紅蓮の魔女の後継者
#1
魔法文明が進む世界で、エレン・アヴェーヌは今日も平凡な毎日を送っていた。
「いらっしゃいませ!」
エレンが働いているパン屋は今日もお客で賑わっていた。
「エレン、おはよう。パン買いに来たよ」
エレンに挨拶をしたのは親友のラナだ。
「あ、ラナ!いらっしゃい」
ラナはエレンと違い、Magieer(マギアー)の冒険者。
足を怪我していて今はこの街で足が治るまで生活をすることになったのだ。
今ではすっかりパン屋の常連客だ。
「じゃあこのパン2つお願いします」
ラナがパンを2つ手に取り、会計に並んだ。
「いつもありがとう」
お釣りを渡し、パンを袋に詰めて渡す。
「じゃあまた、エレン。いつものとこで集合ね」
手をひらひら振ってラナは店を出ていった。
数時間後。
「おまたせ、ラナ」
いつものとこ、はラナとエレンがいつも2で話をしている小屋のことだ。
「お、きた。とりあえず座って」
ラナは隣に椅子を引いて言った。
「うん」
エレンは椅子に座るとラナの言葉を待った。
いつも話を最初にするのはラナなのだ。
「私、ね。この1年間、足を怪我した自分は冒険者に戻れるのかなってずっと思ってたんだ」
ラナの言葉にエレンは胸が痛くなる。
…きっと、ラナはもう前のような冒険者には戻れない。
ラナは歩けるようになったが、前のように特技の足技魔法が使えない。
回復魔法では処置できない怪我だ。
「ラナ…!」
「ーわかってる。わかってたよ。…でもね。私、どうしても冒険者であり続けたい。だから…ね?」
ラナは一度決めたら決して折れない。
きっと、私じゃ止められない。
「そっか。…うん。そっか」
無理はしないで。
言おうとした言葉が、口からは出なかった。
「ごめん、エレン。私。エレンといられて毎日楽しかった。嬉しかったんだ。
だから言わせて。エレン、大好きだよ」
泣きそうな笑顔でラナが言った。
「私も…!ラナが、ラナが大好きだよ!」
泣きながらラナに抱きつくエレン。
ラナは優しくエレンを抱きしめた。
「待ってて、必ずあんたのところに帰ってくるわ」
「…うん、待ってる」
涙を拭い、エレンは答えた。
「じゃあ、行ってきます」
とうとうラナの出発の日。
エレンは精一杯の笑顔でラナを送り出した。
あの日から三ヶ月。
ラナとエレンはずっと文通をしていた。
ラナに手紙を出すとすぐ返ってきて、いつもワクワクしながらエレンは郵便受けを開けていた。
ー最近、ラナから手紙がこなくなった。
魔物討伐に忙しいのかも知れない。
ラナから最後に返ってきた手紙を開く。
『エレンへ。
いつも手紙ありがとう。私は元気。ところで、私、エレンの街の近くの森林で魔物討伐に行くことにしたよ。魔物討伐が終わったら街に寄ろうと思います。じゃあ、またね。
ラナより』
あの日からもう3日。
もしかしたらラナは森林にいるのかもしれない。
気がつくとエレンは走っていた。
ラナのいる森林に向かって。
近いと行っても走っていくのは困難だというのに。
何の魔力も持たないエレンは下手をすれば魔物に殺されるというのに。
はぁっ。
はぁっ。
はぁっ。
息が苦しい…!
