雨の水に濡らされた桜の花びら
#1
雨が降る日に見る桜
旅を続ける俺にとって、雨というのは不思議な気持ちにさせてくれる。
雨が好きなのは俺が日本にいた時から変わらないし、前世の俺は写真家であった。
道中に雨によって頬を濡らされた花々がより一層輝いているようであった。
俺は、いつからこんな異世界に慣れちまったんだ。
「よぉ、過去の英雄。たしか名前は……シダレザクラだっけな?」
正直、この名前にしたのは私がよく写真を撮ってたのが桜だから一番好きな桜の名前にしたんだよな。
えっと、こいつはなんだ?俊敏のディナーみたいな奴だよな。
「ははっ、名前を憶えてるあたり流石は俊敏のデイガーだな」
「けっ!俊敏のディガーな間違えんじゃあねぇ」
「まぁ、ここに来たということは新しい技でも思いついたのか?」
こいつは頭を搔き渋い顔をした。
最近は、魔王は倒したのに魔物は完全消滅していない。
きっと「倒す誰か」が大切なのは彼も分かっているだろう。
「そうだな、新しい技を試させてくれ」
「そう言う事ならさっそくウォーミングアップから行くぞ」
そうして、俺は少し息を吞んで天空魔法[漢字]雨威陣愚[/漢字][ふりがな]アメイジング[/ふりがな]を放つ。
この魔法は簡単に言うと光る雨を地面に叩き落す。というものである。
「じゃあ、いつでも」
「その程度じゃあ負けねぇぜ。この雨雲の向こうにある青空をめがけて!快晴斬り!」
たしかに、雨雲を消されるのは辛い……が?
「新しい技を早速使わせてもらうぜ、シダレザクラ!急展開斬り!」
なるほど、快晴斬りで高く飛びあがってそこからの合わせ技として急展開斬りの垂直降下か。
刃がこちらを向いてるらすこしやばいな。ぶっちゃけネーミングセンスは無いに等しいが。
俺はヒョウタン水筒を出す。そして、相手にめがけて思いっきりびしょびしょにぬらしてやった。
「雷陣」
「うおっ!?」
雷は水と相性が悪いので、通電しやすいようにただの水にはしていない。
しかしひやひやしたな。相手に雷が当たらなくてあの刀がまっすぐ俺を貫いてたら……まぁ考えすぎか。
「うん、いいじゃないかディガー」
「また負けちまったか」
「改良点は、あのまま垂直に下りずに空気を蹴ってジグザグに下りたらよかったかもな」
「ためになる……本当に毎回あんたじゃなきゃ無理があるな」
この会話の一瞬で、何かが「俺の背後にいたこと」に気づかなかった。
いや、殺意を向けられる感覚を忘れて、平和ボケでもしてるのだろうか。
「あのね……」
「誰だっ」
急に出てきたそいつに俺は冷や汗をかいた。
「ああ、ごめん挨拶が足りなかったようだね。私はジーンだ。年齢37歳。毎日のルーティンを崩すことが嫌いだ」
「そんなやつがなんの要件だよ」
急に挨拶?でも殺意を感じたあれは一体?
