二次創作
# 秘密厳守のマネージャー .
#1
0話
「え? こんな高額なギャラ? マネージャー業務で?」
目の前のスカウト担当者は、にやけた顔で言った。
「もちろん。業界でも破格の待遇ですよ。特に、あなたの経歴ならね」
氷室 蓮 ( ひむろ れん )は、男物のスーツに身を包んだ自身の姿を一瞥した。
性別を偽り、男性として社会を渡り歩いてきた理由は、単純明快だ。
高額な報酬と、余計な色恋沙汰に巻き込まれないこと。それだけだった。
数々の裏方仕事を渡り歩いてきた蓮にとって、人気急上昇中の歌い手グループ「いれいす」のマネージャーという職は、まさに「高額なギャラ」にふさわしいものだった。
アイドルとは違い、顔出しも少ない歌い手グループ。
しかも、メンバーは全員男性。
これなら、自身の男装がバレる心配もないだろう。
そう、たかをくくっていたのだ。
最初の顔合わせの日。
蓮は、クールな表情を貼り付け、メンバー一人ひとりに挨拶を交わした。
りうら、-hotoke-、初兎、ないこ、悠佑。そして、いふ。
「おっ、今日からうちのマネージャーさんか! よろしくな、氷室さん!」
いふは、屈託のない笑顔で蓮の肩をパン!と軽く叩いた。
その瞬間、蓮の心臓が、少しだけ跳ねた気がした。
それは、プロとしての覚悟が揺らいだ音では決してない。
そう、自分に言い聞かせた。
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