完全読み切り恋愛短編集
______小さい頃、わたしに希望を与えてくれた彼ともう一度会うことが、わたしの夢。
真っ白な塀に囲われた校舎に、真っ白な制服を身にまとってバルコニーで1人ミニお茶会を開く。
これがわたしの、学校生活唯一の楽しみだ。
お茶会用に毎回準備する星型のクッキーは、わたしの手作り。
わたしは雪や星がすごく好きだから、毎度それをモチーフにしたお菓子を自分で作っている。
わりかし目立つ見た目のわたしは校内でもかなり名が広まっているらしく、あまり好きなことを堂々とできない。
だからこそ、この目立たないバルコニーで1人で好きな事をしている時間が好き。彼を待つこの時間が好き。
すると、小さな声ではあるけどかすかに話し声が聞こえてくる。
「わっ、みて。[漢字]月城[/漢字][ふりがな]つきしろ[/ふりがな]さんだ!」
「ほんとだー!今日も美しいね...さすが高嶺の花」
「俺も話してみたいなー」
その声にドキッとしてしまい、思わずチュールのついた大きな帽子をさらに深く被った。
...多分その会話は、わたしのことだよね....
注目されるのが苦手だから、いつもひとけの薄いバルコニーまで足を運んでいるけど、これでは教室にいるのとあまり変わらない。
お茶会を開く場所、そろそろ変えたほうがいいのかなあ...なんて思ってここ数日校内散策をしているけど、なかなか良い場所が見つからないのが事実。
でもむしろ注目されていた方が、"彼"に見つけてもらいやすいのかなーなんて思ったり...
ぼうっとしながらお茶を一口___しようとしたら、突如声がかかった。
「[漢字]愛瑠[/漢字][ふりがな]える[/ふりがな]ちゃん。」
「.....えっ?」
その声の持ち主へ視線を移すと、そこには懐かしい人物の姿があって。
「約束、果たしたよ。」
愛らしく笑う彼。
それはわたしが最初で最後に愛した、世界で1番愛おしい人だった。
[水平線]
あれはたしか、小学5年生の冬。
家庭環境が悪く親も放任主義だったわたしは、いつもあたりが真っ暗になるまで1人ぼっちで公園のブランコを漕いでいた。
お母さんは仕事で帰ってこない。お父さんは今どうしているか分からない。顔も知らないお兄ちゃんは幼い頃に亡くした。
こんなわたしだったせいか、クラスメイトや先生までもがわたしを遠巻きにしていた事をよく覚えている。
お母さんは仕事に行ったきり家に帰ってきておらず、わたしは11歳にして、既に1人暮らしの生活をスタートしていた。
_____わたしって、いらない子なのかな...
ブランコを漕ぎながら思うのはそれ1つに尽きて。
涙すらも溢れ出ることはなかった。
『キミ、1人?』
明るい金髪が真っ暗な背景でもよく映える...太陽みたい。
それが彼の、第一印象だった。
『あなた...だあれ?怖い人?』
『違う違う。キミが1人でブランコを漕いでるから、気になっちゃって。』
変な人...
彼はそう言うと、わたしの隣のブランコへ腰掛けた。
『お母さんやお父さんが心配するよ。帰らなくていいの?』
『....お母さん帰ってこないもん。お父さんもお兄ちゃんも...きっともう戻ってこない....』
『ふーん』
そのまま、しばらく2人でブランコを漕ぎ続けた。
『あ、星だ。この街は街頭が少ないから、星がよく映えるね。』
『......星?』
彼はそう行って、夜空に浮かぶ星々を指差す。
今まで下を向いてブランコを漕いでいたから...気づかなかった。
真っ白で月みたいにキラキラ輝く星、赤くて太陽みたいにキラキラ輝く星。他にも青く輝く星や、黄色みを帯びた星、少し黒みがかった星などが見られた。
特に、赤い太陽みたいな星はまるでお昼間に輝く太陽と同じくらい、キラキラと輝いて見える。
こんな世界、初めて知った。すごくきれい.....
『星は、初めて見る?』
『...うん。こんなにきれいなの、知らなかった....』
彼を横目でちらっと見ると、そこにはとても美しい横顔があった。
彼もこの星々と同じくらい、キラキラと輝いている。
『見て、川に反射した星はもっときれい。』
『....うわあ......!』
本当に、未知の世界だった。
薄暗い群青色の川には、真っ白に光り輝く星たちの姿がある。
言葉を失うくらいに美しかった。
そのままわたしは彼と、星を眺め続けた。
それ以降言葉は交わしていないし、お互いに目を合わせることもない。
でもその無音さは、わたしに心地良さを与えてくる。
なんだか愛おしくなってしまい、時間が止まればいいのに、なんてさえ思ってしまった。
この人、全然わたしから離れない。ずっとそばにいてくれる。
これからも、ずっと____?