「要件は君自身にないんだよね、ひたすら心の中で考えてるだけの廃れた英雄に要件があるのさ。君はおうちにかえりなさい」
「彼と俺がここにいたんだから帰すとかしないでほしいんだが……」
彼に対してジーンはそっと肩に手を置いた。
かと思えばディガーがテレポートされてしまった。
やらかした。これはまずい気がする。
「じゃあ、始めようか。理由なんか戦いながらで良いだろう?」
「こんな急に現れてそんなバカな話が通用すると思うなよ!」
俺はひょうたんから水の玉を数10個用意した。組み合わせればガードにも使えるし長射程攻撃もできる万能型だ。
「スターニードル」
そう聞こえた、彼はそう言ったのだろう。俺にはそれが誰であるか判断するには充分すぎる内容であった。
俺は水のバリアを作り、彼に問う。
「魔王……?」
宇宙関係の魔法を使えるのは魔王(ジーン)だけであった。
転生した俺が使う雨魔法と同じように。
「ご名答ってとこだろう。私が戦う理由はこれだ。前の決着をつけたいんだよ」
「いざ、目の前にすると威圧がすごいな。ジーンさん?」
俺の予想だ。ジーンに前みたいな「全員巻き添え~」みたいなのは使えないだろう。
だが、近距離は俺が勝てるか分からないレベルで強い。
「俺は自分の規格そのものを見直した。筋肉の付き方、戦いのスキル。そして無駄のそぎ落とし方。負けたなら負けたなりに努力したんだ」
そうして、 彼は言葉を続ける。
「お前には敗者の気持ちが分かるのか?何とか言えよ!」
「そうだな、俺にはお前の気持ちが分からない。でもそれでも転生した瞬間から大きくお前を倒すっていう使命を負わされたからよ」
果たさなきゃ……か。当時の俺は馬鹿馬鹿しい責任だと思ってそうだが。
「俺を、倒すってか?今更お前の技なんて把握しきってるのに今更何が変わるんだよ!」
そう、それもそうなのだ。こいつとは1回戦闘を通して技の構成を把握されている。
ぶっちゃけ、負け試合と言っても過言ではない。
でも、な……うん。
「大きくお前を倒すって宣言したからには実行しなければならないもんな。俺にしかできないといっても過言ではない」
1度倒したからこそ分かることだってあるはずだ。
きっと、俺になら。
「私はこの喋ってる待ち時間が鬱陶しくてたまらない、我慢できないから攻撃させてもらいます」
あいつは、攻撃の名前を変えずに性能だけ変えてると思うんだ。
もともとスターニードルは「遠距離」だった。
しかし、いざその攻撃を見ると近距離のように見えた。
「俺は覚えてるよ、攻撃名を言わないと行動がとれない。この世界の人間……いやこの世界の住人はそうなんだろ?」
「ステラストーム」
あいつはそう小さく呟くと小さい竜巻の中に「光るとげ」が高速回転している。
もろに喰らったら……なんて考えたくもないレベルだ。
雷陣をやるか、あいつは雷に弱かったはず。喰らえ!
「効かないように規格を見直したんだよ」
「さっきから言ってる規格を見直すってまさか……自身の精神を!?」
「ああ、一度魂として孤立したから改造して死にかけた肉体を直したのですよ」
そんなのって俺は「そうまでして」生きたいなんて思えない。
でも、最後はそこまでしたのだから。
「最後まで俺たちは戦う運命なんだな」
「改めて、戦いますよ」
しばしば雨威陣愚を使う。俺はこれで決めるとは思っていない。
「ちょこまかウザイだけ、か」
「分かってたんですすか?」
「お前の顔を見ればわかる」
くっそ、攻撃が来る!
「リバイブルショックウェーブ!」
あいつは手を合わせると雨雲を波ですべて飛ばした。
「シャドウプラネット!」
俺はものすごいスピードで突撃した彼に弾き飛ばされた。
