完全読み切り恋愛短編集
あ...今日もだ....
夢をみる事は、誰にだってある事だ。
もちろんその夢を寝て起きた瞬間すぐ忘れてしまう事もあれば、ずっと頭にこびりついて離れなくなる事だってあると思う。
同じ人物が何度も登場したり、夢をみる度毎度違う人物が登場したり。
夢って、可能性が無限大。
でもね、さすがにこれはおかしいと思うんだ。
[漢字]藤[/漢字][ふりがな]ふじ[/ふりがな]あいら、怒っています。
「あい姉、また同じ人を夢に見たの?大丈夫?」
「そうなの〜!ここ1ヶ月、ずーっとだよ!?」
朝起きて、洗顔して歯を磨いて。学校に行くだけとは思えないほどの時間を費やして身支度をしてからが、わたしの癒やしの朝食タイムだ。
放課後や長期休み中は部活で忙しい弟のあらたも、基本は朝練なしの野球部だから、朝だけはお母さんとわたしとあらた、3人揃ってご飯を食べられる。
だからわたしは、この時間がだいすき。
今もこうやってわたしの事を心配してくれるあらたが、愛おしくってたまらない!
「それって、どんな人なの?同級生とか?」
あらたはそう言って、パンをちぎって食べる。
普段は内気で他人に素を出さないあらたが、わたしの話題に興味を持ってくれた事を嬉しく思いつつ、あらたのその問いに答えた。
「んー...高身長でウルフっぽい青髪で....あ、顔がすっごい良い人!わたしより年上に見えるからから、同級生ではないと思うんだよねえ...」
「え?待って、それって.....」
急に食いついてきたあらた。
びっくりして「どうしたの?」と聞き返すけど、あらたは「なんでもない」と言って、また塞ぎ込んでしまった。
「あいら。バイト、今日からだったわね?」
「あ、お母さん!うん、今日からだよー」
「がんばってきてちょうだいね」と笑みを浮かべて、お母さんはハンガーにかけていた上着を羽織り、仕事へ行ってしまった。
「え...あい姉、今日からバイトなの?どこで?」
「駅前のクレープ屋だけど...あらた、さっきからなんか食い気味だね?」
「クレープ、屋......」
またも塞ぎ込んでしまったあらたを前に、わたしは[漢字]深雪[/漢字][ふりがな]みゆき[/ふりがな]と一緒に学校へ行く約束をしていた事を思い出した。
「あっ、待って。今日深雪と待ち合わせしてるんだった!ごめんあらた、戸締まりよろしくね!」
「うん...いってらっしゃい。」
[水平線]
「今日から入りました!高校3年の藤あいらです!」
「はじめまして〜!新入りちゃんよね?かわいい〜〜!!」
語尾にハートがつきそうなくらいの甘く優しい声。
勢いで抱きつかれた瞬間、フローラルな優しい匂いがわたしを包んだ。
「あっ、急にごめんなさいね。あたし、店長の[漢字]天王寺[/漢字][ふりがな]てんのうじ[/ふりがな][漢字]凛[/漢字][ふりがな]りん[/ふりがな]っていいます。気軽に凛って呼んでちょうだい。」
20代前半くらい...だろうか。
派手すぎないメイクにゆるく巻かれた青髪。ロングヘアのセンター分けがよく似合う凛...さんは、いわゆる余裕のある大人だった。
にしても店長さんがこんなに美人で若い人だとは思わなかったなあ...
面接の時は凛さんではなく別の方とだったから、凛さんとは今日始めて会った。
でも凛さん、なんだか既視感が.....
「ちょっと待ってね、機材の説明とか色々したいんだけど....」
凛さんが何か言いかけたその時、店の戸が開いた音が聞こえた。
お客さんかなと思って振り返ると、そこには深雪の同期の[漢字]翠[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]と...見たことのない、美少女が居た。
「......翠?」
「...え、あいら?」
「すーちゃんどうしたの?」
どうやら翠はわたしの存在に気づいて、びっくりした模様。
「あ、いや...ちょっと知り合いが...」
気まずそうな翠。よくわからないけど、2人はデート中なのかな?
わたしと翠は、お互いがお互いを見て見ぬフリをしながら少しずつ距離をつめていった。
「あれっ、お客さん来ちゃった?んー...一旦わたしが対応するから、もう1人の新入りの子が来たら一緒に機材説明してくね〜」
「あっ、ありがとうございます!」
凛さんは、そのまま翠とかわい子ちゃんの対応をしていた。
わたしは一応キッチン担当志望で申し込んだけど...大まかな接客も学習しとけってことかな...?
