オカリナsite

私は、「草野海渡」という人間を探していた。逃げられない部屋に閉じ込めたはずなのに、逃げられてしまった。

逃してはいけない。リュヌ様、お姉様に怒られてしまう。これは私に授けられた一つの使命である。

だがあの人間が逃げた先はシャイニーフォレスト。異世界でもあまり研究が進められていないエリア。きっとこの中に身を潜めているのだろう。私はシャイニーフォレストを探すことにした。

地道に探していると、人間と女神を見つけた。

目を細めてよく見てみると、間違いない、あの人間だ。

オカリナ『見つけた。バブルショット』

私はすぐに人間に近づき、不意打ちをした。しかし、

海渡『バリア。』

だが防がれてしまった。…いや想定内だった。私はこの人間を倒してはいけない。なぜなら…、

[太字][下線][大文字]命令だから[/大文字][/下線][/太字]

海渡『…オカリナ。』

草野海渡が私を呼ぶ。この人間は私を本気で倒しにくるだろう。けれど私はこの人間を本気で倒しに行くことができない。なぜならば、

[太字][下線][大文字]命令だから[/大文字][/下線][/太字]

オカリナ『…大人しく捕まってもらいましょうか。何度抵抗しても無駄だと思ってください。』

私はそういうと、草野海渡がこう返した。

海渡『さあね。それはやってみないとわからないでしょ。』

私はこの言葉に不快感を覚えた。やってみないとわからないなんて、私は心の底からそう思っている。しかし、私は違う。

私は、やってみないとわからないことがやれない。やってみたいことができない。やってみたいのに、やってみることができない。

海渡『一体、どういう目的なんだ？俺を狙う目的。』

オカリナ『…これは任務ですので、他言厳禁です。』

海渡『…ふ〜ん…、じゃあいいさ。』

海渡『オカリナ。君を神力躍進の試し打ちとして使わせてもらうよ。』

…神力躍進…？

私はその言葉に覚えがある。リュヌ様も、お姉様もできるとても凄い奥義のような技…。

なぜあの人間がそんなのが使える…？

オカリナ『…神力躍進…。』

思わず私はそう呟いた。神力躍進なんて、お姉様からとても強い人じゃないとできないと言われ続けてきた。私はそんな神力躍進を使ってみたいと思って、魔法の練習をしたりして、強くなろうとした。

しかし、まだ使えなかった。お姉様からはそんな短い時間だけじゃできないよと言われた。

私は生まれてもうすぐ１００年は経つ。お姉様も５００年はあっと超えているだろう。

なのになんで。

海渡『ライトニングボルト！』

オカリナ『…ライトニングアロー。』

私は魔法を放った。無心で魔法を放った。

海渡『よいしょ。』

人間は私のそばまで私でも見えない速度で近づいた。私は魔法を出すのが間に合わなかった。

オカリナ『シールd…』

海渡『ファイア・ボール』

私は人間の魔法を直にくらった。


なんで、２０年くらいしか生きていないであろう人間如きが、１００年近く生きていて神力躍進が使えるお姉様の強い妹として生まれたこの私より先に、[下線]神力躍進が使えているの[/下線]…？

いや違う。私はチャンスは与えられていなかった。

私はただの都合が良い妹になってしまったんだ。私が、私を抑えたせいで。