すると彼が、「あっ」と声を上げた。
『雪だ!』
白くてふわふわしたものが空から舞い降りてくる。
そっと触れると体温ですぐに溶けてしまって、とても儚く感じた。
『雪って、綺麗だよね。ずっと見てたい。』
『うん、とってもきれい.....』
多分生まれて初めて、雪をこの目で直接見た。
白い...ふわふわしてる...きれい.....
彼はわたしに、わたしの全く知らない新しい世界を教えてくれる。
これからも彼と一緒にいたら、もしかしたらもっとすごい景色を見せてくれるのかも。
ずっとずっと、隣に居たい____
『あ...ボク、そろそろ行かなくっちゃ。またね。』
そう言って彼はブランコから立ち上がり、その場を立ち去ろうとする。
そんな、待って。行かないで、まだそばにいて_____
『まって.....!』
『...どうしたの?』
わたしは初めて、誰かを求めた。
彼に対しては全く嫌悪感が芽生えず、むしろ彼と過ごす時間はとても心地良い。それにもっと、彼ともっと知らない世界や景色を見続けたいんだ。
だからこそ手放したくない。
お母さんもお父さんも...お兄ちゃんだって、もうわたしを見てくれることはない。
でもキミは...キミだけは、わたしから離れないで.......
『.....わたしから、離れないで.....』
思わず彼の服の裾をぎゅっとつかんでしまった。
それと同時に、大粒の雫が頬をつたる。
何かと思いそれを拭うと、それはわたしの瞳から溢れ出た涙で。
『....大丈夫だからね。』
彼はわたしをぎゅっと抱きしめて、安堵の言葉を投げかける。
好き......
気がつけばわたしは、彼のことを好きになっていた。
『ボク、今日都会に帰るんだ。ここにボクの居場所はない。だからね、キミのそばに居続けることはできないんだ。』
『やだ、そばにいて....』
泣きじゃくるわたしをなだめるように、彼はわたしの背中を何度もさすってくれた。
この時間が永遠に続けばいいのに。今日でさよならなんて、できない。
『...ボクは、ここには居られない。』
『.......』
だめ、だめ。これ以上を彼を困らせるな、わたし。
彼から離れようとした、その時だった。
_____『だから、名前を教えて。』
彼は力強く、わたしを抱きしめた。
ぎゅっと、ぎゅっと...もう二度と、離さないとでも言わないばかりに。
『える...[漢字]月城[/漢字][ふりがな]つきしろ[/ふりがな][漢字]愛瑠[/漢字][ふりがな]える[/ふりがな]......』
『...今度はボクから会いに行くって約束する。だから、またね。愛瑠ちゃん____』
[水平線]
なんで...なんで、彼が、ここにいるの....?
身長もすごく伸びて、体格も随分とがっしりした気がする。
なのにあの頃から彼のまとう雰囲気、太陽のように明るい金髪、優しい瞳は全くと言っていいほど変わっていなかった。
「どうして....」
「今日、転校してきたんだ。校内散策をしていたらたまたま...愛瑠ちゃんを見つけちゃって。」
あの日からわたしが彼に対する想いは、日に日に増していくばかりだった。
声を聞きたい、姿を見たい、そばに駆けつけたい。
身の回りに頼れる人が1人もいない環境だったので、無力なわたしは何もできず結局地元から少し離れた都会に近い高校に入学することしかできなかった。
それが今、ようやく報われたような気がする。
「わたし、ずっとずっと、会いたかったの.....」
2度目に流す涙は、また彼の前だった。
あの時と変わらない___彼はわたしの頭をぽんと撫でてくれる。
「...ごめんね。あの日、ちゃんと家には帰れた?今は元気してる?」
「うん、うん。ちゃんと帰ったよ、元気だよ....」
ぎゅっと彼に抱きついた。
それに応えるように、彼もぎゅっとわたしを力強く抱きしめる。
もうこの温もりを二度と...手放したくないよ....
