-裕さんside -

[太字]バタンッ[/太字]

裕「ふぅ､､､､(さて、行くか)」

俺は沙良を車の後部座席に乗せ、息をつく暇もなくベンチへ向かった。
ベンチに腰かけたぐらいに､公園の入り口近くから大声が聞こえてきた。

父「おいそこのお前ｯ！」
裕「､､､､､､」
父「お前だよ､そこの緑のお前ｯ！」
裕「あ､僕ですか」

これが沙良ちゃんが怯えてた張本人か。
バレないように息を整え、さっと仕事のモードに切り替える。

裕「何でしょうか、そんなに顔を真っ赤にして」
　「そんなに怒ってたら幸せが寄りつかないですよ?」
父「はぁ⁉︎んなのどーでも良いんだよ！」
　「コイツ､コイツ知らねぇかｯ！この写真のガキ！」

相当苛立っているのか声を荒げながら一枚の写真を押し付けてきた。
俺はその写真をスッと手に取ってその写真を見た。

その写真に写っていた人は､笑っている沙良ちゃんだった。
写真からは明るさが見受けられない､というと､､､上手く造ったのか､
目の付近に変に歪んでいる場所がある。涙の跡を加工で消したのだろう。

裕「こんなに[太字]幸せそうに笑ってる子[/太字]は知りませんねぇ、」
父「はぁ?見てないのか?この公園の近くには娘の自転車が停めてあったんだが」

俺は大袈裟で､けど不自然じゃないように疑問を浮かべた顔をした。
そしてデマ情報を流してあげようと笑顔でそう思った。

裕「そうおっしゃられましても､､」
　「あ､先ほど彼方の方向に女の子が走っていく姿だったら見ましたが?」
父「本当だろうな､」
裕「えぇ､本当ですとも」

俺は上手いデマ情報を一瞬にして造り上げ､父親に言った。
そして不自然に歪まないようにして作った笑顔をこの父親に向けた。

父「ﾁｯ､最初からそう言っときゃ良いんだよ」
　「無駄な時間喰わせやがって」
在如の父親は舌打ちをし､あからさまにイラついた顔をしてつぶやいた。

裕「娘さん､見つかると良いですね。」
　「大切な娘さんなんでしょうから､」

俺はさっきの言葉に聞こえないふりをし､
今すぐぶん殴りたくなる衝動を手で抑えながら言った。
今殴り飛ばすと俺の立場が危うくなる。

父「大切な大切などう､､､あ，娘ですよ〜」
この父親はそう俺に言って､車に乗り込んだ。
そしてまんまと騙されたようで､俺が言った方向に車で走って行った。

裕「､､､､[小文字]Zeig dieses Gesicht nicht noch einmal[/小文字]」

俺は怒りの放出口を探し､床に転がっている石を思い切り蹴り飛ばした。
まだ収まりはしないが、軽く少しは収めなきゃいけない。

俺は静かに笑顔を作り､沙良が居る車の中へ向かった。