夢幻の世界の勇者様
「おお! ここがカムイ村かー。やっぱり武闘の村ってだけあるもんだな」
スサが声を上げる。
強い者が大好きなスサにとって、この村は天国のような場所だろう。
「スサ。まずは宿を取りに行くんだから、ついてくるのよ」
「わかったよ、アル」
きびきびと歩くアルだが、右手をだらんと垂らしている。この傷は、スサの父親であるナギの愛刀イペタムに噛まれた傷だ。
(いや、本当に手強い相手だった)
ナギはアルの手を奪ったが、スサがクサナギノツルギを手に入れたので、命を落とした。
(手を奪うのに、命を奪われて文句を言うとは、実に笑えない話だ)
すると、目指していた宿に着いた。
「さあさあ、向かうよろし! 強ーい若者、凛とした娘、てんこ盛り! 今週は道場週間だよ!」
宿主が龍の紋が入った旗が揺らめく建物を指さして言った。
「道場週間? なんだそりゃ、おもしれえ。俺も出る!」
スサが食いつかないわけが無い。
アルは必死に止める。
「駄目よ、スサ! 私たちは、強くて、本当の世界から召喚された人を探してるの…」
「ほんじゃあ最適じゃね? 強いやつ、ごろごろいんだろ? そいつがいてもおかしくねえや」
スサの意見に賛成だな。
「そうと決まりゃ、行くぞ、アル、スサ!」
「ちょ、待ってよ、お兄様!」
道場に着くと、それはそれは大勢の観客で視界が埋まってしまいました。
「うう…、なんでこんなに人が…?」
「ん? 人混み苦手なのか? まあ、強い奴ら同士の戦いってもんはおもしれえぜ」
スサは、にやりと笑う。楽しそうでなによりだ。
「スサは人混み慣れてるんだな」
「まーな。アフシャーは行商の国でもあるしな」
「そうか」
海運があるということは、異国の者等が来るので、人が沢山いても気にしないのだろう。
自分が田舎者すぎて、自分に呆れてしまった。
『さあ、今日戦っていただけるのは〜!』
銅鑼の音色とともに、真ん中に姿を現したのは、大人びた様子の娘だった。
「はあ? あんな小娘が?」
『ヒャッカ〜!! 只今連覇中の、カムイの村の女傑だよ!』
スサと司会の声が被る。
真逆のことを言い過ぎて、吹き出しそうになるのを堪える。
「よろしくお願いします。皆様、ヒャッカでございます。今日お集まり頂き、身に余る光栄でございます」
ヒャッカは凛とした、竪琴のような声で、観客に挨拶した。
「ヒャッカ、勝つんだぞ〜」
「応援してまーす!」
四方からヒャッカを推す声。
思わず、耳を塞いだ。
すると、ヒャッカと目があった。
(澄んだ瞳だ…。花園のように麗しく、波のように吸い込むような)
そんなことを思っていると、司会が話を進めた。
『それではぁヒャッカさん、今日の対戦相手をお決め下さい!』
(はっ? そんなことすんの?)
驚いていたら、ヒャッカは対戦相手を即答していた。
「では、あの金の長髪を持つ、戦士で」
ヒャッカは僕を指さしていた。
『はい。ご指名の方、こちらまでどうぞ』
僕は、嫌々ながら司会の手の振る方へ、歩いていった。アルが行ってこい、と言わんばかりの勢いで背中をはたいてきたからだ。スサが「嫌なら俺と代われ」という顔をしていたが無視した。
「ご指名賜りましたこと、大変嬉しく思います」
別に嬉しくもなんともない(むしろ嫌だ)が、社交辞令を言い放つ。
案の定、怪しまれた。
「別にいいんだけれど。あなたは誰? 何の武器が使えるのかしら」
ヒャッカは花のようにつややかな声で、そう僕に尋ねた。
僕は、キッとした目で答えた。
「僕の名は、アポロン。主な武器は、剣だ」
スサが声を上げる。
強い者が大好きなスサにとって、この村は天国のような場所だろう。
「スサ。まずは宿を取りに行くんだから、ついてくるのよ」
「わかったよ、アル」
きびきびと歩くアルだが、右手をだらんと垂らしている。この傷は、スサの父親であるナギの愛刀イペタムに噛まれた傷だ。
(いや、本当に手強い相手だった)
ナギはアルの手を奪ったが、スサがクサナギノツルギを手に入れたので、命を落とした。
(手を奪うのに、命を奪われて文句を言うとは、実に笑えない話だ)
すると、目指していた宿に着いた。
「さあさあ、向かうよろし! 強ーい若者、凛とした娘、てんこ盛り! 今週は道場週間だよ!」
宿主が龍の紋が入った旗が揺らめく建物を指さして言った。
「道場週間? なんだそりゃ、おもしれえ。俺も出る!」
スサが食いつかないわけが無い。
アルは必死に止める。
「駄目よ、スサ! 私たちは、強くて、本当の世界から召喚された人を探してるの…」
「ほんじゃあ最適じゃね? 強いやつ、ごろごろいんだろ? そいつがいてもおかしくねえや」
スサの意見に賛成だな。
「そうと決まりゃ、行くぞ、アル、スサ!」
「ちょ、待ってよ、お兄様!」
道場に着くと、それはそれは大勢の観客で視界が埋まってしまいました。
「うう…、なんでこんなに人が…?」
「ん? 人混み苦手なのか? まあ、強い奴ら同士の戦いってもんはおもしれえぜ」
スサは、にやりと笑う。楽しそうでなによりだ。
「スサは人混み慣れてるんだな」
「まーな。アフシャーは行商の国でもあるしな」
「そうか」
海運があるということは、異国の者等が来るので、人が沢山いても気にしないのだろう。
自分が田舎者すぎて、自分に呆れてしまった。
『さあ、今日戦っていただけるのは〜!』
銅鑼の音色とともに、真ん中に姿を現したのは、大人びた様子の娘だった。
「はあ? あんな小娘が?」
『ヒャッカ〜!! 只今連覇中の、カムイの村の女傑だよ!』
スサと司会の声が被る。
真逆のことを言い過ぎて、吹き出しそうになるのを堪える。
「よろしくお願いします。皆様、ヒャッカでございます。今日お集まり頂き、身に余る光栄でございます」
ヒャッカは凛とした、竪琴のような声で、観客に挨拶した。
「ヒャッカ、勝つんだぞ〜」
「応援してまーす!」
四方からヒャッカを推す声。
思わず、耳を塞いだ。
すると、ヒャッカと目があった。
(澄んだ瞳だ…。花園のように麗しく、波のように吸い込むような)
そんなことを思っていると、司会が話を進めた。
『それではぁヒャッカさん、今日の対戦相手をお決め下さい!』
(はっ? そんなことすんの?)
驚いていたら、ヒャッカは対戦相手を即答していた。
「では、あの金の長髪を持つ、戦士で」
ヒャッカは僕を指さしていた。
『はい。ご指名の方、こちらまでどうぞ』
僕は、嫌々ながら司会の手の振る方へ、歩いていった。アルが行ってこい、と言わんばかりの勢いで背中をはたいてきたからだ。スサが「嫌なら俺と代われ」という顔をしていたが無視した。
「ご指名賜りましたこと、大変嬉しく思います」
別に嬉しくもなんともない(むしろ嫌だ)が、社交辞令を言い放つ。
案の定、怪しまれた。
「別にいいんだけれど。あなたは誰? 何の武器が使えるのかしら」
ヒャッカは花のようにつややかな声で、そう僕に尋ねた。
僕は、キッとした目で答えた。
「僕の名は、アポロン。主な武器は、剣だ」