい会話をしている、
「転生者がっこぉ!?センスわっるぅっ!?」
「分かる~、めっちゃセンス悪いよねぇ」
わけではなかった…。
なんと、学校名への悪口だった。
一人は、黒板にでかでかと書いてある『転生者学校へようこそ』という文字を見て、思わず出てしまっただけのようだ。けれど、前に座っている女の子は違う。思わず出てしまった言葉を聞き、明らかに学校名の悪口を言っている。
「どう考えても、もうちょっといいのあったよねぇ。例えば、英語でなんとかスクール、とか」
「英語で『転生者』ってなんていうの?」
「知らない。私、英語だけは苦手だったんだよねぇ」
「わたしもおんなじ!英語、ほんとわけ分かんない!みかんとか、なんで『オレンジ』って言うのに『オランゲ』って書くの!?」
「あ~、たしかにね~。でもやるうちになれたわ」
「そ?わたしももっと書き続けたら、なれるかな?」
「さあね~、ていうか、もう覚えても意味なくない?」
「う~ん、そうだね!」
笑顔で話し続ける二人の女の子。
すると、ふと、思い出したように緑の瞳の女の子が口を開いた。
「そういや、ピンク目ロリちゃん、名前なんてゆーの?」
『緑目ロリちゃん』の言葉に『ピンク目ロリちゃん』もお互いにまだ名前を知らないことに初めて気づいたようだ。
二人は、もちろん今日初対面だ。今日が入学式であるから。
「わたしは、ファターシエ!上の名前は…カディ……リン…タラン…アホ…ウ…?アンポンタン…だっけ…?待って、上の名前、分かんない。まあ、いっかぁ」
「最後らへん悪口になってるけど。よろしくね、アホウ」
『ピンク目ロリ』ファターシエの言葉に、普通に、にっこりと笑って悪口でかえす『緑目ロリ』。
呼び方を『アホウ』としたのは、偶然ではないだろう。悪意、はないにしても、いたずら心が混ざっているように感じる。
けれど、あながち『アホウ』も間違っていないかもしれない。
自分の家名を覚えていないのだから。
『アホウ』は、もちろん激しく反応する。
「その呼び方、やめて!?」
「なんで?家名じゃん?」
『緑目ロリ』は、心底不思議そうな表情で首をかしげる。
その姿は可愛らしいが、ちょっと憎らしく感じるのは、発言のせいだ。
「別の呼び方がいい?なら、そうだなぁ」
う~ん、と考え込むように宙を見上げる。
そして、すぐに思いついたように「あっ」と声を上げた。
『アホウ』は、別の呼び方になると分かり、ワクワクしている様子だ。
『緑目ロリ』は、にっこりと笑う。
「アンポンタン!」
「うん!我ながらいい!うん!」と、『緑目ロリ』はとっても満足気だ。
けれど、その近くで『アンポンタン』は…。
口を開けて、驚愕した顔で『緑目ロリ』を見ていた。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
そして、少し間があき、はっとする。
「それもやめて!?」
『緑目ロリ』は、また可愛らしく首をかしげる。これまた驚きの憎さだ。
「え~、ナポリタンのがよかったかなぁ?」
「名前なんも関係ないじゃん!」
「え~、じゃあ、なんて呼んでほしいの?」
にこにこの笑顔でファターシエに問う。
ファターシエは、少し考え、笑顔で口を開いた。
「ファターシエ、もしくは、シエで!」
「おっけー、ファターね」
「う…ん?ちゃんと聞いてた?」
「よろしく、ファター」
『緑目ロリ』は、にっこり笑顔で完全無視だ。
まさかの第三の選択肢を訂正しようかと思うファターシエだが、まあ、いいか!と思い、にこりと笑った。
「うん、よろしく!えっと…あっそうだ。名前なに?」
そのとき、ファターシエはまだ、目の前にいる女の子の名前を知らないことに気づいた。
ファターシエの呼び方について話していて、すっかり忘れていた。
『緑目ロリ』も今、気づいたようで、少し目を見開くが、すぐに笑顔に戻った。
「私は、ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ」
さらさらと答えるケレネゼレラに、ファターシエは目が点だ。
その表情で、指を一本立てる。
「…もういっかい…」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
ファターシエはまだ目が点だ。もっと意味が分からなくなったようだ。
さっきより名前、のびた…。
先ほどはファターシエが覚えることができないと思い、手加減していたようだ。
ファターシエは、呆然と聞き取った音を口に出してみる。
「ケラレ…テミヨウゼ?」
「違う。Mにでもなる気か」
最初の一字くらいしかあっていない。
さすがにこれはやばいだろう。やばいのは、耳か、記憶力か。その両方か。もしくは、頭だろうか。
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
驚きの早さで繰り返される名前。もしかしたら、先ほどより早くなっているかもしれない。
よく噛まずに言えるものだ。
まあ、自分の名前だから、当たり前かもしれないけれど。
けれど、もちろんファターシエにとっては、なにも普通ではない。
「ケレレ…」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
「エレレ…ラレラ…?」
「違うよ~。ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
「ケレネ」
「ケレネゼレラ・アスカッショールロデゼピュ・ブアンシュロヅサーシェナ」
合っていたのに、途中で遮り、もう一度すっごい早さで繰り返される名前。
ファターシエは、余計に訳が分からなくなった様子だ。
視線をさまよわせて、「ケ…」「ケラ」「ケレ…」「ケロ…?」などと繰り返している。
そのとき、大きなおおらかな音が、学校中に鳴り響いた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
もちろん、それはファターシエとケレネゼレラの耳にも届き、二人で窓の外に視線を向けた。
視界に映ったのは、人とは比べ物にならないほど大きな鐘の塔だった。
日光の日差しを浴びて金色に光り、輝いている鐘が、ゆっくりと左右に揺れていた。
ケレネゼレラが「あっ」と今、思い出したようにつぶやく。
「そういえば、入学式の時間か」
ファターシエは、ぱあっと表情を輝かせた。ガタッと元気よく席を立った。
「ケレレ、行こう!」
にっと笑うファターシエ。
ケレネゼレラの手を引いて、あたたかい日に、駆けだした。
このボタンは廃止予定です
/ 1