わたしは凛さんの隣で、レシートの出し方や対応方法などをメモ用紙にまとめていった。
...っていうか、わたし以外に今日からの新入りの人がいるの!?
「はいっ、かしこまりました!お呼びするので少々お待ちください!」
そのまま凛さんは厨房らしきところへ行ってしまって、わたしは追いかけることができなかった。
...キッチン担当のはずなのに、まだキッチンにすら入ってないなんて....
軽く絶望しかけたところに、翠の声がかかった。
「...あいら。紹介しとく、俺の彼女。」
そう言って、翠はわたしの前に彼女を後押しするようにした。
ええすごい...近くで見ると、この子ビジュ爆発しすぎてて、やばい、とっても。
「えっ?あ...えっと、[漢字]三松[/漢字][ふりがな]みまつ[/ふりがな][漢字]環[/漢字][ふりがな]たまき[/ふりがな]です...!」
「あ、はじめまして!藤あいらっていいます。えっと...翠とは、わたしの親友経由で知り合ったただの友達です!」
こてっと首をかしげる環ちゃん。
多分この子、危機感持ってないんだろうなあ....
雰囲気がおだやかすぎて、少し心配になるくらい。
「環、こいつはうるさいけどいいやつだ。」
「はあ?うるさいは余計よ!翠と環ちゃんは、よくここ来るの?」
「ああ。環が好きだからな。」
驚いた。
昔、あらたと深雪含めた4人でスイパラに行った時に、せっかくスイパラに来たのにスパゲッティしか食べないほどの甘いもの嫌いな翠が、クレープ屋に来た?
しかも理由が環ちゃんが好きだから?
なにそれ、翠ってば好きな人には素を出しちゃうタイプ...!?
「あんた、いいね。」
「なんだよ急に。」
翠にグッドサインを送った直後、厨房の扉が開いた音がした。
「おまたせしました〜!イチゴクレープに、抹茶クレープの2つで間違いはないかしら?」
「はいっ!いつもありがとうございます...!」
そう言って、環ちゃんはとんでもスマイルで凛さんに微笑んだ。
そして2人は軽く会釈をして、店を出ていた。
.....こりゃ、翠も可愛すぎる彼女を持って大変だなあ...
「ごめんなさいねあいらちゃん。さっきからあの子に電話してるんだけど、全然出てくれなくて...もうあと3件かけて出なかったら、先に機材説明しちゃうから少しだけ待っててちょうだい。」
わかりました!と返事をして、わたしはレジ前に立つ。
...って言っても、まだ接客できないからなんの意味もないんだけど....
なんて思っていたら、扉の開く音がした。
え、待って。わたしまだ接客できないよ....!?
とにかくいらっしゃいませだけでも...
言葉を発しようとしたその時。
わたしは衝撃に襲われた。
毛先まできれいにそめられた青髪。少しハネ気味なウルフカット。
すらりと高い高身長に、とても整った容姿。
「あーーーー!!!」
「......っ、は...?」
驚いたようにこちらを見たけど、またすんとした表情に戻ったその人。
間違いない、この人.....ここ1ヶ月、わたしの夢に出てきてた人だ!!
えっ、待って、実在したの?どういうこと?実在する人物が、夢に出てきたってこと?
やばくないそれ!?
「ちょっ、あいらちゃんどうしたの...って、あー、やっと来た!」
「講義長引いたんだから仕方ねえだろ。」
わたしの声に驚いた凛さんは再び厨房から出てきて、まるで彼を知っているかのような口調でそう言った。
「あっ、あいらちゃん。ごめんね待たせちゃって!さっき言ってたもう1人の新入りってのはこの子!ほら、挨拶して!」
え....どういうこと?
物言いが、まるできょうだい同士のようだ。
「.....天王寺[漢字]蓮[/漢字][ふりがな]れん[/ふりがな]」
待って今、天王寺って言った?
凛さんは「無愛想ね〜」と言って、彼の背中をバシバシ叩いた。
「蓮はあたしの弟!大3で、今は中学校の教育実習中なのよ。」
「...そこまで紹介しなくてもいいだろ。」
そっか...弟....
凛さんへの謎の既視感が、確信へと変わった。
それに中学の教育実習って....
