完全読み切り恋愛短編集
「おいことは、起きろ。」
そう言って、気持ちよさそうにすやすやと眠ることはの体を少し揺さぶる。
案の定というかなんというか、どれだけ揺さぶってもびくともしない。
多分、特に今日なんかは外が快晴だから、窓から差し込む日光と布団を包んで寝ているのだろうからさぞ目をあけたくないのだろう。
そんなことはも俺も、これ以上こんな事に時間を食っているとホームルームに遅刻する。
俺は高3だから、ただえさえ低い内申をこれ以上下げるわけにはいかない為、遅刻なんて禁物なのだ。
「おいことは....」
もはやここまでしても起きないなんて、相当重症なのではないか...?
そして俺は、最終手段に出る。
「今日の朝飯ホットケーキだったけど、いらねえのか?俺が食っちまうぞー。」
と言った途端、俺の顔面がふわりとしたもので埋まった。
「むり!りゅーちゃんにホットケーキ渡さないもーん。」
その正体はことはがさっきまで寝具に使っていた毛布で、多分ことはが勢いよく起床した際に俺に投げつけたのだ。
本当、俺には一切容赦ないな。
そう言った後すぐ軽い足取りでリビングへ通じる階段を降りていくことはを前に、俺は頭を抱える。
「.....あーもう、なんであんなにかわいいんだよ...」
[水平線]
「んー!おかーさんこれおいしいー!」
ほっぺをおさえて美味しそうにホットケーキを口にすることは。
その動作ひとつひとつがまるで小動物のようで、目を離せない。
そんなところも、俺は愛おしく感じてしまう。
「あれー、りゅーちゃん食べないの?おいしいよー?」
「....あ、ああ、食べる。うまいな。」
「[漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな]。[漢字]琉[/漢字][ふりがな]りゅう[/ふりがな]くんはもう3年生だから、勉強で疲れてるのよ。あんまり気を悪くしちゃだめよ。早く食べちゃいなさい。」
「そうなの?でもりゅーちゃん。ホットケーキおいしいんだから残しちゃだめだよー?」
ことはのお母さんはそう言ってくれるけど、正直今はまだ勉強に力を入れていないからあまり疲れてない。むしろ、ここに来るたびにかわいいことはと会えるのだから、もはや疲れは吹っ飛ぶまである。
もちろんホットケーキも、俺の恩人の、ましてやことはのお母さんお手製の食べ物を残すなんて事するわけがない。
まあでも、そんなの死んでも口にするつもりはないけど...
ちらりとことはの方を見ると、ことはホットケーキではなくココアに夢中だった。
ココアの液体に浮く、複数の焦げ茶色の塊。多分これは溶けきれなかったココアのもとだから、体に危ういものでもなんでもない。
それでもことははその塊を一粒ずつ丁寧に別の皿に取り分けていた。
これには思わず、俺も吹き出てしまう。
「....ことは、何してんの.....」
笑いを必死に堪えて、できるだけことはと顔を合わせずにそう言った。
「え?この黒いの出してるの!これ、何の味すると思う?」
....何の味?
質問に質問を返されて俺は少し戸惑ったが、思った事をそのまま答えた。
「...ココアパウダー?」
「ううんー、全然ちがーう!これね、とんかつソースの味がするんだよ。」
だめだ、ことはは本当に何を言っているんだ。
面白すぎて最初は笑ったが、徐々に「本当にとんかつソースの味がするのか?」と心配が勝ってくる。
「...なあそれ、マジでとんかつソースの味すんの...?」
「え?当たり前だよー、りゅーちゃんも食べてみる?」
いや、食べるってほどの量はないし...
「ほら、ことはがちょっとだけ分けたげる!あーんしてー!」
そう言って、ことはは本当に数量の、味がわかるのかも怪しいレベルのものをスプーンにのせて俺の口元に近づけてくる。
どういう状況なのかが全く把握できなかったせいで、俺は反射的にことはと目を合わせてしまう。
「ほらほらー。」
勢いに任せて、ことはが差し出してきたスプーンをくわえる。
そして肝心の、味はどうだったかというと....
「とんかつソースの味だったでしょー?」
「.....いや、ガッツリ溶けきれなかったココアパウダーの味しかしねえよ!笑笑」
俺は頭を抱えた。
「ええー?ぜーったいとんかつソースだよ!そうだりゅーちゃん!これいっぱい増やして、一緒にとんかつソースかけちゃわない?」
俺の好きな人、高校1年生の[漢字]増田[/漢字][ふりがな]ますだ[/ふりがな][漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな]は、今日も今日とてことはワールド前回なようです。
「....いつかな。」
「もー!いつかじゃなくて、今!でしょー?」
この太陽みたいな彼女が、いつかじゃなくて、今!俺だけのお姫様になってくれているような気がして、思わず大きな笑みをこぼした。
そう言って、気持ちよさそうにすやすやと眠ることはの体を少し揺さぶる。
案の定というかなんというか、どれだけ揺さぶってもびくともしない。
多分、特に今日なんかは外が快晴だから、窓から差し込む日光と布団を包んで寝ているのだろうからさぞ目をあけたくないのだろう。
そんなことはも俺も、これ以上こんな事に時間を食っているとホームルームに遅刻する。
俺は高3だから、ただえさえ低い内申をこれ以上下げるわけにはいかない為、遅刻なんて禁物なのだ。
「おいことは....」
もはやここまでしても起きないなんて、相当重症なのではないか...?
