完全読み切り恋愛短編集
『国民的アイドルMilky♡Ribbonのメンバー、シラユキさんの一般男性との電撃結婚発表後、世間では祝福の声が飛び交っていますが、そんなシラユキさんに直撃インタビューにきました!シラユキさん、今のお気持ちは?』
朝7時、テレビのニュース画面にうつしだされるのは、わたしがだいすきな人の結婚発表映像だった。
『そうですね...わたしがまだ未熟な高校生地下アイドルで、何も持っていなかった時から彼はわたしを支え続けてくれました。そんな彼との結婚を発表できて、嬉しい気持ちでいっぱいです。』
うそ...ユキにゃん、結婚しちゃったの...?
画面には幸せそうに微笑むユキにゃんが、愛らしく語っていた。受け止めざるを得ない事実。
「ミレイ〜...ってあらあら、シラユキちゃん結婚したの〜!」
わたしが呆然とテレビを見ていると、お母さんがそう言った。
「シラユキちゃん全然そんな素振り見せなかったのにねえ〜...大丈夫?ミレイ」
逆に大丈夫だと思うの...?
わたしはユキにゃんの事が好きで好きで...本当に好きでたまらなくて、いつか絶対にユキにゃんと同じアイドルのステージに立って結婚すると決めていた。
同性だとか...そんなの知らない。わたしはユキにゃんの事が好きだから。
なのに...こんなに急にその夢への道を閉ざされる事になるとは思わなかった。
「大丈夫じゃないよ...もうやだあ.....」
その日は学校を欠席して、1日中寝込んだ。
ねえユキにゃん。わたしこれからどうやって生きていけばいいのかな。
生きる理由も、将来の夢も、何もかもを一瞬にして失った。
ユキにゃんが悪いとか結婚相手が悪いとか、別にそういう事は思ってないし、ユキにゃんと結婚したからには相手の人は最上級の幸せをユキにゃんにあげてほしいと思っている。
なんだか、しんどい。それ以上の感情がもう見つからなかった。
両親は仕事に行っていて家に居ないから、家にはわたし1人。
リビングに降りてふとテレビを付けると、何かの歌番組が流れた。
途端、今までの息苦しさが優しい歌声に包まれた。
なにこれ......
体中に力が湧いて、嫌な感情嫌な思い嫌な気持ちすべてが優しく温かな声にかき消される。
涙が溢れた。
「すぐる、くん.....」
金髪で一見チャラそうな雰囲気なのに、歌うとすごく綺麗な重低音が響く。
その音色が耳に心地よくて、聞き入ってしまった。
彼の名前は、[漢字]矢吹[/漢字][ふりがな]やぶき[/ふりがな][漢字]傑[/漢字][ふりがな]すぐる[/ふりがな]というらしい。そう表示されていた。
『ありがとうございましたー!』
テレビから聴こえる歓声に思わずはっとした。
もう歌い終わっちゃったんだ...
人の歌声にこんなに感動する事なんて初めてだったので、歌い終わっている事にも気が付かなかった。
『傑くん、初披露はどうでしたか?』
『テレビで歌うなんて初めてだったので...緊張したんですけど、すごく楽しかったです!』
び、びっくりした...
傑くんのお顔はすごく整っていて、どちらかといえば可愛い方に分類されると思う。
それなのに地声がとても低くて、笑ったときのえくぼが可愛くて、もう何がなんだか分からなかった。
『熱唱!オーディション番組は楽しんでいただけたでしょうか?番組終了後、ドーム前交流イベントスペースにて特別オフライントーク会を実施しますので、是非お越しください!』
あ、これオーディション番組だったんだ...
あまりにも歌が上手だったので、もうデビューしているのかと思ってしまった。
それに、特別オフライントーク会?しかもドーム前...わたしの家から10分もかからない場所にある。
どうしよう、行ってみようかな...でもこんな状態のわたしが行っても...
ぐるぐる変わる感情の中、わたしが一瞬にして虜になった傑くんの声がテレビから聞こえた。
『よければ来てください!お待ちしています!』
傑くん......
わたしは着替えてある程度外に出られる状態を作ってから、家を飛び出した。
[水平線]
「オフライントーク会会場こちらでーす」
思っていたより、人が少なかった。
地上波番組だけどBS放送だったし、あんまり知名度は高くないのかな...
そんな事を考えながらきょろきょろして場内を歩き回っていると、矢吹傑と書かれた看板を発見した。
あっ...ここかな....?