あ!そっか!あらたが変に食い気味だったのは、蓮さんがあらたの中学に実習しにきてて、蓮さんのことを知ってたからってこと!?
蓮さん、見た目がかなり特徴的だから...
クレープ屋って聞いて驚いてたのも、そのせいかもしれない。
「あれ、お前...」
「え、な、なんですか」
蓮さんは急にわたしの方を向いてそう言った。
凛さんと同様、ソースっぽい感じの顔立ちで、とてもかっこいい容姿をしている。
「もしかして、中学に弟いるか?」
「え?ああ、居ますけど....」
すると突然、蓮さんはさっきの仏頂面からは想像もできないほどの柔らかい笑みで話し始めた。
「それって、あらただよな?」
「はい、藤あらたです。」
「そうか...俺、あらたのクラスの授業担当してるんだけど、休み時間とか放課後にすげー野球の話しててさ。」
「はあ....?」
何を言い出すかと思えば、あらたの話?
確かにあらたは野球が好きだし、小学校に入る前からお父さんの影響で野球が好きで、ずっと近くのチームに所属しているし、中学も野球部に入りながら野球チームもかけもちしている。
それくらい野球が好きだし、あらたなりに本気で取り組んでいるんだと思う。
でも、あらたは腕は確かなのに友達を作ろうとしないから、部内でもチーム内でも独りなのだと聞いたことがある。
だから、学校でも野球の話ができる人とあらたが関わっていたことが、少しうれしかった。
「俺もあらたも同じ野球チーム好きでさ、今度一緒に観戦行こうぜみたいなことも話してて....」
「ごめんねあいらちゃん。この子最近ずーっとこの調子なのよ。あらたくん?のことがすっごい大好きらしくてねえ...まさかあらたくんのお姉ちゃんがあいらちゃんだとは思わなかったけど。」
凛さんは、そう言いながらわたしたちを厨房に案内してくれた。
「なあお前。」
「お前じゃないです。藤あいらです。」
「あいら。今度、あらたと一緒に野球観戦してきてもいいか?」
蓮さん、教育実習者の身でそんなこと言うのどうかと思うけど.....
藤あいら、18歳。
夢に出てきた人と、まさか現実で一緒にクレープ屋でバイトするなんて思ってもみませんでした。
新しい関係が、スタートするようです。
夢をみる事は、誰にだってある事だ。
もちろんその夢を寝て起きた瞬間すぐ忘れてしまう事もあれば、ずっと頭にこびりついて離れなくなる事だってあると思う。
同じ人物が何度も登場したり、夢をみる度毎度違う人物が登場したり。
夢って、可能性が無限大。
でもね、さすがにこれはおかしいと思うんだ。
[漢字]藤[/漢字][ふりがな]ふじ[/ふりがな]あいら、怒っています。
「あい姉、また同じ人を夢に見たの?大丈夫?」
「そうなの〜!ここ1ヶ月、ずーっとだよ!?」
朝起きて、洗顔して歯を磨いて。学校に行くだけとは思えないほどの時間を費やして身支度をしてからが、わたしの癒やしの朝食タイムだ。
放課後や長期休み中は部活で忙しい弟のあらたも、基本は朝練なしの野球部だから、朝だけはお母さんとわたしとあらた、3人揃ってご飯を食べられる。
だからわたしは、この時間がだいすき。
今もこうやってわたしの事を心配してくれるあらたが、愛おしくってたまらない!
