完全読み切り恋愛短編集
「すーちゃん、あそこをクレープ屋さん行かない?看板がすごくかわいいの...!」
「....やだ。」
「おいしそうだけどなあ...」と言って、私たちはそのまま繁華街と通り抜ける。
彼の横顔を見ると、いつもと変わらずすんとした表情をしていた。
すーちゃんは私の彼氏であり、私の唯一の幼馴染でもある。
だからこうして、学校帰りでもどんなときでも、家も近いから一心同体となっていつも1番近くにいる存在。
そんなすーちゃんは、私に対してかなり塩対応。
というか、すーちゃん自身の性格がもともとこうなのだ。
でも、私は知っている。
すーちゃんは他人からは塩で軽く見られがちだけど、実は誰より1番、人という人に対して熱い情を持って接しているということを。
塩対応なすーちゃんとは、歩いているとたまに自然と距離ができてしまう事がある。
できることなら同じように歩幅を合わせて歩んでいきたいけど、私はすーちゃんには無理してほしくない。
小さな距離感を埋めようと足を踏み出そうとした時、突然うしろから声がかかった。
「あれーっ、[漢字]翠[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]?」
ハスキーのかかった、高めの明るい声。
反射的に振り向くと、そこには思いもよらぬ人物が居た。
「....[漢字]赤坂[/漢字][ふりがな]あかさか[/ふりがな]?」
赤坂[漢字]李市[/漢字][ふりがな]りいち[/ふりがな]くん。
すーちゃんの親友だ。
あれ...でも赤坂くん、今日お昼ごろ早退してなかったっけ....
一応体調不良という名義で早退していたけど、赤坂くんの顔色を見る限りそこまで体調が悪いように見えないし、なんなら元気そう。
しかも制服を着ていて、より一層状況が掴めない。
「よー、翠。[漢字]環[/漢字][ふりがな]たまき[/ふりがな]ちゃんと放課後デートか〜?青春だなあ!!」
「.....赤坂、お前体調不良じゃないのか。」
赤坂くんの言葉を完全にスルーしたすーちゃんは、相変わらず表情を崩さない。
ぴゅうっとふいに吹いた風が私達の頬を撫で、赤坂くんはすーちゃんとは対象的な、さっぱりとした表情で、染められた金色の髪をかきあげながらこう言った。
「いや、体調不良建前で、みゆの学校が休校になったらしいから制服ディズニーしようぜってなってさ。でもチケットギリ買えなくて、あいつそのまま友達とプリ行っちまってよー。」
「....ズル休み野郎。」
なるほど、どうりで元気そうなわけだ。それに制服なのも、納得がいく。
みゆって言うのは...彼女さんかな?
「てかてか、俺今日バイトもねえしフリーだから、暇なら3人でどっか行こうぜ!ほら、あそこのクレープ屋とか!」
そう行って赤坂くんが指さしたのは、私がさっきすーちゃんに行きたいと言ったクレープ屋だった。
私はものすごく行きたいけど、すーちゃんは嫌そうだから、顔には出さないでおく。
「学校のマドンナの環ちゃんはお前だけのもんじゃねーんだよー、ねっ、環ちゃん。俺とクレープ屋行こうか。」
「.....えっ」
急に名前を呼ばれて、少し緊張が走った。
でも、言わなければならない事は言わなくてはならない。
私は意を決して、赤坂くんに伝えた。
「...あ、の。すーちゃん、今日はもうお家帰りたいみたい。だからその、今日はナシって事にできないかな...」
すーちゃん以外の人と話すことに慣れていないため、少し言葉に違和感があったかもしれない。
男の子と関わるのもあまり得意な方ではないから、余計に。
しばらくの沈黙が続いたあと、それを破ったのは、すーちゃんだった。
「....赤坂。わりいけど、環は俺の彼女。俺意外と関わらせたくないから。」
そのままぎゅっと、手を握ってきたすーちゃん。
「えっ、す、すーちゃん...!?」
「環、行くぞ。」
「く、クレープ屋さんに?いいよ、すーちゃんもう疲れてるでしょ?」
「...環といれば、疲れない。癒やされる。好き。」
驚きすぎて、声も出なかった。
すーちゃんが、私に直接、好き....?
信じられない。
「だから赤坂は、大人しく[漢字]深雪[/漢字][ふりがな]みゆき[/ふりがな]を大事にしてろ。」
そのまま私とすーちゃんは、赤坂くんを置いてけぼりにして着た道を戻り、クレープ屋さんへと足を運んだ。
「すーちゃん...ありがとう。大好き。」
「.....」
以降すーちゃんは、私に対してさっきのようなあまあま発言はしてくれなかった。
けどいいんだ。私は君のそばにいられるだけで、しあわせなんだから_____
クレープ屋にて(おまけ)
「ねえ、すーちゃん。さっき言ってた深雪...さん?って...」
実は、結構気になってた。
急にすーちゃんの口から女の子の名前が出てきて、その、びっくりしたから。
「....ああ、深雪は昔習ってた空手教室の...同期みたいなもん。別に深い関わりはねえから、安心しろ。」
なるほど...!じゃあ、赤坂くんが言ってた「みゆ」って言うのは「みゆき」の最初の2文字を取ったあだ名っていうことか!
