リュヌ『あの人間は本当に最強かもしれない。』

メル『…ホンマか？…リュヌちゃん。うち、その人間と会ってみたいんやけど。』


どうやらメルは興味津々のようだった。

リュヌ『…やっぱりメルの手が必要みたい。』

メル『やろ？やけどリュヌちゃんも強いから、うちとリュヌちゃんが共闘すれば、勝利したに同然やけどな。』

リュヌ『そう？』

そうすると、メルの後ろから私が知らない人が現れた。女の子で、幼い顔…。その子はメルに抱きついて、私を不安そうに見ていた。

メル『ああ、初対面やったっけ…。この子はうちの妹。』

メル『[太字][大文字]オカリナ[/大文字][/太字]ってゆうんやで。』

オカリナ『…っと…。』

オカリナ…という名前は前から知っていた。メルの家族は当主という人が必ず存在し、当主は今までで全員が上級者経験あり。

異世界で一番実績がある一家とも言われている。
その一家の名前は『ディファン』家。

その当主というものは、必ず最年長がやるというルールがある。そのルールをぶち壊したのが…、

メルだ。

メルは５代目当主になる予定だった。メルは今では最年長で、本当は今じゃ当主のはずだった。
しかし、メルが妹…オカリナに座を譲った。

私はその理由を聞いたことがない。けれども、メルに何か考えがあるのだろう。

リュヌ『こんにちは。オカリナさん。』

オカリナ『…私は、ディファン家５代目当主。オカリナ・ディファン。』

オカリナの長い後ろのさらさらの黒髪が、光に当たって綺麗に光っている。くせっ毛もない前髪のすぐ下には吸い込まれそうな黄色の目がある。そんな目で私を見て自己紹介をしている。礼儀がとても正しい。

オカリナ『…お姉様。あの方のお名前は？』

メル『あの子はリュヌ・ストロンゲストっていう子やよ。優しいお姉ちゃんやで。』

私はメルから優しいなんて言葉を一言も聞いたことが…。

オカリナ『ストロンゲスト様。本日は貴重な時間を割いていただき、誠にありがとうございます。』

リュヌ『オカリナさん、リュヌでいいよ。』

オカリナ『…では、リュヌ様とお呼びさせていただきます。』

オカリナはそう言って、頭を深く下げた。当主というものはそういうものなのだろうか。堅苦しいし、なんだか慣れない。

リュヌ『…オカリナさんは礼儀正しくて素敵ね。とても可愛い子だね。』

オカリナ『…そう思ってもらって、光栄です。』

リュヌ『メルと大違い。』

メル『敬語を滅多に使わないうちになんか用ー？』

オカリナはずっと真顔で私を見ていた。何か違和感があってもおかしくはない。

そう思っていると、メルが私にこう言った。

メル『オカリナをリュヌちゃんが言ってる人間と会わせる。人間の名前は？』

リュヌ『…”草野海渡”』

メル『…へえ、変な名前やね。』