肺が痛い。
無我夢中で走り続け、
やっとの思いで森林にたどり着いた。
すっかり辺りは暗くなっていた。
洗い息を吐きながら森林へと進む。
森林には魔物の死体が大量に転がっていた。
ラナが倒したのかも知れない。
森林の奥に進んでいくと途中で見覚えのある封筒が散らばっていた。
「これは…」
エレンがラナに送っていた手紙だった。
ウソだ。
きっとこれは夢なんだ。
だって目の前に横たわっている[太字]コレ[/太字]は。
[太字]ラナの、死体だ。[/太字]
「いらっしゃいませ!」
エレンが働いているパン屋は今日もお客で賑わっていた。
「エレン、おはよう。パン買いに来たよ」
エレンに挨拶をしたのは親友のラナだ。
「あ、ラナ!いらっしゃい」
ラナはエレンと違い、Magieer(マギアー)の冒険者。
足を怪我していて今はこの街で足が治るまで生活をすることになったのだ。
今ではすっかりパン屋の常連客だ。
「じゃあこのパン2つお願いします」
ラナがパンを2つ手に取り、会計に並んだ。
「いつもありがとう」
お釣りを渡し、パンを袋に詰めて渡す。
「じゃあまた、エレン。いつものとこで集合ね」
手をひらひら振ってラナは店を出ていった。
数時間後。
「おまたせ、ラナ」
いつものとこ、はラナとエレンがいつも2で話をしている小屋のことだ。
「お、きた。とりあえず座って」
ラナは隣に椅子を引いて言った。
「うん」
エレンは椅子に座るとラナの言葉を待った。
いつも話を最初にするのはラナなのだ。
「私、ね。この1年間、足を怪我した自分は冒険者に戻れるのかなってずっと思ってたんだ」
ラナの言葉にエレンは胸が痛くなる。
…きっと、ラナはもう前のような冒険者には戻れない。
ラナは歩けるようになったが、前のように特技の足技魔法が使えない。
回復魔法では処置できない怪我だ。
「ラナ…!」
「ーわかってる。わかってたよ。…でもね。私、どうしても冒険者であり続けたい。だから…ね?」
ラナは一度決めたら決して折れない。
きっと、私じゃ止められない。
「そっか。…うん。そっか」
無理はしないで。
言おうとした言葉が、口からは出なかった。
「ごめん、エレン。私。エレンといられて毎日楽しかった。嬉しかったんだ。
だから言わせて。エレン、大好きだよ」
泣きそうな笑顔でラナが言った。
「私も…!ラナが、ラナが大好きだよ!」
泣きながらラナに抱きつくエレン。
ラナは優しくエレンを抱きしめた。
「待ってて、必ずあんたのところに帰ってくるわ」
「…うん、待ってる」
涙を拭い、エレンは答えた。
「じゃあ、行ってきます」
とうとうラナの出発の日。
エレンは精一杯の笑顔でラナを送り出した。
あの日から三ヶ月。
ラナとエレンはずっと文通をしていた。
ラナに手紙を出すとすぐ返ってきて、いつもワクワクしながらエレンは郵便受けを開けていた。
ー最近、ラナから手紙がこなくなった。
魔物討伐に忙しいのかも知れない。
ラナから最後に返ってきた手紙を開く。
『エレンへ。
いつも手紙ありがとう。私は元気。ところで、私、エレンの街の近くの森林で魔物討伐に行くことにしたよ。魔物討伐が終わったら街に寄ろうと思います。じゃあ、またね。
ラナより』
あの日からもう3日。
もしかしたらラナは森林にいるのかもしれない。
気がつくとエレンは走っていた。
ラナのいる森林に向かって。
近いと行っても走っていくのは困難だというのに。
何の魔力も持たないエレンは下手をすれば魔物に殺されるというのに。
はぁっ。
はぁっ。
はぁっ。
息が苦しい…!
肺が痛い。
無我夢中で走り続け、
やっとの思いで森林にたどり着いた。
すっかり辺りは暗くなっていた。
洗い息を吐きながら森林へと進む。
森林には魔物の死体が大量に転がっていた。
ラナが倒したのかも知れない。
森林の奥に進んでいくと途中で見覚えのある封筒が散らばっていた。
「これは…」
エレンがラナに送っていた手紙だった。
ウソだ。
きっとこれは夢なんだ。
だって目の前に横たわっている[太字]コレ[/太字]は。
[太字]ラナの、死体だ。[/太字]
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