「あの、傑くんのブースってここですか...?」
「はい!参加券はお持ちですか?」
ありますと言って、場内に入る前に購入した1枚の券を手渡す。
列には人が1人も並んでおらず、思っていたよりもスムーズにブース内へ入る事ができた。
ブース内へ入ると、先程まで画面越しで見ていた彼が目の前にいた。
「あっ...来てくれてありがとう、ミレイちゃん」
涙が溢れた。もう今日何度目か分からない。
いる、目の前に...わたしを救ってくれた、傑くんが。
傑くんの声はテレビを通して聞いた声よりも、圧倒的に耳に心地よい声だった。
焦ってユキにゃん用に作った名札を付けてきてしまったけど、傑くんはそれを見てわたしの名前を呼んでくれた。
「ど、どうしたの...!?大丈夫?どこか痛い?」
「ごめんなさい、違くて...あの、あの.....」
仕切りなどがなく、傑くんの方からわたしの手を握ってくれた。
ユキにゃんの時にはなかった、いわゆる握手会みたいなものになっている。
「傑くんの声で、救われて...本当に本当に、ありがとうございます...」
「それで泣いちゃったの?泣かせちゃってごめんね...」
なんで傑くんが謝るの...
面白くて、笑みが溢れた。
傑くん。矢吹傑くん。
救ってくれてありがとう、歌ってくれてありがとう。
______その後、傑くんはオーディション番組では脱落してしまったけど、別の大手事務所の開催するサバイバルオーディション番組にて見事デビューし、国民的アイドルとなった。
[水平線]
「SUGURUさん30秒間でーす!」
「来てくれてありが....って、え...?」
デビュー後初のオフライントーク会。
傑くんは髪をピンク色に染めて、一気に垢抜けた。
「ミレイちゃん...!?」
「え...わたしの事分かるんですか...?」
驚いた。名札も付けていないし、初めて会った時からもう半年以上経ってるし...
わたしの事、覚えててくれたの...?
「覚えてるよミレイちゃん。あの日俺のところに来てくれたの、ミレイちゃんだけだったから。」
「うそ、傑くんこんなにかっこいいのに?本当に誰もこなかったの...!?」
「うん。俺自分のとこに来てくれる人がいるなんて思ってなかったんだけど、ミレイちゃんだけが来てくれたから。」
信じられない。傑くんの良さに気づかないのは、すごくすごくもったいないよ....
「...あの日ミレイちゃん、泣いてたでしょ?」
傑くんはそう言って、わたしの顔を伺うようにした。
うん、泣いてた。泣いてたよ。
そんなところまで覚えてくれてるんだ...
「俺の声で泣いてくれる人がいるのなら、届け続けたいと思ったんだ。オーディション中も、ずっとずっとミレイちゃんの事考えてた。」
「うそ....」
「届いてるかな、聞いてくれてるかな、って...」
もう本当に信じられない。
傑くん....本当に好き。
「ミレイちゃん、また会おうね。」
「傑くん、だいすきだよ....!!」
剥がしのスタッフさんの剥がされて、わたしはブースを出た後1人号泣していた。
わたしが"スグルのミューズ"という異名を付けられるのは、また別のお話____
朝7時、テレビのニュース画面にうつしだされるのは、わたしがだいすきな人の結婚発表映像だった。
『そうですね...わたしがまだ未熟な高校生地下アイドルで、何も持っていなかった時から彼はわたしを支え続けてくれました。そんな彼との結婚を発表できて、嬉しい気持ちでいっぱいです。』
うそ...ユキにゃん、結婚しちゃったの...?
画面には幸せそうに微笑むユキにゃんが、愛らしく語っていた。受け止めざるを得ない事実。
「ミレイ〜...ってあらあら、シラユキちゃん結婚したの〜!」
わたしが呆然とテレビを見ていると、お母さんがそう言った。
「シラユキちゃん全然そんな素振り見せなかったのにねえ〜...大丈夫?ミレイ」
逆に大丈夫だと思うの...?
わたしはユキにゃんの事が好きで好きで...本当に好きでたまらなくて、いつか絶対にユキにゃんと同じアイドルのステージに立って結婚すると決めていた。
同性だとか...そんなの知らない。わたしはユキにゃんの事が好きだから。
なのに...こんなに急にその夢への道を閉ざされる事になるとは思わなかった。
「大丈夫じゃないよ...もうやだあ.....」
その日は学校を欠席して、1日中寝込んだ。
ねえユキにゃん。わたしこれからどうやって生きていけばいいのかな。
生きる理由も、将来の夢も、何もかもを一瞬にして失った。
ユキにゃんが悪いとか結婚相手が悪いとか、別にそういう事は思ってないし、ユキにゃんと結婚したからには相手の人は最上級の幸せをユキにゃんにあげてほしいと思っている。
なんだか、しんどい。それ以上の感情がもう見つからなかった。
両親は仕事に行っていて家に居ないから、家にはわたし1人。
リビングに降りてふとテレビを付けると、何かの歌番組が流れた。
途端、今までの息苦しさが優しい歌声に包まれた。
なにこれ......
体中に力が湧いて、嫌な感情嫌な思い嫌な気持ちすべてが優しく温かな声にかき消される。
涙が溢れた。
「すぐる、くん.....」
金髪で一見チャラそうな雰囲気なのに、歌うとすごく綺麗な重低音が響く。
その音色が耳に心地よくて、聞き入ってしまった。
彼の名前は、[漢字]矢吹[/漢字][ふりがな]やぶき[/ふりがな][漢字]傑[/漢字][ふりがな]すぐる[/ふりがな]というらしい。そう表示されていた。
『ありがとうございましたー!』
テレビから聴こえる歓声に思わずはっとした。
もう歌い終わっちゃったんだ...