___環が顔も知らない女の子にヤキモチを妬いていてたと気づくのは、また別のお話...
「....やだ。」
「おいしそうだけどなあ...」と言って、私たちはそのまま繁華街と通り抜ける。
彼の横顔を見ると、いつもと変わらずすんとした表情をしていた。
すーちゃんは私の彼氏であり、私の唯一の幼馴染でもある。
だからこうして、学校帰りでもどんなときでも、家も近いから一心同体となっていつも1番近くにいる存在。
そんなすーちゃんは、私に対してかなり塩対応。
というか、すーちゃん自身の性格がもともとこうなのだ。
でも、私は知っている。
すーちゃんは他人からは塩で軽く見られがちだけど、実は誰より1番、人という人に対して熱い情を持って接しているということを。
塩対応なすーちゃんとは、歩いているとたまに自然と距離ができてしまう事がある。
できることなら同じように歩幅を合わせて歩んでいきたいけど、私はすーちゃんには無理してほしくない。
小さな距離感を埋めようと足を踏み出そうとした時、突然うしろから声がかかった。
「あれーっ、[漢字]翠[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]?」
ハスキーのかかった、高めの明るい声。
反射的に振り向くと、そこには思いもよらぬ人物が居た。
「....[漢字]赤坂[/漢字][ふりがな]あかさか[/ふりがな]?」
赤坂[漢字]李市[/漢字][ふりがな]りいち[/ふりがな]くん。
すーちゃんの親友だ。
あれ...でも赤坂くん、今日お昼ごろ早退してなかったっけ....
一応体調不良という名義で早退していたけど、赤坂くんの顔色を見る限りそこまで体調が悪いように見えないし、なんなら元気そう。
しかも制服を着ていて、より一層状況が掴めない。
「よー、翠。[漢字]環[/漢字][ふりがな]たまき[/ふりがな]ちゃんと放課後デートか〜?青春だなあ!!」
「.....赤坂、お前体調不良じゃないのか。」
赤坂くんの言葉を完全にスルーしたすーちゃんは、相変わらず表情を崩さない。
ぴゅうっとふいに吹いた風が私達の頬を撫で、赤坂くんはすーちゃんとは対象的な、さっぱりとした表情で、染められた金色の髪をかきあげながらこう言った。
「いや、体調不良建前で、みゆの学校が休校になったらしいから制服ディズニーしようぜってなってさ。でもチケットギリ買えなくて、あいつそのまま友達とプリ行っちまってよー。」
「....ズル休み野郎。」
なるほど、どうりで元気そうなわけだ。それに制服なのも、納得がいく。
みゆって言うのは...彼女さんかな?
「てかてか、俺今日バイトもねえしフリーだから、暇なら3人でどっか行こうぜ!ほら、あそこのクレープ屋とか!」
そう行って赤坂くんが指さしたのは、私がさっきすーちゃんに行きたいと言ったクレープ屋だった。
私はものすごく行きたいけど、すーちゃんは嫌そうだから、顔には出さないでおく。
「学校のマドンナの環ちゃんはお前だけのもんじゃねーんだよー、ねっ、環ちゃん。俺とクレープ屋行こうか。」
「.....えっ」
急に名前を呼ばれて、少し緊張が走った。
でも、言わなければならない事は言わなくてはならない。
私は意を決して、赤坂くんに伝えた。
「...あ、の。すーちゃん、今日はもうお家帰りたいみたい。だからその、今日はナシって事にできないかな...」
すーちゃん以外の人と話すことに慣れていないため、少し言葉に違和感があったかもしれない。
男の子と関わるのもあまり得意な方ではないから、余計に。
しばらくの沈黙が続いたあと、それを破ったのは、すーちゃんだった。
「....赤坂。わりいけど、環は俺の彼女。俺意外と関わらせたくないから。」
そのままぎゅっと、手を握ってきたすーちゃん。
「えっ、す、すーちゃん...!?」
「環、行くぞ。」
「く、クレープ屋さんに?いいよ、すーちゃんもう疲れてるでしょ?」
「...環といれば、疲れない。癒やされる。好き。」
驚きすぎて、声も出なかった。
すーちゃんが、私に直接、好き....?
信じられない。
「だから赤坂は、大人しく[漢字]深雪[/漢字][ふりがな]みゆき[/ふりがな]を大事にしてろ。」
そのまま私とすーちゃんは、赤坂くんを置いてけぼりにして着た道を戻り、クレープ屋さんへと足を運んだ。
「すーちゃん...ありがとう。大好き。」
「.....」
以降すーちゃんは、私に対してさっきのようなあまあま発言はしてくれなかった。
けどいいんだ。私は君のそばにいられるだけで、しあわせなんだから_____
クレープ屋にて(おまけ)
「ねえ、すーちゃん。さっき言ってた深雪...さん?って...」
実は、結構気になってた。
急にすーちゃんの口から女の子の名前が出てきて、その、びっくりしたから。
「....ああ、深雪は昔習ってた空手教室の...同期みたいなもん。別に深い関わりはねえから、安心しろ。」
なるほど...!じゃあ、赤坂くんが言ってた「みゆ」って言うのは「みゆき」の最初の2文字を取ったあだ名っていうことか!
___環が顔も知らない女の子にヤキモチを妬いていてたと気づくのは、また別のお話...