「こんなに長い間待たせちゃって、ごめんね。もう...高校生になっちゃったもんね。」
「....あなたはわたしを、こんなに待たせたんだもん。だからしばらくはぎゅってしてても...いい?」
彼はこくりと頷いて、優しくわたしの頬を撫でてくれた。
途端、周囲から黄色い歓声が上がった。
「あれ、転校生のイケメンくんだよね!」
「なんで月城さんと抱き合ってるの!?」
「やばい、神々しすぎる.....」
でも今は、周りの喧騒は聞こえない。
わたしに響くのは彼の言葉だけだった。
「....僕、あの日から後悔していることが1つあるんだ。」
「なあに?」
わたしよりも彼の身長は10cmほど高いため、わたしはぐっと彼の顔を見上げた。
「愛瑠ちゃんに名前を教えてもらったのに、僕は名乗ることを忘れていたんだ。」
「あ.....」
そういえば、そうだ。
今まで全く持って気にならなかったけど、わたしは彼の名前を知らない。
「僕は、太陽。[漢字]日野[/漢字][ふりがな]ひの[/ふりがな][漢字]太陽[/漢字][ふりがな]たいよう[/ふりがな]だよ。」
その名前を聞いた瞬間、自分の中で少しずつピースが埋まっていくような感覚を覚えた。
わたしが初めて彼に抱いた印象は、真っ暗闇にも関わらず光り輝く太陽のような金髪の男の子。
彼と見上げた夜空に1番キラキラと輝いていた星は、赤い太陽のような一等星。
そして彼の名は、日野太陽。
「やっと、伝えられた。」
彼__いや、太陽くんは、これでもかというくらいに微笑んでわたしを愛らしく見つめてくれた。
太陽...素敵な名前。
明るくて、優しくて眩しくて。キラキラ輝く彼にぴったりの名前だ。
「わたし、太陽くんがずっとずっと、好きだったよ....」
そう言って太陽くんの瞳を見つめると、にこりとはにかんでそっと頭を撫でてくれる。
「これからは僕がずっとそばにいる、僕が幸せにする。」
ずっと、好きで好きでたまらなかった。愛してやまなかった。
お互いにお互いの気持はわかり合っていたから、これが告白したことになるのかは分からないけど。
太陽くん、約束果たしてくれた。
太陽くん、これからずっとそばにいてくれるんだって。
太陽くん、わたしを幸せにしてくれるんだって。
わたし一生、太陽くんを信じるよ。
「愛瑠ちゃん、好きだよ。僕と______
真っ白な塀に囲われた校舎に、真っ白な制服を身にまとってバルコニーで1人ミニお茶会を開く。
これがわたしの、学校生活唯一の楽しみだ。
お茶会用に毎回準備する星型のクッキーは、わたしの手作り。
わたしは雪や星がすごく好きだから、毎度それをモチーフにしたお菓子を自分で作っている。
わりかし目立つ見た目のわたしは校内でもかなり名が広まっているらしく、あまり好きなことを堂々とできない。
だからこそ、この目立たないバルコニーで1人で好きな事をしている時間が好き。彼を待つこの時間が好き。
すると、小さな声ではあるけどかすかに話し声が聞こえてくる。
「わっ、みて。[漢字]月城[/漢字][ふりがな]つきしろ[/ふりがな]さんだ!」
「ほんとだー!今日も美しいね...さすが高嶺の花」
「俺も話してみたいなー」
その声にドキッとしてしまい、思わずチュールのついた大きな帽子をさらに深く被った。
...多分その会話は、わたしのことだよね....
注目されるのが苦手だから、いつもひとけの薄いバルコニーまで足を運んでいるけど、これでは教室にいるのとあまり変わらない。
お茶会を開く場所、そろそろ変えたほうがいいのかなあ...なんて思ってここ数日校内散策をしているけど、なかなか良い場所が見つからないのが事実。
でもむしろ注目されていた方が、"彼"に見つけてもらいやすいのかなーなんて思ったり...
ぼうっとしながらお茶を一口___しようとしたら、突如声がかかった。
「[漢字]愛瑠[/漢字][ふりがな]える[/ふりがな]ちゃん。」
「.....えっ?」
その声の持ち主へ視線を移すと、そこには懐かしい人物の姿があって。
「約束、果たしたよ。」
愛らしく笑う彼。
それはわたしが最初で最後に愛した、世界で1番愛おしい人だった。
[水平線]
