プロローグ
　漆黒の館の中。ある貴婦人は優雅に紅茶をすすりながら、窓の下を眺め、怪しく嗤っていた。
「霊歌お嬢様。本当に『あれ』を行うおつもりですか？」
霊歌と呼ばれたその貴婦人は、ゆっくりと執事の方へと振り返る。
「フフッ、いいじゃない。仕方のないことよ」
彼女はまた、怪しげに嗤いながら紅茶をすする。
「はぁ……、相変わらずですね、霊歌お嬢様は」
「あなたは誰の執事？」
「霊歌お嬢様の執事でございます。霊歌お嬢様の望むことなら何なりと」
「そう、それでいいの」
　二人は、そうしてたわいない会話をしながらも、これから起こる出来事に思いを馳せ、同時に窓の外を眺めた。
「始まるわ。準備を」
「かしこまりました、お嬢様」