崖にぶつかった俺は、想像もしなかった恐怖に足がすくむ。
周りを朦朧とする目で探る。「何か」を決めた俺はディガーの地面に刺さった刀を持って、川へ向かって走り続ける。
「俺だって技名を思いついたんだよ?」
「そんなボロボロの肉体で満身創痍な事を言わないでください」
とにかく川へ走る。あいつも追ってきてる。だけどそれでも。
「シダレザクラの目的は、川……?」
川の水に向かって体を投げる。そしてびしょびしょに濡れた俺は、また立ち上がる。
「これが、最初で最後の詠唱だ俺の心は君に負けたから最後ぐらい平等だ」
「今更かよ……それとも怖気づいたのでしょうか?」
「クラッシュメモリー」
俺は、最初から最後まで詠唱をしないつもりでいた。
王国につけられた詠唱省略装置を破壊し、お互い生まれる前の魂となった。
どうか……次会うときは近くの野原でお互い遊べる仲が良い。
そうして、物語は幕を閉じる。あっけない最後で。
血を流しすぎた悲しい世界は、ゆっくりはかなく桜の花びらのように散った。
雨が好きなのは俺が日本にいた時から変わらないし、前世の俺は写真家であった。
道中に雨によって頬を濡らされた花々がより一層輝いているようであった。
俺は、いつからこんな異世界に慣れちまったんだ。
「よぉ、過去の英雄。たしか名前は……シダレザクラだっけな?」
正直、この名前にしたのは私がよく写真を撮ってたのが桜だから一番好きな桜の名前にしたんだよな。
えっと、こいつはなんだ?俊敏のディナーみたいな奴だよな。
「ははっ、名前を憶えてるあたり流石は俊敏のデイガーだな」
「けっ!俊敏のディガーな間違えんじゃあねぇ」
「まぁ、ここに来たということは新しい技でも思いついたのか?」
こいつは頭を搔き渋い顔をした。
最近は、魔王は倒したのに魔物は完全消滅していない。
きっと「倒す誰か」が大切なのは彼も分かっているだろう。
「そうだな、新しい技を試させてくれ」
「そう言う事ならさっそくウォーミングアップから行くぞ」
そうして、俺は少し息を吞んで天空魔法[漢字]雨威陣愚[/漢字][ふりがな]アメイジング[/ふりがな]を放つ。
この魔法は簡単に言うと光る雨を地面に叩き落す。というものである。
「じゃあ、いつでも」
「その程度じゃあ負けねぇぜ。この雨雲の向こうにある青空をめがけて!快晴斬り!」
たしかに、雨雲を消されるのは辛い……が?
「新しい技を早速使わせてもらうぜ、シダレザクラ!急展開斬り!」
なるほど、快晴斬りで高く飛びあがってそこからの合わせ技として急展開斬りの垂直降下か。
刃がこちらを向いてるらすこしやばいな。ぶっちゃけネーミングセンスは無いに等しいが。
俺はヒョウタン水筒を出す。そして、相手にめがけて思いっきりびしょびしょにぬらしてやった。
「雷陣」
「うおっ!?」
雷は水と相性が悪いので、通電しやすいようにただの水にはしていない。
しかしひやひやしたな。相手に雷が当たらなくてあの刀がまっすぐ俺を貫いてたら……まぁ考えすぎか。
「うん、いいじゃないかディガー」
「また負けちまったか」
「改良点は、あのまま垂直に下りずに空気を蹴ってジグザグに下りたらよかったかもな」
「ためになる……本当に毎回あんたじゃなきゃ無理があるな」
この会話の一瞬で、何かが「俺の背後にいたこと」に気づかなかった。
いや、殺意を向けられる感覚を忘れて、平和ボケでもしてるのだろうか。
「あのね……」
「誰だっ」
急に出てきたそいつに俺は冷や汗をかいた。
「ああ、ごめん挨拶が足りなかったようだね。私はジーンだ。年齢37歳。毎日のルーティンを崩すことが嫌いだ」
「そんなやつがなんの要件だよ」
急に挨拶?でも殺意を感じたあれは一体?