あれはたしか、小学5年生の冬。
家庭環境が悪く親も放任主義だったわたしは、いつもあたりが真っ暗になるまで1人ぼっちで公園のブランコを漕いでいた。
お母さんは仕事で帰ってこない。お父さんは今どうしているか分からない。顔も知らないお兄ちゃんは幼い頃に亡くした。
こんなわたしだったせいか、クラスメイトや先生までもがわたしを遠巻きにしていた事をよく覚えている。
お母さんは仕事に行ったきり家に帰ってきておらず、わたしは11歳にして、既に1人暮らしの生活をスタートしていた。
_____わたしって、いらない子なのかな...
ブランコを漕ぎながら思うのはそれ1つに尽きて。
涙すらも溢れ出ることはなかった。
『キミ、1人?』
明るい金髪が真っ暗な背景でもよく映える...太陽みたい。
それが彼の、第一印象だった。
『あなた...だあれ?怖い人?』
『違う違う。キミが1人でブランコを漕いでるから、気になっちゃって。』
変な人...
彼はそう言うと、わたしの隣のブランコへ腰掛けた。
『お母さんやお父さんが心配するよ。帰らなくていいの?』
『....お母さん帰ってこないもん。お父さんもお兄ちゃんも...きっともう戻ってこない....』
『ふーん』
そのまま、しばらく2人でブランコを漕ぎ続けた。
『あ、星だ。この街は街頭が少ないから、星がよく映えるね。』
『......星?』
彼はそう行って、夜空に浮かぶ星々を指差す。
今まで下を向いてブランコを漕いでいたから...気づかなかった。
真っ白で月みたいにキラキラ輝く星、赤くて太陽みたいにキラキラ輝く星。他にも青く輝く星や、黄色みを帯びた星、少し黒みがかった星などが見られた。
特に、赤い太陽みたいな星はまるでお昼間に輝く太陽と同じくらい、キラキラと輝いて見える。
こんな世界、初めて知った。すごくきれい.....
『星は、初めて見る?』
『...うん。こんなにきれいなの、知らなかった....』
彼を横目でちらっと見ると、そこにはとても美しい横顔があった。
彼もこの星々と同じくらい、キラキラと輝いている。
『見て、川に反射した星はもっときれい。』
『....うわあ......!』
本当に、未知の世界だった。
薄暗い群青色の川には、真っ白に光り輝く星たちの姿がある。
言葉を失うくらいに美しかった。
そのままわたしは彼と、星を眺め続けた。
それ以降言葉は交わしていないし、お互いに目を合わせることもない。
でもその無音さは、わたしに心地良さを与えてくる。
なんだか愛おしくなってしまい、時間が止まればいいのに、なんてさえ思ってしまった。
この人、全然わたしから離れない。ずっとそばにいてくれる。
これからも、ずっと____?
すると彼が、「あっ」と声を上げた。
『雪だ!』
白くてふわふわしたものが空から舞い降りてくる。
そっと触れると体温ですぐに溶けてしまって、とても儚く感じた。
『雪って、綺麗だよね。ずっと見てたい。』
『うん、とってもきれい.....』
多分生まれて初めて、雪をこの目で直接見た。
白い...ふわふわしてる...きれい.....
彼はわたしに、わたしの全く知らない新しい世界を教えてくれる。
これからも彼と一緒にいたら、もしかしたらもっとすごい景色を見せてくれるのかも。
ずっとずっと、隣に居たい____
『あ...ボク、そろそろ行かなくっちゃ。またね。』
そう言って彼はブランコから立ち上がり、その場を立ち去ろうとする。
そんな、待って。行かないで、まだそばにいて_____
『まって.....!』
『...どうしたの?』
わたしは初めて、誰かを求めた。
彼に対しては全く嫌悪感が芽生えず、むしろ彼と過ごす時間はとても心地良い。それにもっと、彼ともっと知らない世界や景色を見続けたいんだ。
だからこそ手放したくない。
お母さんもお父さんも...お兄ちゃんだって、もうわたしを見てくれることはない。
でもキミは...キミだけは、わたしから離れないで.......
『.....わたしから、離れないで.....』
思わず彼の服の裾をぎゅっとつかんでしまった。
それと同時に、大粒の雫が頬をつたる。
何かと思いそれを拭うと、それはわたしの瞳から溢れ出た涙で。
『....大丈夫だからね。』
彼はわたしをぎゅっと抱きしめて、安堵の言葉を投げかける。
好き......
