文字サイズ変更

完全読み切り恋愛短編集

#3

塩対応なあまあま彼氏。

「すーちゃん、あそこをクレープ屋さん行かない?看板がすごくかわいいの...!」
「....やだ。」

「おいしそうだけどなあ...」と言って、私たちはそのまま繁華街と通り抜ける。
彼の横顔を見ると、いつもと変わらずすんとした表情をしていた。

すーちゃんは私の彼氏であり、私の唯一の幼馴染でもある。
だからこうして、学校帰りでもどんなときでも、家も近いから一心同体となっていつも1番近くにいる存在。

そんなすーちゃんは、私に対してかなり塩対応。
というか、すーちゃん自身の性格がもともとこうなのだ。

でも、私は知っている。
すーちゃんは他人からは塩で軽く見られがちだけど、実は誰より1番、人という人に対して熱い情を持って接しているということを。

塩対応なすーちゃんとは、歩いているとたまに自然と距離ができてしまう事がある。
できることなら同じように歩幅を合わせて歩んでいきたいけど、私はすーちゃんには無理してほしくない。

小さな距離感を埋めようと足を踏み出そうとした時、突然うしろから声がかかった。

「あれーっ、[漢字]翠[/漢字][ふりがな]すい[/ふりがな]?」

ハスキーのかかった、高めの明るい声。
反射的に振り向くと、そこには思いもよらぬ人物が居た。

「....[漢字]赤坂[/漢字][ふりがな]あかさか[/ふりがな]?」

赤坂[漢字]李市[/漢字][ふりがな]りいち[/ふりがな]くん。
すーちゃんの親友だ。

あれ...でも赤坂くん、今日お昼ごろ早退してなかったっけ....
一応体調不良という名義で早退していたけど、赤坂くんの顔色を見る限りそこまで体調が悪いように見えないし、なんなら元気そう。
しかも制服を着ていて、より一層状況が掴めない。

「よー、翠。[漢字]環[/漢字][ふりがな]たまき[/ふりがな]ちゃんと放課後デートか〜?青春だなあ!!」
「.....赤坂、お前体調不良じゃないのか。」

赤坂くんの言葉を完全にスルーしたすーちゃんは、相変わらず表情を崩さない。

ぴゅうっとふいに吹いた風が私達の頬を撫で、赤坂くんはすーちゃんとは対象的な、さっぱりとした表情で、染められた金色の髪をかきあげながらこう言った。

「いや、体調不良建前で、みゆの学校が休校になったらしいから制服ディズニーしようぜってなってさ。でもチケットギリ買えなくて、あいつそのまま友達とプリ行っちまってよー。」
「....ズル休み野郎。」

なるほど、どうりで元気そうなわけだ。それに制服なのも、納得がいく。
みゆって言うのは...彼女さんかな?

「てかてか、俺今日バイトもねえしフリーだから、暇なら3人でどっか行こうぜ!ほら、あそこのクレープ屋とか!」

そう行って赤坂くんが指さしたのは、私がさっきすーちゃんに行きたいと言ったクレープ屋だった。

私はものすごく行きたいけど、すーちゃんは嫌そうだから、顔には出さないでおく。

「学校のマドンナの環ちゃんはお前だけのもんじゃねーんだよー、ねっ、環ちゃん。俺とクレープ屋行こうか。」
「.....えっ」

急に名前を呼ばれて、少し緊張が走った。
でも、言わなければならない事は言わなくてはならない。

私は意を決して、赤坂くんに伝えた。

「...あ、の。すーちゃん、今日はもうお家帰りたいみたい。だからその、今日はナシって事にできないかな...」

すーちゃん以外の人と話すことに慣れていないため、少し言葉に違和感があったかもしれない。
男の子と関わるのもあまり得意な方ではないから、余計に。

しばらくの沈黙が続いたあと、それを破ったのは、すーちゃんだった。

「....赤坂。わりいけど、環は俺の彼女。俺意外と関わらせたくないから。」

そのままぎゅっと、手を握ってきたすーちゃん。

「えっ、す、すーちゃん...!?」
「環、行くぞ。」

「く、クレープ屋さんに?いいよ、すーちゃんもう疲れてるでしょ?」
「...環といれば、疲れない。癒やされる。好き。」

驚きすぎて、声も出なかった。
すーちゃんが、私に直接、好き....?

信じられない。

「だから赤坂は、大人しく[漢字]深雪[/漢字][ふりがな]みゆき[/ふりがな]を大事にしてろ。」

そのまま私とすーちゃんは、赤坂くんを置いてけぼりにして着た道を戻り、クレープ屋さんへと足を運んだ。

「すーちゃん...ありがとう。大好き。」
「.....」

以降すーちゃんは、私に対してさっきのようなあまあま発言はしてくれなかった。
けどいいんだ。私は君のそばにいられるだけで、しあわせなんだから_____



クレープ屋にて(おまけ)

「ねえ、すーちゃん。さっき言ってた深雪...さん?って...」

実は、結構気になってた。
急にすーちゃんの口から女の子の名前が出てきて、その、びっくりしたから。

「....ああ、深雪は昔習ってた空手教室の...同期みたいなもん。別に深い関わりはねえから、安心しろ。」

なるほど...!じゃあ、赤坂くんが言ってた「みゆ」って言うのは「みゆき」の最初の2文字を取ったあだ名っていうことか!

___環が顔も知らない女の子にヤキモチを妬いていてたと気づくのは、また別のお話...

作者メッセージ

お久しぶりです、なろっこさっきーです。許してくださいサークルとか講義とかで忙しかったんです。
最近寒いですね...もう温泉の季節ですか。おんせんめぐりといつか行きたいな〜🤩♡♡
今回の読み切りは、環・翠のお話でした!今後は、お話の中で登場した李市や深雪の読み切りも書いていきたいなーしてます;;💖

2025/11/21 20:31

なろっこさっきー ID:≫ ciA7iEWTu1mtk
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 3

コメント
[4]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL