この作品大好き…凄え…！と思った小説はあるだろうか。心を貫かれ、両断され、火に焙られるようなあの感覚を味わったことがあるだろうか。

自分は…片手で数えられるぐらいなら、ある。全てここのサイトで作られた作品ではない――書籍化すら行われていない作品が半分を占めている――が、その全てを胸張って紹介できる。万人受けするとは限らず、人によっては露骨に不快感を感じるだろう。しかし、少なくとも俺はその作品に心を打たれた。その気持ちにウソは吐けない。

Novel Cakeで連載されている小説のレビューを書くのうーん、も悪くないかもしれないが、需要があるとかわからんしなア。コメントにでも書いてもらうか？――おっと、脱線してた。取り敢えず、その話は後ろへと置いておくとして。

一先ず心を打つまではいかなくても、これは名作だろうと言える作品に範囲を広げてみる。――足の指を足しても足りなくなってきた。

それらの共通点――ここに書く全ての人と一線を画す要素。俺はそれが『キャラクターが歯車でないこと』だと思う。
物語を描くのがヘタな人は、どうしてもキャラクターを歯車にしてしまう。名作の多くがキャラクターの上にストーリーが成り立っているのに対して、ストーリーの上にキャラクターを立ててしまうのだ。…これで何が引き起こされるかといえば、無理な展開と主人公のチート設定。それとキャラクターを動かす作品としては致命的な欠陥――キャラクターに感情移入できないという問題が浮き上がってくる。

これを解消するためには、プロットを練るに練るしかない。
名前、年齢、あと一文――ではなく、思想や哲学、物事の捉え方まで決めなくては、真の名作とは言えないだろう。俺たちは一人の人間を作るという行為を甘く見てはならない。

作者はキャラクターと別人物でなくてはならない。このキャラが自分だったらこう言うなーと思ってはいけない。それはもう、キャラクターを歯車として見ている他ないのだろう、悲しいことに。

───空は晴れていたか。空はまるまま、人の気持ちを映すとされている。本当に描写は足りているか。本当に、そこに書きたい誰かの気持ちを想像できているのか？