燃揺る魂、その刃に乗せて
「………おいおいおいおい………[漢字]一日に二人なんて[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・[/ふりがな]」、今日はツイてねえなあ…?」
彼女の落ちた首を片手でキャッチし、再度腹を服で括って立ち上がる。
痛みにその整った顔が歪んだ。…或いは、単に戦うのが面倒なだけかもしれない。どちらにせよ、目の前の首の切り落とされた少女に対する恐怖や不安、悲しみや怒りといった一切の感情は持ち合わせていないようだ。
「……戦士にして、人に非ず」
「んぉ?…ああ、殺ったのアンタか。探す手間省けてよかったよ」
ずしりと大きな足音を鳴らしながら、巨漢が現れた。右手で血濡れた大剣を握りしめており、ついさっき殺したと言わんばかりに赤い雫が零れ落ちる。
「同胞の死を悲しまず。果てその先に、何の名誉があろうことか」
「…何の話だ?…まあ俺、名誉のために戦ってねえしな。…何より、コイツ死んでねえよ。聞いてんだろ?」
「――あ、バレてた?もうちょっと引っ張ろうと思ってたんだけど」
ジードが右手に持っていた生首が、そのまま口を動かし、声を発する。
その事に眉一つ動かさず、ジードは動き始めた生首を打ち捨てられた体のほうへ投げた。
生首は、まるで虫が暴れるかの如くかたかたと震え始め、徐々に元あった場所へと引っ付き始める。
「あーばっちいばっちい。問答はいいから復活してろ」
「…我ら生命は死ぬ為に生きるのだ。矛盾した事実を抱えず目を背けるその体に、いったい何の価値が在ろうか」
「知らないわよ、そんなの…否定された途端に目標変えるのってアナタの言う名誉的にどうなの?…とりあえずまあ、黙ってくれない――かッ、なあ!」
とてもその体躯から繰り出されたとは思えないほどの破壊力とスピードで、少女の体が巨漢の頭を蹴り抜いた。
あまりの勢いに巨漢の踏みしめた大地が割れ、湿った土が顔を表す。がしかし、巨漢は何も持っていない右手一つでそれを受け止めていた。
「我[漢字]鬼人[/漢字][ふりがな]オーガ[/ふりがな]。誉の為に命を擲ち、答えの為に日々走る者為り。命尽き果て堕ちる時まで、この眼に一切曇り無し」
「どうぞお好きに…!でもできれば、それ私たちに影響ない範囲でやって欲しかった、かなあッ!」
少女がまだ受け止められていなかった反対の足で顔を撃つ。頬を正確に捉えたそれは巨漢にダメージを与えたかと思われたが、しかしそれを受けても怯む様子すらない。代わりに少しだけ浮き上がった兜の隙間から、少女は巨漢の額に一本の角をはやしているのが見えた。
巨漢――否、それは[漢字]鬼人[/漢字][ふりがな]オーガ[/ふりがな]。盛り上がった筋肉から成る強大な膂力と防御力、またその巨体からは考えられない瞬発力で敵をねじ伏せる魔族の一種。ついさっきジードが戦っていた植物族の魔物とは違い、搦手を使用しない、いわば純粋な暴力の化身。
ソレが高度な知能を持って甲冑に身を包み、人一人がすっぽり収まってしまいそうな大剣を担ぎ、額に大きな角を生やして、今、二人の兵の前に立っている。
「『暴虐』、フラグイン。その首取りて、我が糧となるが良い」
「どうもご丁寧に。…んじゃこちらも、俺は『[漢字]武士[/漢字][ふりがな]もののふ[/ふりがな]』のジード。唯の一片加減せず、全身全霊でお相手しよう」
「『輪廻』のフランヴェスタ!私の全力で、塵も残さず焼き払ってあげる!」
五人いる[漢字]兵[/漢字][ふりがな]つわもの[/ふりがな]が一人、『[漢字]輪廻[/漢字][ふりがな]ゼーレンヴァンデルング[/ふりがな]』のフランヴェスタ。揺らぐ炎のその先で、彼女は蜃気楼を見るだろう。