「それって、どんな人なの?同級生とか?」
あらたはそう言って、パンをちぎって食べる。
普段は内気で他人に素を出さないあらたが、わたしの話題に興味を持ってくれた事を嬉しく思いつつ、あらたのその問いに答えた。
「んー...高身長でウルフっぽい青髪で....あ、顔がすっごい良い人!わたしより年上に見えるからから、同級生ではないと思うんだよねえ...」
「え?待って、それって.....」
急に食いついてきたあらた。
びっくりして「どうしたの?」と聞き返すけど、あらたは「なんでもない」と言って、また塞ぎ込んでしまった。
「あいら。バイト、今日からだったわね?」
「あ、お母さん!うん、今日からだよー」
「がんばってきてちょうだいね」と笑みを浮かべて、お母さんはハンガーにかけていた上着を羽織り、仕事へ行ってしまった。
「え...あい姉、今日からバイトなの?どこで?」
「駅前のクレープ屋だけど...あらた、さっきからなんか食い気味だね?」
「クレープ、屋......」
またも塞ぎ込んでしまったあらたを前に、わたしは[漢字]深雪[/漢字][ふりがな]みゆき[/ふりがな]と一緒に学校へ行く約束をしていた事を思い出した。
「あっ、待って。今日深雪と待ち合わせしてるんだった!ごめんあらた、戸締まりよろしくね!」
「うん...いってらっしゃい。」
[水平線]
「今日から入りました!高校3年の藤あいらです!」
「はじめまして〜!新入りちゃんよね?かわいい〜〜!!」
語尾にハートがつきそうなくらいの甘く優しい声。
勢いで抱きつかれた瞬間、フローラルな優しい匂いがわたしを包んだ。
「あっ、急にごめんなさいね。あたし、店長の[漢字]天王寺[/漢字][ふりがな]てんのうじ[/ふりがな][漢字]凛[/漢字][ふりがな]りん[/ふりがな]っていいます。気軽に凛って呼んでちょうだい。」
20代前半くらい...だろうか。
派手すぎないメイクにゆるく巻かれた青髪。ロングヘアのセンター分けがよく似合う凛...さんは、いわゆる余裕のある大人だった。
にしても店長さんがこんなに美人で若い人だとは思わなかったなあ...
面接の時は凛さんではなく別の方とだったから、凛さんとは今日始めて会った。
でも凛さん、なんだか既視感が.....
「ちょっと待ってね、機材の説明とか色々したいんだけど....」
凛さんが何か言いかけたその時、店の戸が開いた音が聞こえた。
お客さんかなと思って振り返ると、そこには深雪の同期の[漢字]翠[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]と...見たことのない、美少女が居た。
「......翠?」
「...え、あいら?」
「すーちゃんどうしたの?」
どうやら翠はわたしの存在に気づいて、びっくりした模様。
「あ、いや...ちょっと知り合いが...」
気まずそうな翠。よくわからないけど、2人はデート中なのかな?
わたしと翠は、お互いがお互いを見て見ぬフリをしながら少しずつ距離をつめていった。
「あれっ、お客さん来ちゃった?んー...一旦わたしが対応するから、もう1人の新入りの子が来たら一緒に機材説明してくね〜」
「あっ、ありがとうございます!」
凛さんは、そのまま翠とかわい子ちゃんの対応をしていた。
わたしは一応キッチン担当志望で申し込んだけど...大まかな接客も学習しとけってことかな...?
わたしは凛さんの隣で、レシートの出し方や対応方法などをメモ用紙にまとめていった。
...っていうか、わたし以外に今日からの新入りの人がいるの!?
「はいっ、かしこまりました!お呼びするので少々お待ちください!」
そのまま凛さんは厨房らしきところへ行ってしまって、わたしは追いかけることができなかった。
...キッチン担当のはずなのに、まだキッチンにすら入ってないなんて....
軽く絶望しかけたところに、翠の声がかかった。
「...あいら。紹介しとく、俺の彼女。」
そう言って、翠はわたしの前に彼女を後押しするようにした。
ええすごい...近くで見ると、この子ビジュ爆発しすぎてて、やばい、とっても。
「えっ?あ...えっと、[漢字]三松[/漢字][ふりがな]みまつ[/ふりがな][漢字]環[/漢字][ふりがな]たまき[/ふりがな]です...!」
「あ、はじめまして!藤あいらっていいます。えっと...翠とは、わたしの親友経由で知り合ったただの友達です!」
こてっと首をかしげる環ちゃん。
多分この子、危機感持ってないんだろうなあ....
雰囲気がおだやかすぎて、少し心配になるくらい。
「環、こいつはうるさいけどいいやつだ。」
「はあ?うるさいは余計よ!翠と環ちゃんは、よくここ来るの?」
「ああ。環が好きだからな。」
驚いた。
昔、あらたと深雪含めた4人でスイパラに行った時に、せっかくスイパラに来たのにスパゲッティしか食べないほどの甘いもの嫌いな翠が、クレープ屋に来た?
しかも理由が環ちゃんが好きだから?
なにそれ、翠ってば好きな人には素を出しちゃうタイプ...!?
「あんた、いいね。」
「なんだよ急に。」
翠にグッドサインを送った直後、厨房の扉が開いた音がした。
「おまたせしました〜!イチゴクレープに、抹茶クレープの2つで間違いはないかしら?」
「はいっ!いつもありがとうございます...!」
そう言って、環ちゃんはとんでもスマイルで凛さんに微笑んだ。
そして2人は軽く会釈をして、店を出ていた。
.....こりゃ、翠も可愛すぎる彼女を持って大変だなあ...
