私の、私たちの
私はこの日、れいちゃんを迎えに東京駅まで歩いていた。
○○『アイツ方向音痴だからなあ〜』
駅前で待ってる、とメッセージが来た。
なんだ、改札は抜けれたのか。東京は駅中が最難関なのに。
駅から会場はそこまで遠くないが道が複雑だ。アイツならそこら辺でくたばりかねない。
○○『アイツ頭いいはずなんだけどなぁ』
東京の人混みを縫うように小走りで駅へ向かっていた、まさにその瞬間。
東京駅がカッと光った。
駅が光った。本当にそんなふうに見えたのだ。直後、爆風と轟音が体を突きぬけた。 地震みたいに地面が揺れた。
一瞬なにが起きたのかわからなかった。ちょうど雷のように、光と音がほんの少し違和感をなしてずれたような感じだった。
すこし遠くに見える東京駅が轟音と共に崩れ落ちていく。
○○『は…??』
周りの人たちも唖然として、しかしどこか他人事のように同じ方向を見つめる。ものすごい煙で駅は見えない。
誰かを吹っ切りに皆、思い出したようにこスマホのカメラを駅に向け始めた。
[斜体]れいちゃん[/斜体]
○○『っ…!』
スマホを掲げてアホみたいに突っ立っている人たちを無理やり押しのけながら駅へ走る。誰かの怒号も背後へ遠のいていく。
そのとき煙の奥が急に赤くひかり、前にいた人たちが悲鳴をあげながら一斉に後ずさった。
○○『は…!?邪魔…!!』
再び人混みを掻き分けようとしたとき、知らない人に腕を掴まれた。
「あんた、今行ったら死ぬよ!!」
買い物袋を持った知らないおばさんだった。必死の形相でこちらを見ている。
○○『だって、友達が…!』
「あなたが行ったところでなにか変わるの!?」
○○『っっ…』
その言葉に、端にやった理性が再び脳を覆った。おばさんの言う通りだ。確かな医療知識もフィジカルも、私は持ち合わせていない。
私の出る幕じゃない。
「えっヤバぁ!!」
[大文字] 「東京壊滅?」[/大文字]
「パネェ〜w」
[右寄せ]「事故じゃね?」 [/右寄せ]
[中央寄せ]「え、どゆこと?」 [/中央寄せ]
「見て見て!ライブニュースになってる!!」
[右寄せ][小文字]「何あれ、工事とかあったっけ?」 [/小文字] [/右寄せ]
[中央寄せ][大文字]「テロ?」[/大文字][/中央寄せ]
[右寄せ]「さすがに無いっしょw」 [/右寄せ]
「中の人ヤバくない?」
「警察呼んで!!」
[右寄せ]「映画の撮影じゃないの?」 [/右寄せ]
「ハリウッドじゃん」
「え、ガチっぽくね」
「嘘でしょ?」
[小文字]「ねー家帰れないってー」[/小文字]
[右寄せ]「ちょヤバいヤバい!」[/右寄せ]
「みんな見てこの記事!!」
「ガチ?」
「え、あれさぁ…」
[大文字]「マジのテロっぽくない?」[/大文字]
笑っていた人達の顔がひきつり始めた。遠くから何台もの救急車や消防車のサイレンが聞こえてくる。
数分後、警察が到着してすぐ規制線を張り始めた。ただ事じゃない、笑い事じゃないという認識が少しずつ人々に広がっていく。
○○『れい、ちゃん』
ポロリ、と親友の名前が口から零れた。震える手でスマホを取り出しながら、れいちゃんの電話番号を頭の中で反復する。
何度かけても繋がらなかった。
○○『早く出てよれいちゃん…!!』
少ししてスマホに着信がきた。
[大文字][太字]ママ[/太字][/大文字]
○○『…もしもし、ママ?』
「○○!大丈夫?怜香ちゃんは合流できた?」
○○『電話繋がんない、どうしよ…』
「…今は危ないから駅には近づかないこと。パパに位置情報送って。車で迎えに行くって」
○○『わかった』
通話が切れた瞬間、駅に向かって走る。
ママは私がれいちゃんを探しに行かないように、怪我をしないように忠告してくれた。
○○『(ごめんね、ママ)』
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
○○『ッッ……!!』
現場は酷い有様だった。そこら中で炎と悲鳴が上がっている。そこらじゅうに瓦礫が散乱しており、1歩間違えば足で踏み抜いてしまいそうだ。
「ッ君!!動けるんだったら早くここから逃げなさい!!」
救急か消防の人だろう。腕を掴まれ、引き止められる。
○○『友達を探してるんです!!』
「君が死んだら意味ないだろう!!」
○○『ッ…!!』
「今この場で助けるのは俺たちの役目だ!!君は外にいなさい!!」
○○『離して!!』
自分でも驚くほど大きな声が出た。力任せに掴まれた手を振りほどこうと暴れる。
「やめなさい!!危険だから!!」
そんな抵抗も虚しく、外に連れ出される。
小説やドラマの主人公だったなら、ここで彼の手を振りほどいて必死に友人を探し回るのだろう。だが実際は、大人しく不特定多数の傍観者のうちの一人に加わるだけだった。
[中央寄せ]*[/中央寄せ]
そして私は今、上空2000m(体感)から落下している。
意味がわからない? 私の方がわからない。
本来であれば眼下に広がるのは大阪の夜景なはず。しかし実際に見えるのは中世ヨーロッパみたいな城と城下町だ。
○○『待って!!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!』
絶叫しながら真っ逆さまに落ちていく。
バカでもわかる。これは死ぬ。
○○『(てかなんで今あん時のこと思い出したんだろ、走馬灯?)』
頭の中は冷静なのに、口からは何にも考えなくても叫び声があがる。
手足を意味もなくバタバタさせる────
と、あることに気づいた。
○○『えっ…スーツは!?』
袖がどう見てもお嬢様が着るドレスだ。
あら綺麗ね、とかは今はどうでもいい!!
慌てて全身を見ようと身体をよじる。
○○『待ってちっっっさあああ!?!?!?』
多分10歳くらいの子供の身体だ。靴はなく、素足。
○○『訳分からあああああん!!!!!』
ビュオオオオオオオオ!!!
○○『うっ…!』
地面に衝突する寸前、ピタッと身体が宙で浮く感覚がした。さっきまで感じていた風圧がゼロになる。
固く閉じていた目をうっすら開けた。
『………へ???』
?「危ない危ない、死ぬとこだったな」
知らないイケメンが私の顔を覗き込んでいた。