人の歌声にこんなに感動する事なんて初めてだったので、歌い終わっている事にも気が付かなかった。
『傑くん、初披露はどうでしたか?』
『テレビで歌うなんて初めてだったので...緊張したんですけど、すごく楽しかったです!』
び、びっくりした...
傑くんのお顔はすごく整っていて、どちらかといえば可愛い方に分類されると思う。
それなのに地声がとても低くて、笑ったときのえくぼが可愛くて、もう何がなんだか分からなかった。
『熱唱!オーディション番組は楽しんでいただけたでしょうか?番組終了後、ドーム前交流イベントスペースにて特別オフライントーク会を実施しますので、是非お越しください!』
あ、これオーディション番組だったんだ...
あまりにも歌が上手だったので、もうデビューしているのかと思ってしまった。
それに、特別オフライントーク会?しかもドーム前...わたしの家から10分もかからない場所にある。
どうしよう、行ってみようかな...でもこんな状態のわたしが行っても...
ぐるぐる変わる感情の中、わたしが一瞬にして虜になった傑くんの声がテレビから聞こえた。
『よければ来てください!お待ちしています!』
傑くん......
わたしは着替えてある程度外に出られる状態を作ってから、家を飛び出した。
[水平線]
「オフライントーク会会場こちらでーす」
思っていたより、人が少なかった。
地上波番組だけどBS放送だったし、あんまり知名度は高くないのかな...
そんな事を考えながらきょろきょろして場内を歩き回っていると、矢吹傑と書かれた看板を発見した。
あっ...ここかな....?
「あの、傑くんのブースってここですか...?」
「はい!参加券はお持ちですか?」
ありますと言って、場内に入る前に購入した1枚の券を手渡す。
列には人が1人も並んでおらず、思っていたよりもスムーズにブース内へ入る事ができた。
ブース内へ入ると、先程まで画面越しで見ていた彼が目の前にいた。
「あっ...来てくれてありがとう、ミレイちゃん」
涙が溢れた。もう今日何度目か分からない。
いる、目の前に...わたしを救ってくれた、傑くんが。
傑くんの声はテレビを通して聞いた声よりも、圧倒的に耳に心地よい声だった。
焦ってユキにゃん用に作った名札を付けてきてしまったけど、傑くんはそれを見てわたしの名前を呼んでくれた。
「ど、どうしたの...!?大丈夫?どこか痛い?」
「ごめんなさい、違くて...あの、あの.....」
仕切りなどがなく、傑くんの方からわたしの手を握ってくれた。
ユキにゃんの時にはなかった、いわゆる握手会みたいなものになっている。
「傑くんの声で、救われて...本当に本当に、ありがとうございます...」
「それで泣いちゃったの?泣かせちゃってごめんね...」
なんで傑くんが謝るの...
面白くて、笑みが溢れた。
傑くん。矢吹傑くん。
救ってくれてありがとう、歌ってくれてありがとう。
______その後、傑くんはオーディション番組では脱落してしまったけど、別の大手事務所の開催するサバイバルオーディション番組にて見事デビューし、国民的アイドルとなった。
[水平線]
「SUGURUさん30秒間でーす!」
「来てくれてありが....って、え...?」
デビュー後初のオフライントーク会。
傑くんは髪をピンク色に染めて、一気に垢抜けた。
「ミレイちゃん...!?」
「え...わたしの事分かるんですか...?」
驚いた。名札も付けていないし、初めて会った時からもう半年以上経ってるし...
わたしの事、覚えててくれたの...?
「覚えてるよミレイちゃん。あの日俺のところに来てくれたの、ミレイちゃんだけだったから。」
「うそ、傑くんこんなにかっこいいのに?本当に誰もこなかったの...!?」
「うん。俺自分のとこに来てくれる人がいるなんて思ってなかったんだけど、ミレイちゃんだけが来てくれたから。」
信じられない。傑くんの良さに気づかないのは、すごくすごくもったいないよ....
「...あの日ミレイちゃん、泣いてたでしょ?」
傑くんはそう言って、わたしの顔を伺うようにした。
うん、泣いてた。泣いてたよ。
そんなところまで覚えてくれてるんだ...
「俺の声で泣いてくれる人がいるのなら、届け続けたいと思ったんだ。オーディション中も、ずっとずっとミレイちゃんの事考えてた。」
「うそ....」
「届いてるかな、聞いてくれてるかな、って...」
もう本当に信じられない。
傑くん....本当に好き。
「ミレイちゃん、また会おうね。」
「傑くん、だいすきだよ....!!」
剥がしのスタッフさんの剥がされて、わたしはブースを出た後1人号泣していた。
わたしが"スグルのミューズ"という異名を付けられるのは、また別のお話____