「ごめんなさいねあいらちゃん。さっきからあの子に電話してるんだけど、全然出てくれなくて...もうあと3件かけて出なかったら、先に機材説明しちゃうから少しだけ待っててちょうだい。」
わかりました!と返事をして、わたしはレジ前に立つ。
...って言っても、まだ接客できないからなんの意味もないんだけど....
なんて思っていたら、扉の開く音がした。
え、待って。わたしまだ接客できないよ....!?
とにかくいらっしゃいませだけでも...
言葉を発しようとしたその時。
わたしは衝撃に襲われた。
毛先まできれいにそめられた青髪。少しハネ気味なウルフカット。
すらりと高い高身長に、とても整った容姿。
「あーーーー!!!」
「......っ、は...?」
驚いたようにこちらを見たけど、またすんとした表情に戻ったその人。
間違いない、この人.....ここ1ヶ月、わたしの夢に出てきてた人だ!!
えっ、待って、実在したの?どういうこと?実在する人物が、夢に出てきたってこと?
やばくないそれ!?
「ちょっ、あいらちゃんどうしたの...って、あー、やっと来た!」
「講義長引いたんだから仕方ねえだろ。」
わたしの声に驚いた凛さんは再び厨房から出てきて、まるで彼を知っているかのような口調でそう言った。
「あっ、あいらちゃん。ごめんね待たせちゃって!さっき言ってたもう1人の新入りってのはこの子!ほら、挨拶して!」
え....どういうこと?
物言いが、まるできょうだい同士のようだ。
「.....天王寺[漢字]蓮[/漢字][ふりがな]れん[/ふりがな]」
待って今、天王寺って言った?
凛さんは「無愛想ね〜」と言って、彼の背中をバシバシ叩いた。
「蓮はあたしの弟!大3で、今は中学校の教育実習中なのよ。」
「...そこまで紹介しなくてもいいだろ。」
そっか...弟....
凛さんへの謎の既視感が、確信へと変わった。
それに中学の教育実習って....
あ!そっか!あらたが変に食い気味だったのは、蓮さんがあらたの中学に実習しにきてて、蓮さんのことを知ってたからってこと!?
蓮さん、見た目がかなり特徴的だから...
クレープ屋って聞いて驚いてたのも、そのせいかもしれない。
「あれ、お前...」
「え、な、なんですか」
蓮さんは急にわたしの方を向いてそう言った。
凛さんと同様、ソースっぽい感じの顔立ちで、とてもかっこいい容姿をしている。
「もしかして、中学に弟いるか?」
「え?ああ、居ますけど....」
すると突然、蓮さんはさっきの仏頂面からは想像もできないほどの柔らかい笑みで話し始めた。
「それって、あらただよな?」
「はい、藤あらたです。」
「そうか...俺、あらたのクラスの授業担当してるんだけど、休み時間とか放課後にすげー野球の話しててさ。」
「はあ....?」
何を言い出すかと思えば、あらたの話?
確かにあらたは野球が好きだし、小学校に入る前からお父さんの影響で野球が好きで、ずっと近くのチームに所属しているし、中学も野球部に入りながら野球チームもかけもちしている。
それくらい野球が好きだし、あらたなりに本気で取り組んでいるんだと思う。
でも、あらたは腕は確かなのに友達を作ろうとしないから、部内でもチーム内でも独りなのだと聞いたことがある。
だから、学校でも野球の話ができる人とあらたが関わっていたことが、少しうれしかった。
「俺もあらたも同じ野球チーム好きでさ、今度一緒に観戦行こうぜみたいなことも話してて....」
「ごめんねあいらちゃん。この子最近ずーっとこの調子なのよ。あらたくん?のことがすっごい大好きらしくてねえ...まさかあらたくんのお姉ちゃんがあいらちゃんだとは思わなかったけど。」
凛さんは、そう言いながらわたしたちを厨房に案内してくれた。
「なあお前。」
「お前じゃないです。藤あいらです。」
「あいら。今度、あらたと一緒に野球観戦してきてもいいか?」
蓮さん、教育実習者の身でそんなこと言うのどうかと思うけど.....
藤あいら、18歳。
夢に出てきた人と、まさか現実で一緒にクレープ屋でバイトするなんて思ってもみませんでした。
新しい関係が、スタートするようです。