そして俺は、最終手段に出る。
「今日の朝飯ホットケーキだったけど、いらねえのか?俺が食っちまうぞー。」
と言った途端、俺の顔面がふわりとしたもので埋まった。
「むり!りゅーちゃんにホットケーキ渡さないもーん。」
その正体はことはがさっきまで寝具に使っていた毛布で、多分ことはが勢いよく起床した際に俺に投げつけたのだ。
本当、俺には一切容赦ないな。
そう言った後すぐ軽い足取りでリビングへ通じる階段を降りていくことはを前に、俺は頭を抱える。
「.....あーもう、なんであんなにかわいいんだよ...」
[水平線]
「んー!おかーさんこれおいしいー!」
ほっぺをおさえて美味しそうにホットケーキを口にすることは。
その動作ひとつひとつがまるで小動物のようで、目を離せない。
そんなところも、俺は愛おしく感じてしまう。
「あれー、りゅーちゃん食べないの?おいしいよー?」
「....あ、ああ、食べる。うまいな。」
「[漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな]。[漢字]琉[/漢字][ふりがな]りゅう[/ふりがな]くんはもう3年生だから、勉強で疲れてるのよ。あんまり気を悪くしちゃだめよ。早く食べちゃいなさい。」
「そうなの?でもりゅーちゃん。ホットケーキおいしいんだから残しちゃだめだよー?」
ことはのお母さんはそう言ってくれるけど、正直今はまだ勉強に力を入れていないからあまり疲れてない。むしろ、ここに来るたびにかわいいことはと会えるのだから、もはや疲れは吹っ飛ぶまである。
もちろんホットケーキも、俺の恩人の、ましてやことはのお母さんお手製の食べ物を残すなんて事するわけがない。
まあでも、そんなの死んでも口にするつもりはないけど...
ちらりとことはの方を見ると、ことはホットケーキではなくココアに夢中だった。
ココアの液体に浮く、複数の焦げ茶色の塊。多分これは溶けきれなかったココアのもとだから、体に危ういものでもなんでもない。
それでもことははその塊を一粒ずつ丁寧に別の皿に取り分けていた。
これには思わず、俺も吹き出てしまう。
「....ことは、何してんの.....」
笑いを必死に堪えて、できるだけことはと顔を合わせずにそう言った。
「え?この黒いの出してるの!これ、何の味すると思う?」
....何の味?
質問に質問を返されて俺は少し戸惑ったが、思った事をそのまま答えた。
「...ココアパウダー?」
「ううんー、全然ちがーう!これね、とんかつソースの味がするんだよ。」
だめだ、ことはは本当に何を言っているんだ。
面白すぎて最初は笑ったが、徐々に「本当にとんかつソースの味がするのか?」と心配が勝ってくる。
「...なあそれ、マジでとんかつソースの味すんの...?」
「え?当たり前だよー、りゅーちゃんも食べてみる?」
いや、食べるってほどの量はないし...
「ほら、ことはがちょっとだけ分けたげる!あーんしてー!」
そう言って、ことはは本当に数量の、味がわかるのかも怪しいレベルのものをスプーンにのせて俺の口元に近づけてくる。
どういう状況なのかが全く把握できなかったせいで、俺は反射的にことはと目を合わせてしまう。
「ほらほらー。」
勢いに任せて、ことはが差し出してきたスプーンをくわえる。
そして肝心の、味はどうだったかというと....
「とんかつソースの味だったでしょー?」
「.....いや、ガッツリ溶けきれなかったココアパウダーの味しかしねえよ!笑笑」
俺は頭を抱えた。
「ええー?ぜーったいとんかつソースだよ!そうだりゅーちゃん!これいっぱい増やして、一緒にとんかつソースかけちゃわない?」
俺の好きな人、高校1年生の[漢字]増田[/漢字][ふりがな]ますだ[/ふりがな][漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな]は、今日も今日とてことはワールド前回なようです。
「....いつかな。」
「もー!いつかじゃなくて、今!でしょー?」
この太陽みたいな彼女が、いつかじゃなくて、今!俺だけのお姫様になってくれているような気がして、思わず大きな笑みをこぼした。