楽「え？帰らないけどぉ？」
エメラルドグリーンの瞳が少しだけ赤く染まる。
極楽名峰の英雄たちは、それに恐怖を感じた。
楽「それよりもさぁ。遥斗、返してくんない？」
声のトーンが下がる。
明らかに殺意が籠もっている声。誰でも分かるほど。
鬼灯「返す？何を言っているんだ？」
鬼灯はそれより何倍も低い声で呟く。
鬼灯「今更掌返しは―――」
楽「そっかぁ。」
鬼灯の言葉を遮り、凍りそうになるほど冷ややかな声で呟いた。
楽「なら、無理矢理にでも取り返す。」
そう言うと、楽は眼にも止まらぬ疾さで優里に近付く。
楽「君、こっちに知り合い居るでしょ？」
優里「………それが、どうした」
楽「こっちに来たら仲直りできるよ？どう？来ない？」
その言葉に優里の目が少し揺らぐ。
鴉鳥「先輩！惑わされないでください！！」
優里「鴉……鳥…」
咄嗟に鴉鳥が叫び、揺らぐ瞳の[太字]波[/太字]は止まった。
楽「先輩とは……いい呼び方されてんねー」
ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ……
楽「だからこそこっちに来なよ。もっと敬われるよ？」
夏鈴「行かせるかっつの！」
楽「あー！君！鈴のお姉ちゃん！凄いねぇ、極楽名峰にはこんなにも接点があるのか！」
和香「ありすぎて困るわこのボケ！」
ﾌﾞﾝｯ！
ｶﾞｼｯ……
和香「！？」
楽「なら、困らないように！」
楽はポケットから小さいナイフを取り出す。
楽「死なば諸共！」
陽介「させへんで」
楽「身体強ぉ！すっごぉ！」
ｶﾗﾝ…
ﾀﾞｯ！！
楽「でも、俊敏さは？」
素早く陽介の後ろに回り込むと、[漢字]踵[/漢字][ふりがな]かかと[/ふりがな]で陽介の足首に引っ掛ける。
そしてそのまま、屈強な身体ごと持ち上げ地面に打ち付けた。
陽介「……！ゲホッ…」
鬼灯「何してくれてんだ、うちの仲間に―――！」
楽「仲間ァ？」
何かを剥き出しにし、口だけ笑う。
楽「それ、本気で言ってる？」
楽「俺にはよくわかんないなぁ…」
楽は手を握り直し、鬼灯に向かって静かに歩いていく。
ｻﾞｯ
鬼灯の前に4、5人立ちはだかった。
楽はそれがうざったいのか、腹を叩く。
「ゔっ！？」
叩いただけ倒れ、そして腹に手を当て苦しそうにしている。
楽は一つ一つの威力が高い。だからこんなに立ち上がれないほどの威力を出せる。
鬼灯「死んでくんないかな、ほんとーに――！」
ｶﾞｯ！！
楽「んー？って、」






楽「[太字]遥斗！！[/太字]」








楽が、目を輝かせる。
それはまるで幼児が新しいものを知ったかのようだった。
陽介「遥斗……！？なんで出てきたんや！？」
遥斗「すまん。―――こいつを見てて反吐が出そうだったから来た。」




遥斗「死ぬのはお前、混迷楽。」





楽「っはは！言ってくれる―――……！」