ヴィンディン『一人で来たのか？』

乙鳥『…いいえ。正確には二人。』

乙鳥『私は、とある一人の男に取り憑きながら、異世界に来ました。』


女神『…取り憑きながら？』

乙鳥『はい、取り憑きながら。』

私はその言葉に恐怖を感じた。この人は、他の人に取り憑くことができる。今、この状況下で、乙鳥さんから逆らうと、私たちに憑かれる可能性があるからだ。
私は乙鳥さんの機嫌をとりながら喋ることにした。

ヴィンディン『其奴は一体どこへ？』

乙鳥『既に、海渡がいる方へ移動中です。もう着いている頃でしょう。』

既に移動中！？もはや乙鳥さんは私たちに聞く前から、私たちを助けるつもりだったのか。それにしても、行動が自分勝手すぎる。

けれど何故海渡たちの情報を知っているのか、わからない。私たちは、外に情報を漏らさないように海渡が洗脳されている状況は隠していたはず。
海渡のお母さんにバレるかもしれないとは思っていたが、海渡のお母さんまでも妹の草野優に洗脳されている。

だから私たち以外は誰も知らないと思っていた。けれど、何故知っている…？

そう思った時、私は一つの可能性が頭をよぎった。

[太字]既に私たちの誰かに取り憑いていたのなら、情報を知っていておかしくない。[/太字]

私は思わず乙鳥さんに聞いてみた。

女神『なんで海渡の居場所を知っているんですか…？私たち、海渡様の情報をあなたに言った記憶はないのですが…。』

女神『それに、一体どこで海渡様を見たのですか…？』

乙鳥さんは一瞬黙った。言うことを考えているのか、口を開けようとしない。

しかし、乙鳥さんから発された言葉は、予想外のことだった。

乙鳥『[太字][下線]私が取り憑いていた男…もう一人の[大文字]燕[/大文字]が最強だからです。[/下線][/太字]』

…！？


乙鳥『海渡は神界にいつの日かにやってきました。…燕の体を乗っ取ってね。』

乙鳥『先程口にはしませんでしたが、何故あなた方は私が取り憑いたことに驚いているのですか？』

乙鳥『海渡は、燕の体を乗っ取っていた。そのことと変わりないのでは？』

乙鳥『それにあの神界最強の燕の体を乗っ取れる者というものは、燕の強さと並べれるくらいの強さを持っていないとできない。』

乙鳥『海渡は、もしかして[太字]最強[/太字]なのでは？』


乙鳥さんの口から、次々と言葉が出てくる。私たちはその勢いに押され、黙り込んでしまった。海渡が燕さんという人の体を乗っとり、神界に行っていた…？一体いつの話だろう。
私はいつも海渡様を監視している。(いろんな意味で)

だからそんな時間なかったはず。一体どうやって監視を掻い潜って…。海渡様にはこの監視は了承を得てあるはず…。

乙鳥さんは続けて話した。


乙鳥『きっと[太字]私の燕[/太字]がいれば、海渡の妹の優を倒し、見事に洗脳が解けます。』

乙鳥『だから、私たちがあなたたちに全面協力するという契約を私たちは結びたいのです。』

乙鳥『もし海渡の洗脳が解けなかった場合、あなたたちが思う相当のお詫びを差し上げます。』



乙鳥『しかし、もし海渡の洗脳が解けた場合、[太字]あなたたちの海渡を[下線]私にください。[/下線][/太字]』