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麻実の短編集! リクエストオッケー!

#2

リンゴ飴の恋

 ある夏休みのこと。知り合いから、花火大会にいかないかと誘われ、生まれて初めて花火を見に行った。屋台が立ち並ぶ見晴らしの良い公園。普段はただの遊び場なのに、今日今このときだけは、美しく感じる。
「ねぇねぇ、あれ食べようよ!」
 友人が、何やら林檎のような、飴のようなものを指さして、俺の服の裾を引っ張った。
「仕方ねぇな、なんだ?」
 近づいてみると、俺にとっては不思議な名前が書いてあった。
 『リンゴ飴』
 リンゴ飴? ま、まさか、林檎をそのまま飴で作ったってことか? いや、でも林檎が丸ごと入っているようにも見えるし……んむむ……。今の飴細工は技術ってすごいなぁ……。
 と思ったら。
「う〜ん! シャクシャクしてて美味しい! 爽ちゃんも食べてご覧よ! 不思議な触感よ!」
 シャクシャク? 飴ならガリガリとかの表現になりそうだけど……。俺は、言われるがままに、その『リンゴ飴』を購入し、かぶりついた。
 ……うまい。なんだ? この、ちょうどいい飴の柔らかさは。どうやってここまで完璧な硬さを追求したのだろう? まさか、とは思っていたが、本当に林檎が丸ごと入っているらしい。だから、食感もシャクシャクしている。飴の甘さとりんごの水分が相まって、よりジューシーで癖のないお菓子となっていた。

 買った店から離れて、初めてのお菓子を頬張りながら、打ち上がっていく花火を眺める。
「やっぱり、花火って綺麗だね……」
「だな……」
 買ったリンゴ飴を手に、用意されていたベンチに腰を掛けて二人で夜空を眺めた。そよ風が頬をかすめる。ふんわりと、リンゴ飴の甘い匂いが鼻をくすぐった。隣で花火を眺める友人の表情は、打ち上がる花火によって色を変える。オレンジ色に、喜びに。黄色に、驚きに。色んな色をみせる彼女の横顔は、とても愛おしかった。
「わぁっ! ねぇねぇ、今の見た!? すっごかったよねぇ! こう、ぱーって、ぱー……って聞いてる?!」
「うわぁっ、ごめんごめんっ、お前の顔がきれいだったから」
 あ。
「え……」
 しまったぁー……、俺のバカぁ……。
「きゅ、急にそんな事言うなんて、爽ちゃんらしくないよ……」
 あ、あれ、怒って……ない? いや、それどころかあいつ、急に顔を赤らめて……。おいおい待ってくれよマジで言ってんのかおい! なぁ!
 心臓がドクンドクン言ってる……、い、行くしか、無いのか……!?
「あ、あの!」
 やるしかないんだ!
「はいぃ!!」
「好き!!」
「やだぁ!!」
「えぇ!?」
 えぇーー!? なんか思いっきり突っぱねられ
「準備できてないよ! 爽ちゃん! いきなりすぎるよ!! ……でも」
「でも……?」
「……ありがと」
「……お、おう」

 生まれて初めての花火大会で、生まれて初めてのお菓子を食べて、

「爽ちゃん。また、一緒に来ようね」
 初めての、彼女の手が、俺の手に絡む。俺は、顔を赤らめながら、そっぽ向いて返事することしかできなかった。
「おう……。絶対来ような」
「……好き」
「……うん。俺も」

 生まれて初めて恋をした。


 [大文字]今日は、最高の1日だ![/大文字]

作者メッセージ

Novelバースで書いたやつそのまま載せた。結構自信作

2025/06/20 09:44

紅月麻実 ID:≫ 64arcCWCK.3.6
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