気がつけばわたしは、彼のことを好きになっていた。
『ボク、今日都会に帰るんだ。ここにボクの居場所はない。だからね、キミのそばに居続けることはできないんだ。』
『やだ、そばにいて....』
泣きじゃくるわたしをなだめるように、彼はわたしの背中を何度もさすってくれた。
この時間が永遠に続けばいいのに。今日でさよならなんて、できない。
『...ボクは、ここには居られない。』
『.......』
だめ、だめ。これ以上を彼を困らせるな、わたし。
彼から離れようとした、その時だった。
_____『だから、名前を教えて。』
彼は力強く、わたしを抱きしめた。
ぎゅっと、ぎゅっと...もう二度と、離さないとでも言わないばかりに。
『える...[漢字]月城[/漢字][ふりがな]つきしろ[/ふりがな][漢字]愛瑠[/漢字][ふりがな]える[/ふりがな]......』
『...今度はボクから会いに行くって約束する。だから、またね。愛瑠ちゃん____』
[水平線]
なんで...なんで、彼が、ここにいるの....?
身長もすごく伸びて、体格も随分とがっしりした気がする。
なのにあの頃から彼のまとう雰囲気、太陽のように明るい金髪、優しい瞳は全くと言っていいほど変わっていなかった。
「どうして....」
「今日、転校してきたんだ。校内散策をしていたらたまたま...愛瑠ちゃんを見つけちゃって。」
あの日からわたしが彼に対する想いは、日に日に増していくばかりだった。
声を聞きたい、姿を見たい、そばに駆けつけたい。
身の回りに頼れる人が1人もいない環境だったので、無力なわたしは何もできず結局地元から少し離れた都会に近い高校に入学することしかできなかった。
それが今、ようやく報われたような気がする。
「わたし、ずっとずっと、会いたかったの.....」
2度目に流す涙は、また彼の前だった。
あの時と変わらない___彼はわたしの頭をぽんと撫でてくれる。
「...ごめんね。あの日、ちゃんと家には帰れた?今は元気してる?」
「うん、うん。ちゃんと帰ったよ、元気だよ....」
ぎゅっと彼に抱きついた。
それに応えるように、彼もぎゅっとわたしを力強く抱きしめる。
もうこの温もりを二度と...手放したくないよ....
「こんなに長い間待たせちゃって、ごめんね。もう...高校生になっちゃったもんね。」
「....あなたはわたしを、こんなに待たせたんだもん。だからしばらくはぎゅってしてても...いい?」
彼はこくりと頷いて、優しくわたしの頬を撫でてくれた。
途端、周囲から黄色い歓声が上がった。
「あれ、転校生のイケメンくんだよね!」
「なんで月城さんと抱き合ってるの!?」
「やばい、神々しすぎる.....」
でも今は、周りの喧騒は聞こえない。
わたしに響くのは彼の言葉だけだった。
「....僕、あの日から後悔していることが1つあるんだ。」
「なあに?」
わたしよりも彼の身長は10cmほど高いため、わたしはぐっと彼の顔を見上げた。
「愛瑠ちゃんに名前を教えてもらったのに、僕は名乗ることを忘れていたんだ。」
「あ.....」
そういえば、そうだ。
今まで全く持って気にならなかったけど、わたしは彼の名前を知らない。
「僕は、太陽。[漢字]日野[/漢字][ふりがな]ひの[/ふりがな][漢字]太陽[/漢字][ふりがな]たいよう[/ふりがな]だよ。」
その名前を聞いた瞬間、自分の中で少しずつピースが埋まっていくような感覚を覚えた。
わたしが初めて彼に抱いた印象は、真っ暗闇にも関わらず光り輝く太陽のような金髪の男の子。
彼と見上げた夜空に1番キラキラと輝いていた星は、赤い太陽のような一等星。
そして彼の名は、日野太陽。
「やっと、伝えられた。」
彼__いや、太陽くんは、これでもかというくらいに微笑んでわたしを愛らしく見つめてくれた。
太陽...素敵な名前。
明るくて、優しくて眩しくて。キラキラ輝く彼にぴったりの名前だ。
「わたし、太陽くんがずっとずっと、好きだったよ....」
そう言って太陽くんの瞳を見つめると、にこりとはにかんでそっと頭を撫でてくれる。
「これからは僕がずっとそばにいる、僕が幸せにする。」
ずっと、好きで好きでたまらなかった。愛してやまなかった。
お互いにお互いの気持はわかり合っていたから、これが告白したことになるのかは分からないけど。
太陽くん、約束果たしてくれた。
太陽くん、これからずっとそばにいてくれるんだって。
太陽くん、わたしを幸せにしてくれるんだって。
わたし一生、太陽くんを信じるよ。
「愛瑠ちゃん、好きだよ。僕と______