「要件は君自身にないんだよね、ひたすら心の中で考えてるだけの廃れた英雄に要件があるのさ。君はおうちにかえりなさい」
「彼と俺がここにいたんだから帰すとかしないでほしいんだが……」
彼に対してジーンはそっと肩に手を置いた。
かと思えばディガーがテレポートされてしまった。
やらかした。これはまずい気がする。
「じゃあ、始めようか。理由なんか戦いながらで良いだろう?」
「こんな急に現れてそんなバカな話が通用すると思うなよ!」
俺はひょうたんから水の玉を数10個用意した。組み合わせればガードにも使えるし長射程攻撃もできる万能型だ。
「スターニードル」
そう聞こえた、彼はそう言ったのだろう。俺にはそれが誰であるか判断するには充分すぎる内容であった。
俺は水のバリアを作り、彼に問う。
「魔王……?」
宇宙関係の魔法を使えるのは魔王(ジーン)だけであった。
転生した俺が使う雨魔法と同じように。
「ご名答ってとこだろう。私が戦う理由はこれだ。前の決着をつけたいんだよ」
「いざ、目の前にすると威圧がすごいな。ジーンさん?」
俺の予想だ。ジーンに前みたいな「全員巻き添え~」みたいなのは使えないだろう。
だが、近距離は俺が勝てるか分からないレベルで強い。
「俺は自分の規格そのものを見直した。筋肉の付き方、戦いのスキル。そして無駄のそぎ落とし方。負けたなら負けたなりに努力したんだ」
そうして、 彼は言葉を続ける。
「お前には敗者の気持ちが分かるのか?何とか言えよ!」
「そうだな、俺にはお前の気持ちが分からない。でもそれでも転生した瞬間から大きくお前を倒すっていう使命を負わされたからよ」
果たさなきゃ……か。当時の俺は馬鹿馬鹿しい責任だと思ってそうだが。
「俺を、倒すってか?今更お前の技なんて把握しきってるのに今更何が変わるんだよ!」
そう、それもそうなのだ。こいつとは1回戦闘を通して技の構成を把握されている。
ぶっちゃけ、負け試合と言っても過言ではない。
でも、な……うん。
「大きくお前を倒すって宣言したからには実行しなければならないもんな。俺にしかできないといっても過言ではない」
1度倒したからこそ分かることだってあるはずだ。
きっと、俺になら。
「私はこの喋ってる待ち時間が鬱陶しくてたまらない、我慢できないから攻撃させてもらいます」
あいつは、攻撃の名前を変えずに性能だけ変えてると思うんだ。
もともとスターニードルは「遠距離」だった。
しかし、いざその攻撃を見ると近距離のように見えた。
「俺は覚えてるよ、攻撃名を言わないと行動がとれない。この世界の人間……いやこの世界の住人はそうなんだろ?」
「ステラストーム」
あいつはそう小さく呟くと小さい竜巻の中に「光るとげ」が高速回転している。
もろに喰らったら……なんて考えたくもないレベルだ。
雷陣をやるか、あいつは雷に弱かったはず。喰らえ!
「効かないように規格を見直したんだよ」
「さっきから言ってる規格を見直すってまさか……自身の精神を!?」
「ああ、一度魂として孤立したから改造して死にかけた肉体を直したのですよ」
そんなのって俺は「そうまでして」生きたいなんて思えない。
でも、最後はそこまでしたのだから。
「最後まで俺たちは戦う運命なんだな」
「改めて、戦いますよ」
しばしば雨威陣愚を使う。俺はこれで決めるとは思っていない。
「ちょこまかウザイだけ、か」
「分かってたんですすか?」
「お前の顔を見ればわかる」
くっそ、攻撃が来る!
「リバイブルショックウェーブ!」
あいつは手を合わせると雨雲を波ですべて飛ばした。
「シャドウプラネット!」
俺はものすごいスピードで突撃した彼に弾き飛ばされた。
崖にぶつかった俺は、想像もしなかった恐怖に足がすくむ。
周りを朦朧とする目で探る。「何か」を決めた俺はディガーの地面に刺さった刀を持って、川へ向かって走り続ける。
「俺だって技名を思いついたんだよ?」
「そんなボロボロの肉体で満身創痍な事を言わないでください」
とにかく川へ走る。あいつも追ってきてる。だけどそれでも。
「シダレザクラの目的は、川……?」
川の水に向かって体を投げる。そしてびしょびしょに濡れた俺は、また立ち上がる。
「これが、最初で最後の詠唱だ俺の心は君に負けたから最後ぐらい平等だ」
「今更かよ……それとも怖気づいたのでしょうか?」
「クラッシュメモリー」
俺は、最初から最後まで詠唱をしないつもりでいた。
王国につけられた詠唱省略装置を破壊し、お互い生まれる前の魂となった。
どうか……次会うときは近くの野原でお互い遊べる仲が良い。
そうして、物語は幕を閉じる。あっけない最後で。
血を流しすぎた悲しい世界は、ゆっくりはかなく桜の花びらのように散った。
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