彼女の落ちた首を片手でキャッチし、再度腹を服で括って立ち上がる。
痛みにその整った顔が歪んだ。…或いは、単に戦うのが面倒なだけかもしれない。どちらにせよ、目の前の首の切り落とされた少女に対する恐怖や不安、悲しみや怒りといった一切の感情は持ち合わせていないようだ。
「……戦士にして、人に非ず」
「んぉ?…ああ、殺ったのアンタか。探す手間省けてよかったよ」
ずしりと大きな足音を鳴らしながら、巨漢が現れた。右手で血濡れた大剣を握りしめており、ついさっき殺したと言わんばかりに赤い雫が零れ落ちる。
「同胞の死を悲しまず。果てその先に、何の名誉があろうことか」
「…何の話だ?…まあ俺、名誉のために戦ってねえしな。…何より、コイツ死んでねえよ。聞いてんだろ?」
「――あ、バレてた?もうちょっと引っ張ろうと思ってたんだけど」
ジードが右手に持っていた生首が、そのまま口を動かし、声を発する。
その事に眉一つ動かさず、ジードは動き始めた生首を打ち捨てられた体のほうへ投げた。
生首は、まるで虫が暴れるかの如くかたかたと震え始め、徐々に元あった場所へと引っ付き始める。
「あーばっちいばっちい。問答はいいから復活してろ」
「…我ら生命は死ぬ為に生きるのだ。矛盾した事実を抱えず目を背けるその体に、いったい何の価値が在ろうか」
「知らないわよ、そんなの…否定された途端に目標変えるのってアナタの言う名誉的にどうなの?…とりあえずまあ、黙ってくれない――かッ、なあ!」
とてもその体躯から繰り出されたとは思えないほどの破壊力とスピードで、少女の体が巨漢の頭を蹴り抜いた。
あまりの勢いに巨漢の踏みしめた大地が割れ、湿った土が顔を表す。がしかし、巨漢は何も持っていない右手一つでそれを受け止めていた。
「我[漢字]鬼人[/漢字][ふりがな]オーガ[/ふりがな]。誉の為に命を擲ち、答えの為に日々走る者為り。命尽き果て堕ちる時まで、この眼に一切曇り無し」
「どうぞお好きに…!でもできれば、それ私たちに影響ない範囲でやって欲しかった、かなあッ!」
少女がまだ受け止められていなかった反対の足で顔を撃つ。頬を正確に捉えたそれは巨漢にダメージを与えたかと思われたが、しかしそれを受けても怯む様子すらない。代わりに少しだけ浮き上がった兜の隙間から、少女は巨漢の額に一本の角をはやしているのが見えた。
巨漢――否、それは[漢字]鬼人[/漢字][ふりがな]オーガ[/ふりがな]。盛り上がった筋肉から成る強大な膂力と防御力、またその巨体からは考えられない瞬発力で敵をねじ伏せる魔族の一種。ついさっきジードが戦っていた植物族の魔物とは違い、搦手を使用しない、いわば純粋な暴力の化身。
ソレが高度な知能を持って甲冑に身を包み、人一人がすっぽり収まってしまいそうな大剣を担ぎ、額に大きな角を生やして、今、二人の兵の前に立っている。
「『暴虐』、フラグイン。その首取りて、我が糧となるが良い」
「どうもご丁寧に。…んじゃこちらも、俺は『[漢字]武士[/漢字][ふりがな]もののふ[/ふりがな]』のジード。唯の一片加減せず、全身全霊でお相手しよう」
「『輪廻』のフランヴェスタ!私の全力で、塵も残さず焼き払ってあげる!」
五人いる[漢字]兵[/漢字][ふりがな]つわもの[/ふりがな]が一人、『[漢字]輪廻[/漢字][ふりがな]ゼーレンヴァンデルング[/ふりがな]』のフランヴェスタ。揺らぐ炎のその先で、彼女は蜃気楼を見るだろう。
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