これは地球よりも前に生まれた世界。

自然豊かでたくさんの生き物が人になった世界。

けれど、こんなに綺麗な世界でも、未だ命を無駄にする戦いが続けられている。

全てを綺麗にすることは不可能だった。

この世界は、支配人の手によって、この世界から脱出できないようにびくともしない結界が張られている。

だが、どうやら一人脱出してしまったようだ。

結界のほんの一部が破られている。

それに気づいた一同が、悲しみ嘆いたり。きっと、もう生きて帰ってこないと思っているのだろう。

不思議だなぁ。たった一つの命に対して、こんなに悲しむなんて。

何もわからなかった。その気持ちも、それに対する思いも。何もわからなかった。それほど私が知ろうとしなかったからだ。

だが、どうやらその脱出した一人が帰ってきたそうだ。どうやら、様子がおかしい。

いろんな荷物を持ちながら、帰りを待っていた人らを睨みつけた。

そして彼はこう言った。


『この世界が、間違っている。』


そう言い切った。

それを聞いた人らはぽかんとしている。

彼が言っていることが理解できなかったのか、それとも頭の整理が追いつかなかったのか、全員何もいえなかった。

いや、もう間違っていると気づいていたのかもしれない。

そう言って、彼は支配人に抗議することにしたのだ。

やっぱりこの世界は綺麗になれない。


…というのが、この世界でたった一人しかいない脱出した僕の一部の物語である。